こんにちは。
本日は税金のお話です。税金に関する制度・規制は毎年のように改正されたり新設されたりアップデートが追いつかないですよね。「こんな規制知らなかった」、「この制度を知っていれば」というような後悔を少しでも減らすために最近導入された税金規制について解説していきます!中には節税回避のための規制もあり、これまで税負担が無かったものに課税されるケースもありますので該当の取引があるな、という方は詳しく確認してみて下さいね。
こちらの記事も是非チェックしてみて下さい
居住用建物の消費税税額控除の禁止
2020年(令和2年)10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額について、仕入税額控除の対象としないこととされました。ここでいう居住用賃貸建物には条件があり、①住宅の貸付けのように供しないことが明らかな建物以外であって、②高額特定資産(支払対価1,000万円以上の棚卸資産)又は調整対象自己建設高額資産に該当するものとなります。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r02kaisei.pdf
要は1,000万円以上の居住用建物については仕入税額控除の対象外となる、ということです。これにより居住用賃貸建物から受けられる節税効果は無くなってしまいますね。
※2020年(令和2年)10月1日以後に取得した居住用賃貸建物であっても、2020年(令和2年)3月31日までに売買契約締結済みであれば、改正前の法律が適用となります。
仮に居住用賃貸建物を3,000万円で取得し、8,000万円の課税売上を得ていた場合の影響金額は以下の通りです。
●改正前
①売上に係る消費税:8,000万円×10%=800万円
②仕入控除税額:3,000万円×10%=300万円
③税負担額=①−②=500万円
●改正後
①売上に係る消費税:8,000万円×10%=800万円
②仕入控除税額:なし
③税負担額=①−②=800万円
消費税の仕入税額控除が受けられなくなることで300万円も税負担が増加してしまいます・・・
海外中古不動産投資に関する減価償却費計上の禁止
続いても不動産関連です。2020年度(令和2年度)の税制改正大綱では海外不動産の所得計算に際して海外中古建物の減価償却費の損金参入を禁止することとなりました。
令和2年度の税制改正の大綱の「3.租税特別措置等」
「個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合において、その年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。」
減価償却とは、資産の経年劣化による固定資産の価値減少分を費用として計上するものであり、簡便的に説明すると取得価額(資産の購入代金)を耐用年数(資産の使用可能期間)を割った金額を費用して計上します。
(減価償却には定率法、定額法の計算方式があるため、上記とは異なる方法もあります)
2,000万円の建物を購入した場合、20年(耐用年数)で徐々に価値が減っていくので、「今年は100万円、来年は100万円・・・」というイメージで少しずつ費用に落としていきます。
計算方法を見ていただければお分かりですが、減価償却費の算出には耐用年数を幾つに設定するかが重要となります。耐用年数は税法で定められており、資産種類ごとに細かく規定がなされています。
※国税庁のホームページに耐用年数表が載っておりますので、詳しく知りたい方はどうぞ↓
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
なお、中古資産取得の場合、耐用年数を超えた築古の不動産建物のケースで、「簡便法」と呼ばれる計算方法があり、以下の計算式で耐用年数が算出されます。
耐用年数=法定耐用年数×0.2
例えば、築25年の木造建物(法廷耐用年数22年)の場合、22×0.2=4.4となり、耐用年数4年と計算されます。
海外の中古物件を2,000万円で購入していれば4年間にわたり、500万円を減価償却費として損金に計上することができたんですね。これが所得税の節税にあたるとし、2021年度の所得税計算からは減価償却費計上禁止となったわけです。
高額介護保険金について
介護保険金に関しては現在非課税となっており、現時点(2021年夏)で新たな規制の導入や税制改正は行われていませんが、今後規制が入る可能性があります。被保険者と家族ともに非課税となっている介護保険金ですが、以下の実態を踏まえてこうした保険を租税回避目的で利用される可能性が指摘されています。
・支払い事由の偶発性に乏しいこと
・要介護の本人以外も受取人に指定できる「特則」が金融庁から認可を受けている
・実費相当額を大きく上回る保険金が被保険者の家族に支払われることもある
国税庁は生保業界に対して実施した税務説明会で「介護保険金の受取人を本人以外とする際の税務の取り扱い」を説明し、不当に租税回避されていると捉えられる場合には保険受取人に課税関係が生じると回答せざるを得ない」旨の説明を行っています。
また、通達中にも介護保険を節税目的で利用する納税者や保険会社が散見される場合には非課税とする措置を見直すと言及されています。
まとめ
如何でしたでしょうか。不動産や保険商品など、身近なものに関する税制もめまぐるしく変わっていきます。やはり節税効果があるものは目がつけられやすいようですね。質問があれば直接お答えすることもできますので、質問箱https://peing.net/ja/kaikei_sodanまでご連絡いただけると嬉しいです。
それでは、さようなら。