G-X0MQHQND78

【わかりやすく!】IFRS16「リース」について解説〜借手側の会計処理

リース取引関係

こんにちは!本日はIFRS16「リース」について解説していきます。前回の記事で日本基準のリース会計処理について解説しましたが、今回はIFRS基準(国際財務報告基準)です。主に日本基準との違いをわかりやすく解説していこうと思いますので、チェック頂けると嬉しいです!

日本基準上の借手の会計処理については前回の記事でおさらいできますので、よろしければこちらもどうぞ。

まずはIFRSと呼ばれる国際財務会計基準について簡単に説明します。

噛み砕いて言えば全世界でスタンダードとなっている会計基準のことで、すでに100ヵ国以上の国で適用されています。日本では2010年よりIFRSが任意適用されており、大手総合商社やソフトバンク、リクルートの他、グローバル展開している各種製造業などで導入が進んでおり、2021年8月時点でのIFRS適用済み会社数は233社となっています。

なお、日本国内での強制適用は当面無い旨を金融庁が発表しているため、大多数の会社は日本基準で財務諸表を作成することとなりますが、将来的にはIFRSが強制適用される時代が来てもおかしくはないので、早めに知識をつけておくと良いかと思います。

IFRS16における会計処理の考え方

IFRSでは16号が「リース」に関する会計基準となっています。IFRS16は2019年度より適用開始となった新基準であり、日本では2020年3月期よりIFRS適用企業で当該基準への対応が必要となっています。また、日本でIFRSを適用していない企業であっても、IFRSが適用されている海外子会社では新基準による影響がありますので要注意です。

IFRS16では日本基準のようにファイナンスリースとオペレーティングリースに分類をして会計処理を定めることはなく、リース開始日に「使用権資産」と「リース負債」を認識する会計処理を原則としています。

日本基準ではオペレーティングリース取引であればリース料支払い時に費用処理しますが、IFRSではこのような考え方はない、ということです。

なお、短期リース及び少額資産のリースに対しては一定の免除規定があり、この場合はリース料支払い時に費用処理するケースがありますので、次のセクション以降でIFRS上のリースの定義や借手側の具体的な会計処理を確認していきましょう。

IFRS16におけるリースの定義

IFRS16では契約日に当該契約がリースに該当するか否かを判定する必要があります。

・IFRS第16号9項
契約日に、企業は、当該契約がリースであるかまたはリースを含んだものであるのかどうか判定しなければならない。契約は、当該契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合には、リースであるかまたはリースを含んでいる。

ポイントとしては以下の2点です。

・リース対象とする資産が具体的に特定されていること

・リースは一定期間にわたって特定された資産の使用を支配する権利を移転しなければいけないこと

堅苦しい言葉でわかりづらいですが、要は〇年間、月額〇〇円で使えますよという形態の取引について、契約上で対象資産が特定されていること、使用期間については借手側に対象資産の使用の権利があること、が明確であればリース契約に該当する、ということですね。

日本基準との考え方の相違点としては、「契約」に注目して定義づけを行っている点ですね。

IFRS16で定められている借手側の会計処理

1. リース取引開始日の処理

リースの開始日において、借手は以下の両方を認識する必要があります。

・使用権資産
・リース負債

日本基準で使われている「リース資産」勘定はIFRSでは「使用権資産」に、「リース債務」勘定はIFRSでは「リース負債」となります。

使用権資産とリース負債が5,000,000円の場合にはリースの開始日にて以下の仕訳を起票するイメージです。

勘定科目借方勘定科目貸方
使用権資産5,000,000リース負債5,000,0000

2. 使用権資産の測定

使用権資産は取得原価は以下の要素から構成されます。①のみであればリース負債と同額になりますが、原状回復費用等のその他のコストが見込まれる場合にはリース負債の金額を上回ることとなります。

①リース負債の金額

②開始日以前に支払ったリース料から、受け取ったリース・インセンティブを控除したもの

③借手に発生した当初直接コスト

④原資産の原状回復の際に借手に生じるコスト

3. リース負債の測定

リース負債はリース開始日時における未払いのリース料の現在価値で測定する必要があります。
原則的な考え方としては日本基準と同様ですね。

なお、現在価値の算定に当たって次のものを利用して割引計算を行います。

・リースの計算利子率
・リースの計算利子率が容易に算定できない場合には、借手の追加借入利率

4. リース料支払い時の処理

日本基準と同様にリース料支払い時には支払利息を計上し、金利費用をリース期間にわたって配分されるようにします。
各期間におけるリース負債に係る金利の算定に当たっては以下の利率を利用します。 

・リース負債の当初測定に使用された割引率

・リース料の改訂があった場合には、改訂後の割引率(以下のいずれか)
 a. リース期間の残り期間についてのリースの計算利子率
 b. リースの計算利子率が容易に算定できない場合、見直し日現在の借手の追加借入利率

5. 使用権資産の減価償却

リース取引開始日に計上した使用権資産はリース期間の各期末に減価償却を行います。

IFRS16においては使用権資産の償却期間を以下のように定めています。

・原資産の所有権が借手に移転する場合、または使用権資産の取得原価に購入オプションを反映している場合には、使用権資産を開始日から原資産の耐用年数の終了時まで

・それ以外の場合には使用権資産の耐用年数の終了時またはリース期間の終了時のいずれか早いほうまで

短期リース及び少額資産のリースにおける会計処理

短期リースもしくは少額資産のリースに該当するリース取引の場合は、免除規定が適用され、リース料をリース期間にわたり費用処理する方法(リースのオフバランス処理)が認められています。

短期リースと少額資産のリースの定義は以下となります。

・短期リース:「開始日において、リース期間が12ヶ月以内であるリース」

・少額資産のリース:現行のIFRS16では何が「少額」の資産を意味するか、明確な定義はされていません。少額資産の例には、タブレット及びPC、小型のオフィス家具や電話などがあります。

上記のいずれかに該当する場合には、リース料支払い時に費用処理するのみでよく、前セクションの1〜5の会計処理は不要となりますので覚えておいて下さいね。

その他の論点

借手は使用権資産に対してIAS第36号「資産の減損」を適用し、使用権資産の減損判定及び識別された減損損失の計上を行う必要があります。この点、日本基準においてもリース資産は減損会計の対象となりますので特に基準差はないと言えます。

まとめ

如何でしたでしょうか。今回はIFRSについて解説を行いましたが、特に日本基準と相違する部分をチェックしてもらえればと思います。

【ポイント】

・IFRSでは原則として全てのリース取引をオンバランス処理(使用権資産とリース負債の計上)しなければならない

・「リース資産」勘定に代わり、「使用権資産」勘定を利用する

・短期リース、少額資産リースの場合にはリース料支払い時費用処理も認められる。

日本基準ではオペレーティングリース取引を、リース料支払い時に費用処理(オフバランス処理)しますが、IFRSではオンバランス処理(使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上)しなければならない点が特に重要です。

ご質問があれば質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました