今回も、前回に引き続き、資産除去債務についてのポイントをわかりやすく解説していきます。
今回は、資産除去債務の簡便法ともよばれる建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合の処理について解説していきます。
前回の記事についてはこちらをご確認ください!
解説する基準
・資産除去債務に関する会計基準(企業会計基準第18号)
・資産除去債務に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第21号)
資産除去債務の簡便法
資産除去債務の計上には、簡便法が認められています!
原則処理
資産除去債務の原則的な計上方法は、将来発生すると見込まれる撤去費用(割引前の将来キャッシュ・フロー)を見積もり、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率にて割引計算を行い、割引後の金額(割引価値)にて計上を行います。
。
簡便処理
実務上、上記の原則的な方法では割引計算を行う必要があるなど、計算が煩雑になることから一定のケースに限り、簡便法が認められているのです。それが以下の基準となります。
・資産除去債務に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第21号)
(建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合)
9.建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合がある。この場合において、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる。
分かりましたでしょうか?
この会計処理が認められる条件として以下の2点が挙げられます。
・賃借契約において原状回復義務が要求されている。
・当該契約に関連する敷金が計上されている。
このケースに該当する場合には、資産に計上している敷金のうち、原状回復費用を合理的に見積もり、当該部分を建物等の撤去時期までの期間にわたり費用処理を行なっていくという簡便法が認められています。
設例で見ていきましょう!
例)
1.前提条件
Z社はY社との間でC建物の賃貸借契約を締結し、20X1年4月1日から賃借している。また、Z社は同日に1,000を、Y社に敷金として支払っている。Z社の決算日は3月31日である。Z社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間は5年と見積られている。
【簡便法の会計処理】
⑴ 20X1年4月1日
Z社はC建物の賃貸借契約に関連してY社に敷金を支払っているため、資産計上を行う。
(借方) | (貸方) | ||
敷金 | 1,000 | 現金預金 | 1,000 |
敷金が計上されているため、ここでは、資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上を行わない方法によることとした。→ここが簡便法!
⑵ 20X2年3月31日
敷金のうち500について原状回復費用に充てられるため返還が見込めないと認められたことから、Z社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間(5年)で費用配分することとした。
(借方) | (貸方) | ||
敷金の償却 (費用) | 100 | 敷金 | 100 |
敷金1,000のうち、500部分については原状回復費用として将来負担することが見込まれたため、当該500部分について退去時までの5年間にわたり費用処理を行なっていく処理となります。
原状回復義務 500 ÷ 5年間(平均的な入居期間) = 100
資産除去債務の原則的な方法は、計上時点から退去時までの期間において資産除去債務にかかる減価償却費、利息費用を計上してくこととなりますが、この簡便法においても敷金の償却を行うことで、原則法における処理と同じように退去時までの期間にわたり費用計上がなされることとなります。
そのため、原則処理と簡便法の違いは固定資産取得時に負債を計上するかどうかという点になります。
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