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【簡単に!】グループ通算制度を解説①〜令和4年に連結納税制度は廃止されます!

法人税

本日のテーマはグループ通算制度です。連結納税制度といった方が馴染みのある方が多いかもしれませんが、令和2年度税制改正にて、連結納税制度は廃止、グループ通算制度へと移行することが決定しました。

グループ通算制度は令和4年(2022年)4月1日以後に開始する事業年度より適用されることとなります。

そこで、今回は新たに適用されるグループ通算制度の概要についてわかりやすく解説をしていきたいと思います。

連結納税制度との違いも合わせて理解できるようにしていきますので、2022年からグループ通算制度の対応を行う方、グループ通算制度に興味がある方はぜひチェックしていって下さい。

従来の連結納税制度とはどんな制度?

連結納税制度とは、企業グループ全体の所得に対して課税され、納税を行う制度のことをいい、子会社を有するグループ企業であれば、この制度を適用することが出来ます。

親会社も子会社もまとめて納税してしまいましょう、という制度ですね。

連結納税制度のメリットととしては、複数の会社の所得を通算することができるため、親会社、子会社それぞれで法人税の申告を行う場合に比べ、税負担を軽くすることが出来ます。

赤字の子会社の所得をグループ全体の所得から差し引くことで、課税対象を小さくできるのです。

【連結納税を利用しない場合】※税率は簡便的に20%と仮定

・子会社の所得:1,000万円の赤字

・親会社の所得:1,000万円の黒字

・子会社の法人税:ゼロ

・親会社の法人税:200万円

・グループ全体の法人税:200万円

【連結納税を利用する場合】※税率、子会社と親会社の所得金額は同上

・グループ全体の所得:ゼロ(1,000万円の赤字と黒字を相殺できる)

グループ全体の法人税:ゼロ

連結納税制度の主な適用条件や留意点は以下のとおりです。

○親会社とその100%子会社が制度の対象となる

○制度の適用は選択制。ただし、一旦選択した場合は、継続適用

○親会社が法人税の申告・納付を行う

○連結グループ内の各法人の所得金額に所要の調整を行った連結所得金額に、税率を乗じ、さらに、必要な調整を行った後に、連結税額を求める

グループ通算制度への移行背景

グループ通算制度は従来の連結納税制度に代わる制度として発足したものですが、制度移行の背景には以下の理由があると言われています。

○制度が複雑であることや親子会社間での所得調整のための事務負担により、連結納税制度を選択しない企業グループが多かった

○事務処理能力の差により、同様の経営を行なっている企業グループ間での課税の中立性・公平性が損なわれている

○組織再編税制の改正やグループ法人税制の創設など、連結納税制度を取り巻く税制が変化している

制度の簡素化により適用企業を増やすこと、改正された他の税制との整合性を図るためにグループ通算制度への移行が行われる、というわけですね。

グループ通算制度の適用法人と適用方法

以下に該当する親会社とその100%子会社であればグループ通算制度を適用することが出来ます。

(1)親会社

普通法人又は協同組合等のうち、次の①から⑦までいずれにも該当しない法人。

①清算中の法人
②普通法人(外国法人を除きます。)又は協同組合等との間にその普通法人又は協同組合等による完全支配関係がある法人

③ 通算承認の取りやめの承認を受けた法人でその承認日の属する事業年度終了後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
④青色申告の承認の取消通知を受けた法人でその通知後5年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人

⑤青色申告の取りやめの届出書を提出した法人でその提出後1年を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
⑥ 投資法人、特定目的会社

⑦その他一定の法人(普通法人以外の法人、破産手続開始決定を受けた法人等)

(2)子会社

100%子会社の内、上記(1)③から⑦までの法人以外の法人。

 

なお、グループ通算制度を適用する場合には、グループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の3ヶ月前の日までに、その親法人及び子法人の全ての連名で、承認申請書をその親法人の納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出する必要があります。

その申請についての通算承認又は却下の処分がなかったとき、つまり何の連絡もなかったときは、承認がされたとみなされます。

グループ通算制度における所得及び法人税額の計算

グループ通算制度では、主に以下の3つの方法で所得及び法人税額計算を行うことが特徴です。

①損益通算

通算法人の所得事業年度終了の日において、グループ通算制度の対象となる子会社に欠損金額が生じた場合は、通算法人の所得計算に欠損金額を算入することが出来ます。

欠損法人の欠損金額は、各法人の所得の金額に応じて(所得金額の比で)配分されることとなります。

なお、通算グループ内の一法人に申告額の修正・更正が生じた場合であっても、損益通算に用いる通算前の所得と欠損金額は修正されず、修正・更正が生じた申告のみが是正されます。

これを損益通算の遮断措置と言い、修正・更正の影響がグループ内の他の法人に及ばない仕組みとなっています。

②欠損金の通算

通算法人の事業年度の開始前10年以内に開始した各事業年度の欠損金額(特定欠損金額)は、自己の所得の範囲内でのみ控除することが出来ます。

また、欠損金額のうち、上記以外(特定欠損金額以外)の欠損金額は、損金算入限度額(特定欠損金を控除した残額)の比で各通算法人に配分し、配分後の欠損金を控除します。

欠損金額の通算においても遮断措置があり、修正・更正の影響がグループ内の他の法人の欠損金額に及ばない仕組みとなっています。

③遮断措置の不適用

遮断措置には不適用となるケースもあり、修更正事由が生じた場合で、通算事業年度の全ての通算法人について、期限内申告書に所得金額として記載された金額がゼロ又は欠損金額であること等の要件に該当するときは、損益通算及び欠損金額の通算の遮断措置が適用されません。

グループ通算制度における申告・納付方法

グループ通算制度においては、その適用を受ける通算グループ内の各通算法人を納税単位として、その各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行います。

連結納税制度では親法人が申告を行うこととなっていたため、この点が大きく変わっています。

また、通算法人は、他の通算法人の各事業年度の法人税について、連帯納付の責任を負います。

グループ内のいずれかの法人が税金の納付が出来ない場合には、グループ内の他の法人(親会社もしくは子会社)がその分の税金を納付する必要があります。

なお、令和4年度から開始するグループ通算制度には経過措置があり、連結確定申告書の提出期限の延長特例及び延長期間の指定の規定の適用を受けている場合には、その期間、連結納税制度を適用することも可能となっています。

 

【図解:グループ通算制度の流れ】

連結納税制度とグループ通算制度の比較

連結納税制度とグループ通算制度でどこが変わったのか?を理解するためには以下の比較表をご覧ください。

主な相違点をまとめています。

連結納税制度
(現行制度)
グループ納税制度
(新制度)
納税
主体
申告方法
・一体申告方式
・親法人が申告を行う
・個別申告方式
・親法人及び各子法人が申告を行う
事業年度親法人の事業年度に合わせる親法人の事業年度に合わせる
損益通算可能可能
SRLY
ルール
子法人の開始・加入前の繰越欠損金(特定連結欠損金)にはSRLYルールが適用されるが、親法人の開始前の繰越欠損金(非特定連結欠損金)は、SRLYルールが適用されない。親法人及び子法人の開始・加入前の繰越欠損金(特定欠損金)にSRLYルールを適用する。
※SRLYルールとは、制度に持ち込んだ開始・加入前の繰越欠損金を自己の所得を限度にしか使用させない措置をいう。
税率親法人の適用税率通算グループ内の各法人の適用税率
中小法人の
判定
親法人の資本金の額により連結グループ内の全ての法人の判定を行う。通算グループ内のいずれかの法人が中小法人に該当しない場合、通算グループ内の全ての法人が中小法人に該当しないこととする。
修正

更正の取扱い
グループ全体で修正・更正を行う。原則、各法人ごとに個別で修正・更正を行う。
青色申告別の制度あり青色申告
 

(参考:TKCグループホームページ)

第2回 連結納税制度とグループ通算制度の比較

 

まとめ

如何でしたでしょうか。

今回はグループ通算制度の概要についてお伝えしましたが、まだまだ説明しきれていない細かい制度もありますので、また次の記事で詳細の解説をしていこうと思います。

グループ通算制度の概要のポイントは以下となりますので最後におさらいしておきましょう。

・令和4年(2022年)4月1日より開始する事業年度から適用され、連結納税制度は廃止となる

・グループ通算制度では親法人及び各子法人でそれぞれ申告を行う必要あり

・税額計算にあたってグループ内で損益通算、欠損金の通算ができる

・修正・更正が発生した場合は、原則としてグループ内の他の法人の損益通算、欠損金額の通算には影響しない

不明点があればいつでもお問い合わせください。個別のご質問については、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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