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【わかりやすく】時価算定基準の概要、適用時期について解説!

会計

今回は、2019年7月4日に企業会計基準委員会(ASBJ)及び日本公認会計士協会(会計制度委員会)より公表された時価算定基準(正式名称を「企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」)についての概要を解説していきたいと思います!

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時価算定基準とは

金融商品会計基準等の会計基準では、一部の勘定科目について「時価」で算定することが求められておりますが、「時価」の算定方法に関する詳細なガイダンスは定められていませんでした。

一方で、国際的な基準では公正価値測定について詳細なガイダンスを定めています。
この国際的な整合性を図るために、日本においても時価算定基準が作成されました。

そもそも時価とは・・・?

「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう。

基準では、難しい言葉を使用していますが、簡単に言うと、市場で取引されている価格(資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格)のことです。

この時価の算定方法について、今までは詳細なガイダンスがなかったことから、国際動向に合わせるために、時価の算定方法を定めた基準が「時価算定基準」なのです。

この時価算定基準は、以下の基準における「時価」が対象となっています。
以下の基準では、有価証券や金銭債権、デリバティブ、棚卸資産についての時価を算定する必要があるためです。

・企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」
・企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」

時価算定基準の構成は次の通りです。

1. 時価の算定単位

⒉ 時価の算定方法
 (1)評価技法
 (2)インプット
 (3)資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合等
 (4)負債又は払込資本を増加させる金融商品

次のセクションから一つずつ解説してきます!

時価の算定単位について

「時価の算定単位」
資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示によるとされています。

しかし、次の要件を全て満たす場合には金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができるとされています。
基準には以下の通り記載されていますが、簡単に言い換えた要約を青字にて記載してみました。

(1) 企業の文書化したリスク管理戦略又は投資戦略に従って、特定の市場リスク又は特定の取引相手先の信用リスクに関する正味の資産又は負債に基づき、当該金融資産及び金融負債のグループを管理していること
→市場リスク、取引先の信用リスクについて資産、負債グループごとに企業できちんと管理していること

(2) 当該金融資産及び金融負債のグループに関する情報を企業の役員(関連当事者会計基準第5項(7))に提供していること
→金融資産及び金融負債のグループに関する情報を企業の役員に提供していること

(3) 当該金融資産及び金融負債を各決算日の貸借対照表において時価評価していること
→当該金融資産及び金融負債を各決算日の貸借対照表において時価評価していること

(4) 特定の市場リスクに関連して本項の定めに従う場合には、当該金融資産及び金融負債のグループの中で企業がさらされている市場リスクがほぼ同一であり、かつ、当該金融資産及び金融負債から生じる特定の市場リスクにさらされている期間がほぼ同一であること
→金融資産及び金融負債のグループの中で企業がさらされている市場リスク、期間がほぼ同一であること

(5) 特定の取引相手先の信用リスクに関連して本項の定めに従う場合には、債務不履行の発生時において信用リスクのポジションを軽減する既存の取決め(例えば、取引相手先とのマスターネッティング契約や、当事者の信用リスクに対する正味の資産又は負債に基づき担保を授受する契約)が法的に強制される可能性についての市場参加者の予想を時価に反映すること
→債務不履行が発生した時における既存の取決め(信用リスクのポジションを軽減する取決め)が法的に強制される可能性についての市場参加者の予想を時価に反映すること

この容認規定は、あくまで時価の「算定単位」について定めたものであり、グループ内の金融資産、負債の純額「表示」を認める規定ではありませんのでご注意ください。

時価の算定方法 評価技法について

時価の算定方法は、以下の2つの要素で構成されています。
・評価技法
・インプット

■ 評価技法
まずは評価技法について解説していきます。
時価を算定するにあたって用いる評価技法には、次の3つのアプローチがあります。

(1) マーケット・アプローチ
同一又は類似の資産又は負債に関する市場取引による価格等のインプットを用いる評価技法のこと。
当該評価技法には、例えば、倍率法や主に債券の時価算定に用いられるマトリックス・プライシングが含まれる。

(2) インカム・アプローチ
インカム・アプローチとは、利益やキャッシュ・フロー等の将来の金額に関する現在の市場の期待を割引現在価値で示す評価技法のこと。当該評価技法には、例えば、現在価値技法やオプション価格モデルが含まれる。

(3) コスト・アプローチ
コスト・アプローチとは、資産の用役能力を再調達するために現在必要な金額に基づく評価技法をいう。

つまり簡単に説明すると、

マーケットアプローチ → 市場取引による価格
インカム・アプローチ → 将来得られるキャッシュの現在価値にて求められる価格
コスト・アプローチ → その資産を再調達する場合に必要なコストに基づく価格

という感じです。

時価の算定方法 インプットについて

■ インプット
インプットとは時価を算定する際に用いる仮定(時価の算定に固有のリスクに関する仮定を含む。)のことをいいます。


インプットは、観察可能なインプットと観察できないインプットにより構成されます。
・観察可能なインプット・・・入手できる観察可能な市場データに基づくインプット
・観察できないインプット・・・観察可能な市場データではないが、入手できる最良の情報に基づくインプット


時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用します。

インプットのレベル内容観察可能性例示
時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないもの。観察可能・東京証券取引書で取引される普通株式
資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプットをいう。観察可能・保有し使用している建物
資産又は負債について観察できないインプットをいう。
当該インプットは、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いる。
観察できない・金利スワップ

評価技法とインプット

時価の算定方法

時価の算定方法について要約すると、マーケット・アプローチなどの評価技法に、これらのインプットを使用(レベル1から優先的に使用)して、アウトプットとしての「時価」を算定していくこととなります。

そして、この算定した時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル1の時価、レベル2の時価又はレベル3の時価に分類します。(アウトプットとしての時価をレベル別に分類する)

ここで、インプットの際に、異なるレベルのインプットが用いられた場合には、優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類することとなります(レベル1とレベル3がインプットに用いられた場合、レベル3インプットの影響が重要であればレベル3となる)。

その他の取り扱い

時価算定基準では、実務慣習に配慮し、次の取扱いが定められています。

<第三者から入手した相場価格の利用>
取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができる。

上記の定めにかかわらず、総資産の大部分を金融資産が占め、かつ、総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団又は企業以外の企業集団又は企業においては、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団又は企業から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、次のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができる。

①インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
②インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約

市場価格のない株式等の取り扱い

時価算定基準においては、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合出であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットに基づき時価を算定することとされています。

そのため、「時価を把握することが極めて困難な場合の有価証券、デリバティブ」は想定されず、金融商品会計基準からこの記載(時価を把握することが極めて困難な場合)が削除されました。

ただし、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とする取扱いとすることとされています。

適用時期

時価算定基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています。

早期適用も認められており、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができ、また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を適用することができるとされています。

多くの会社で2021年度より適用を行うことが考えられますので、しっかり基準を理解して準備をしましょう!

まとめ

いかがだったでしょうか?今回の内容をまとめると下記の通りです。

・時価にて算定する必要がある科目があるものの、日本では「時価」の算定方法に関する詳細なガイダンスが定められてないかったため、今回、「時価」について定めた基準が時価算定基準

・時価算定の評価技法には、「マーケット・アプローチ」、「インカム・アプローチ」、「コスト・アプローチ」の3つがある。

・時価算定におけるインプット(時価を算定する際に用いる仮定)についてレベル別に定義されており、市場で観察できるレベル1から優先的に使用する。

・適用開始時期は、2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から

ご質問は、コメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)で受け付けていますのでよろしくお願いします!

ではでは!

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