今回のお題は「リース会計」です。前回解説したファイナンスリース取引の『貸手側』の会計処理について解説を行なっていきます。リース会計の全体像とファイナンスリースの借手側の処理については前回の記事で説明していますので、こちらもぜひチェックしてみて下さい!
所有権移転外ファイナンスリースの会計処理
前回記事で解説した通り、ファイナンスリースには「所有権移転外ファイナンスリース」と「所有権移転ファイナンスリース」の2種類があります。
分類 | 取引内容 |
所有権移転外ファイナンスリース | リース期間満了後は当該資産をリース会社へ返却しなければならない取引のこと |
所有権移転ファイナンスリース | リース契約の諸条件に照らし、リース期間満了後に当該資産の所有権が借手に移転する取引のこと |
まずは所有権移転外ファイナンスリースの貸手側の会計処理について確認していきましょう。
貸手の行った所有権移転外ファイナンスリース取引は、取引実態に応じ第1法〜第3法までのいずれかの方法を選択して継続的に適用することとなります(リース適用指針第51項)。
会計の考え方には「継続性の原則」があり、恣意性が介入するのを防ぐため、一度選択した会計方針を継続しなければなりませんので、第1法〜第3法の選択は慎重に行う必要があります。
第1法の会計処理
第1法 リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法
・リース取引開始日に、リース料総額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上する方法
・リース物件の現金購入価額(リース物件を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により売上原価を計上する
・また、リース取引開始日に計算された売上高と売上原価との差額は、利息相当額として取り扱う
この方法は企業が商品の販売時にリースを利用するケースが想定されています。
それでは具体的な仕訳をみていきましょう。解説にあたり、取引の前提は以下の通りとします。
【取引の前提】
・リース料総額は6,000,000円
・貸手のリース物権購入価額は5,000,000円
・貸手の見積残存価額は400,000円
・リース期間は5年間、年1回1,200,000円を支払い
・貸手の利率は8.46%
●リース取引開始日の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
リース投資資産 | 6,000,000 | 売上高 | 6,000,000 |
売上原価 | 5,000,000 | 買掛金 | 5,000,000 |
リース投資資産 | 400,000 | 売上原価 | 400,000 |
リース取引開始日にはリース料総額を売上高として計上し、貸借対照表(BS)にはリース投資資産を計上します。
売上原価は、リース物件の購入価額から見積残存価額を控除して算定します。
●リース料回収及び決算時の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
現金預金 | 1,200,000 | リース投資資産 | 1,200,000 |
繰延リース利益繰入(PL) | 976,916 | 繰延リース利益(BS) | 976,916 |
リース料の回収に応じて貸借対照表に計上したリース投資資産を取り崩していきます。
また、第1法では売上高と売上原価が利息相当額になりますので、決算時には翌期以降の利益相当分を「繰延リース利益繰入(PL)」と「繰延リース利益(BS)」勘定を用いて繰り延べる処理を行います。
なお、繰り延べるリース利益の計算は、利息相当額全体からリース投資資産(見積残存価額含む)の未返済元本に利率を乗じて算定した当期分の利息金額を差し引いて計算します。
・利息相当額:6,000,000円(売上高)−4,600,000(売上原価)=1,400,000
・当期分の支払利息額:5,000,000円(貸手側の購入価額期首残高)×8.46%=423,084
・繰延リース利益:1,400,000−423,084=976,916
○(参考)支払利息と元本回収の一覧表
●最終のリース料回収時の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
現金預金 | 1,200,000 | リース投資資産 | 1,200,000 |
繰延リース利益(BS) | 124,825 | 繰延リース利益戻入益(PL) | 124,825 |
貯蔵品 | 400,000 | リース投資資産 | 400,000 |
最終のリース料回収時にはリース投資資産の取り崩しを行うとともに、繰延ベてきた繰延リース利益の戻入れを行います。
※5年目の期首リース投資資産残高(1,475,175)×貸手の利率8.46%=124,825
また、リース投資資産の内、見積残存価額分については貯蔵品勘定への振替えを行います。
第2法の会計処理
第2法 リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法
・リース取引開始日に、リース物件の現金購入価額(リース物件を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を計上
・リース期間中の各期に受け取るリース料(以下「受取リース料」という。)を各期において売上高として計上し
・売上金額からリース期間中の各期に配分された利息相当額を差し引いた額をリース物件の売上原価として処理
この方法は割賦販売処理が想定されています。
それでは具体的な仕訳をみていきましょう。解説にあたり、取引の前提は第1法と同様とします。
●リース取引開始日の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
リース投資資産 | 5,000,000 | 買掛金 | 5,000,000 |
リース取引開始日には貸手の物件購入価額でリース投資資産を貸借対照表に計上します。(物件は掛けで購入することを前提とし、貸方は買掛金としています)
●リース料回収時の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
現金預金 | 1,200,000 | 売上高 | 1,200,000 |
売上原価※ | 776,916 | リース投資資産 | 776,916 |
リース料回収時に売上高を計上します。
また、売上高から各期の利息相当額(各期の利息相当額は、「第1法の会計処理」の「(参考)支払利息と元本回収の一覧表」を参照してください)を控除した金額を売上原価として計上し、リース投資資産を取り崩していきます。
※売上高(1,200,000)−1回目の支払利息(423,084)=776,916
●最終のリース料回収時の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
現金預金 | 1,200,000 | 売上高 | 1,200,000 |
売上原価※ | 1,075,175 | リース投資資産 | 1,075,175 |
貯蔵品 | 400,000 | リース投資資産 | 400,000 |
最終のリース料回収時には売上・売上原価の計上のほかに、見積残存価額分を貯蔵品勘定に振替える仕訳が必要となります。この点は第1法と同様の処理となりますね。
※売上高(1,200,000)−5回目の支払利息(124,825)=1,075,175
第3法の会計処理
第3法 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法
・リース取引開始日に、リース物件の現金購入価額(リース物件を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を計上
・各期の受取リース料を利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、後者をリース投資資産の元本回収額として処理
この方法は金融取引の性質が強いケースが想定されています。
それでは具体的な仕訳をみていきましょう。解説にあたり、取引の前提は第1法と同様とします。
●リース取引開始日の仕訳(第2法と同様)
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
リース投資資産 | 5,000,000 | 買掛金 | 5,000,000 |
リース取引開始日には貸手の物件購入価額でリース投資資産を貸借対照表に計上します。(物件は掛けで購入することを前提とし、貸方は買掛金としています)
●リース料回収及び決算時の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
現金預金 | 1,200,000 | 受取利息 | 423,084 |
リース投資資産※ | 776,916 |
リース料回収時には受取利息の計上(各期の利息相当額は、「第1法の会計処理」の「(参考)支払利息と元本回収の一覧表」を参照してください)とリース投資資産の取崩しをしていきます。
※売上高(1,200,000)−1回目の受取利息(423,084)=776,916
●最終のリース料回収時の仕訳
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 |
現金預金 | 1,200,000 | 受取利息 | 124,825 |
リース投資資産※ | 1,075,175 | ||
貯蔵品 | 400,000 | リース投資資産 | 400,000 |
最終のリース料回収時には受取利息の計上のほかに、見積残存価額分を貯蔵品勘定に振替える仕訳が必要となります。この点は第1法、第2法と同様です。
※売上高(1,200,000)−5回目の受取利息(124,825)=1,075,175
所有権移転ファイナンスリースの会計処理
続いて所有権移転ファイナンスリースの場合の貸手の会計処理についてです。
所有権移転ファイナンスリースの場合でも、原則として所有権移転外ファイナンスリースと同様の会計処理を行います。
なお、物件の所有権が移転しますので、所有権移転外ファイナンスリースで利用していた「リース投資資産」勘定ではなく「リース債権」勘定を利用する点が相違点となります。
まとめ
如何でしたでしょうか。貸手側のファイナンスリースの会計処理は3種類の方法がありますので、リース取引の実態に合わせて選択適用する点が重要となります。物件の販売にリースと利用しているのか、利息収受目的で金融取引としてリースを利用するのか、といった観点で考えると良いと思います。
ポイント
・ファイナンスリース取引の貸手の会計処理には第1法〜第3法の3種類がある。
・一度選択した処理方法は継続して利用しなければならない。
・所有権移転ファイナンスリースの場合は「リース投資資産」勘定を、所有権移転外ファイナンスリースの場合は「リース債権」勘定を使用する。
ご質問があれば質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!
それでは、さようなら。