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【わかりやすい】固定資産の減損について解説①〜減損会計とは?

会計

今回は、固定資産の減損会計のポイントをわかりやすく解説してきます。
ここでは、減損会計を行う流れと会計処理に出てくる用語の意味を解説していきます!

解説する基準

解説する基準
・固定資産の減損に係る会計基準(企業会計審議会)
・固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第6号)

減損会計とは?

固定資産の減損会計とは、固定資産によって得られていた収益が何らかの要因により得られなくなった場合に、固定資産の価値を本来の価値(収益が得られなくなった場合の価値)まで減額を行う会計処理のこと です。

基準には以下の通り記載されています。

固定資産の減損に係る会計基準(企業会計審議会)
3. 固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である。

通常、固定資産は、稼働時から使用している期間の間、減価償却によって費用を計上していきます。

しかし、使用している期間の途中でその固定資産を使わなくなった場合や、その固定資産によって得られる収益が低くなった場合に、会社の帳簿に計上している固定資産の価額を本来の価値まで減額するべきというのがこの基準の趣旨となります。
減損会計は、固定資産の簿価を「時価」にする考え方ではありません。減価償却によって一定期間に渡って費用処理を行っていた固定資産の収益性が低下した場合には(減価償却を行っているだけだと将来に損失が繰り延べるだけのため)、将来に損失を繰り延べないように、収益性が低下した時点で帳簿価額の切り下げを行う会計処理となります。

固定資産の減損に係る会計基準
1. (途中省略)事業用の固定資産であっても、その収益性が当初の予想よりも低下し、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させなければならない場合がある。このような場合における固定資産の減損処理は、棚卸資産の評価減、固定資産の物理的な滅失による臨時損失や耐用年数の短縮に伴う臨時償却などと同様に、事業用資産の過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理と考えることが適当である。これは、金融商品に適用されている時価評価とは異なり、資産価値の変動によって利益を測定することや、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とするものではなく、取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。

減損会計のステップ

固定資産の減損処理は、次のステップで処理を行なっていきます。

【用語の解説】

・グルーピングとは?
減損を行う固定資産の単位(=範囲)を決定することです。基準には「資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う(減損会計基準 二 6.⑴参照)こととされており、企業は、経営の実態が適切に反映されるよう配慮して行う。」と記載されています。

そのためグルーピングは、収益を獲得できる最小の単位でグルーピングを決定します。
機械装置一つでキャッシュ(=収入)を獲得できているのであれば、その機械装置一つでグルーピングとなりますし、機械装置単体ではなく、建物とあわせてキャッシュ(=収入)を獲得しているのであれば機械装置と建物をあわせた固定資産グループがグルーピングとなります。
この決定したグルーピングに基づいて、次のステップである「兆候」、「認識」、「測定」を行なっていきます。

・減損の兆候とは?
固定資産の減損を行うきっかけとなる事象のことを指します。固定資産の減損は「何らかの要因」によりキャッシュ(=収入)が得られなくなった場合に計上を行うため、「何らかの要因」であるきっかけが必要となります。
この「何らかの要因」を基準上「兆候」とよんでいます。なお基準に記載されている減損の兆候には4つあり、以下の通りです。

・営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
・使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
・経営環境の著しい悪化の場合
・市場価格の著しい下落の場合

会計基準には、固定資産の減損の兆候となる4つの事象における具体例が記載されているのでチェックしてみてください。簡単に要約すると固定資産グループがキャッシュ(=収入)を得られなくなるような出来事、きっかけが例示されています。

 

・減損の認識とは?
固定資産の減損処理は、減損の兆候が「あり」となった場合に行っていきます。
さらにもう1つステップが設けられており、それが「認識の判定」です。減損の認識が「必要」と判定された場合に、次の「測定」に進むこととなります。

ではどういった場合に減損の認識が「必要」となるのか?
資産グループから得られる割引前キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、減損を認識する必要があります。

減損の認識が必要な場合 : 割引前キャッシュ・フロー<帳簿価額

・割引前キャッシュ・フローとは?
割引前キャッシュ・フローとは現在の価値に置き換えていない将来のキャッシュ(=収入)のことです。
割引前とは将来のキャッシュ(=収入)を現在の価値に置き換えていないということです。

 

・減損の測定とは?
最後に減損の測定ですが、ここはイメージしやすいと思います。
測定とは、資産グループの帳簿価額を回収可能価額(=固定資産の本来の価値)まで減額し、帳簿価額との差額を当期の損失として減損損失を認識すること。

つまり、減損損失がいくらなのかを確定させるのが減損の「測定」となります。

固定資産の回収可能価額(=本来の価値)は次のいずれかの高いほうとされています。

・正味売却価額・・・その固定資産を売却した場合に得られるキャッシュ(=収入)
・使用価値・・・その固定資産を使用し続けた場合に得られるキャッシュ(=収入)

この正味売却価額、使用価値の算定は固定資産の売却価値や将来の事業計画をもとに算定していくため、見積りの要素が大きく、実務上、非常に難しいものとなっています。事業計画を正確に見積もるってとても難しいことなのです。

 

なぜ減損の「測定」の前に「認識」の判定が必要なのか、これは日本基準特有のステップであり、次の理由によるものです。

・固定資産の減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存する

・固定資産の減損は、将来のキャッシュ(=収入)が不確定であるため測定が主観的になってしまう

固定資産の減損の性質上、固定資産の減損の存在が相当程度に確実な場合に、認識することが適当なため、「測定」の前に「認識」の判定が必要となっています。

割引前キャッシュ・フローは、現在価値に置き換えていないキャッシュ・フローのため現在の価値に置き換えたキャッシュ・フロー(割引後将来キャッシュ・フロー)よりも大きい金額となります。
そのため、割引前キャッシュ・フローで帳簿価額を下回っている場合には減損の存在は確実と言えることからのこの認識の要否のステップが必要となっているのです。

まとめ

固定資産の減損会計について理解できましたでしょうか?固定資産の減損会計は見積もりの要素が多く(将来キャッシュ・フローや割引率の設定など)、実務でも非常に難しい処理となります。まずは基本となる所をしっかり抑えましょう!

次の記事にて減損検討に用いられる割引率についても解説しているので是非チェックしてみて下さい。

個別のご相談はコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)にお願いします!ではでは!

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