本日は「会計上の変更及び誤謬の訂正」に関する会計基準の2回目です!
表示方法の変更、会計上の見積もりの変更及び誤謬の訂正を行う場合の取り扱いについて解説をしていきます。
ちなみに誤謬(ごびゅう)とは聞き慣れない言葉ですが、「間違い」のことで決算書作成にあたって凡ミスをしてしまった時に使います。(決算書の誤りには誤謬と不正があり、利益水増し等のためにわざと間違えた場合は「不正」になります)
前回の記事では会計方針の変更があった場合の取り扱いについて解説をしているので、よろしければこちらもチェックしてみて下さいね!
表示方法の変更を行う場合の取り扱い
表示方法の変更とは、例えば前年度まで「その他」勘定に含めていた貸付金を、「長期貸付金」勘定で表示し直すように、財務諸表における同一区分内での科目の独立掲記、統合あるいは科目名の変更及び重要性の増加に伴う表示方法の変更や、財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更のことを言います。
実務では「その他」勘定に含めていたものの重要性が増したことで独立した科目で表示する方式に変更するケースが多くみられます。
財務諸表の表示方法は毎期継続して採用することが求められており、変更が認められる場合は以下のケースに限定されています。
【表示方法の変更が認められるケース】
(1)表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合
(2)会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合
なお、財務諸表の表示方法を変更した場合は、表示する過去の財務諸表についても新たな表示方法に従う必要があります。有価証券報告書で開示する比較年度(前年度)の貸借対照表や損益計算書について、新たな表示方法へ修正する必要がある、ということですね。
また、表示方法の変更を行なった場合には、会社法計算書類や有価証券報告書において以下の事項を注記する必要があります。
【表示方法に関する注記】
(1)財務諸表の組替えの内容
(2)財務諸表の組替えを行った理由
(3)組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額
(4)原則的な取扱いが実務上不可能な場合にはその理由
注記の具体例としては以下のイメージとなります。
表示方法の変更
前事業年度まで区分掲記して表示しておりました「支払手数料」(当事業年度の金額は〇〇百万円)は、金額的重要性が乏しくなったため、当事業年度より、営業外費用の「その他」に含めて表示しております。
会計上の見積りの変更を行う場合の取り扱い
続いては、会計上の見積りの変更を行う場合についてです。
会計上の見積りの変更とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に行った会計上の見積りを変更することを言います。例えば、有形固定資産の耐用年数について、生産性向上の結果、新たな耐用年数を採用した場合などが考えられます。
会計上の見積りの変更を行なった場合には、次の事項を注記する必要があります。
【会計上の見積りに関する注記】
(1)会計上の見積りの変更の内容
(2)会計上の見積りの変更が、当期に影響を及ぼす場合は当期への影響額。当期への影響がない場合でも将来の期間に影響を及ぼす可能性があり、かつ、その影響額を合理的に見積ることができるときには、当該影響額。
※ただし、将来への影響額を合理的に見積ることが困難な場合には、その旨を注記します
会計上の見積りの変更は注記を行うことが求められているのみであり、表示方法の変更のような過去の財務諸表への遡及修正は求められていません。
注記の具体例としては以下のイメージとなります。
【例①:有形固定資産の耐用年数を変更した場合】
(会計上の見積りの変更)
有形固定資産の耐用年数の変更
当社は、当連結会計年度より一部の有形固定資産の耐用年数を3年から5年に変更しています。この変更は、主に○○○に係る建物及び構築物、工具、器具及び備品について、当該資産の利用実績を勘案し、より実態に即した耐用年数に変更するものです。この結果、従来の耐用年数による場合と比較し、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ×,×××百万円増加しています。
【例②:資産除去債務の見積りを変更した場合】
(会計上の見積りの変更)
資産除去債務の見積りの変更
当連結会計年度において、当社グループの店舗の賃貸借契約に伴う原状回復義務として計上していた資産除去債務について、新たな情報の入手に伴い、原状回復費用に関して見積りの変更を行いました。
当該見積りの変更による増加額×,×××百万円を変更前の資産除去債務残高に加算しております。
なお、当該見積りの変更により当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益が×××百万円減少しております。これは、閉鎖予定店舗に対する資産除去債務の全額を除去債務償却費として計上しておりましたが、当該見積りの変更により除去債務が増加したため、除去債務費用を追加計上したことによるものであります。
誤謬の訂正を行う場合の取り扱い
続いて、誤謬の訂正を行う場合の取り扱いを解説します。
決算作業や会計監査の中で過去の財務諸表の間違い(誤謬)が発見される場合がありますが、過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は、以下の方法で修正再表示を行います。
(1)表示期間より前の期間に関する修正再表示による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
(2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。
有価証券報告書では当期と前期の2期分の財務諸表を開示することとなるため、前期の誤謬の訂正は前期の貸借対照表や損益計算書で修正を行い、前々期以前の誤謬の訂正は誤謬の累積金額を算出して、前期の貸借対照表に反映させる、ということですね。
表示方法の変更や会計上の見積りの変更と同様に、過去の誤謬の訂正を行なった場合には、次の事項を注記する必要があります。
(1)過去の誤謬の内容
(2)表示期間のうち過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び 1 株当たり情報に対する影響額
(3)表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する修正再表示の累積的影響額
注記の具体例としては以下のイメージとなります。
誤謬の訂正に関する注記
当事業年度において、過年度の○○○の算定に係る誤謬の訂正を行いました。当該過年度の誤謬の訂正による累積的影響額は、当事業年度の期首の純資産額に反映されております。
この結果、当事業年度の期首の利益剰余金が×××百万円減少しております。
まとめ
如何でしたでしょうか。表示方法の変更、会計上の見積りの変更、過去の誤謬の訂正についてはあまり馴染みの無い方も多いと思いますが、実務で対応する場合にはそれぞれ計算書類や有価証券報告書への注記が必要となりますので要注意です。
また、過去の財務諸表への遡及修正が必要なものもありますが、まとめると以下となります。
種類 | 会計上の原則的な取扱い |
会計方針の変更 | 遡及処理する(遡及適用) |
表示方法の変更 | 遡及処理する(財務諸表の組替え) |
会計上の見積りの変更 | 遡及処理しない |
過去の誤謬の訂正 | 遡及処理する(修正再表示) |
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それでは、さようなら。