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【わかりやすい】税効果会計について解説② 繰延税金資産の回収可能性とは?

会計

今回は、前回に引き続き、税効果会計について、解説をしていきたいと思います。
前回は、税効果会計の必要性や一時差異とは?について解説を行いました。
そちらの記事についても是非チェックしてみて下さい!

今回は、税効果における繰延税金資産とは? 繰延税金資産の回収可能性とは? について解説していきます。

繰延税金資産とは?

繰延税金資産とは税効果会計における「将来減算一時差異」について、将来の税額から減額される額(「将来減算一時差異」に税率を乗じた金額)を資産として計上したものをいいます。

前回のおさらいとなりますが、「財務会計」と「税務会計」のズレのうち、将来解消される差異のことで、税効果会計の対象となる差異のことを「一時差異」と呼びます。

「一時差異」はさらに、「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」に分類されます。

「将来減算一時差異」は、当該一時差異が解消するときに税務申告上その期の課税所得を減額させる効果を持つ差異
「将来加算一時差異」は、当該一時差異が解消するときに税務申告上その期の課税所得を増額させる効果を持つ差異

となります。

将来減算一時差異は、解消される期の課税所得を減額させる効果を持つ差異のため、「繰延税金資産」として計上されます。

将来の課税所得を減額させる ≒ 税金の前払いを行っている=資産

ここまでは前回で解説した内容となりますが、全ての「将来減算一時差異」を繰延税金資産として計上できるわけではありません。

将来減算一時差異のうち、将来の税金負担額を軽減する効果がある部分のみを繰延税金資産として計上することができます。基準には以下のように記載されています。

繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)
4.繰延税金資産又は繰延税金負債は、一時差異等に係る税金の額から将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を控除して計上しなければならない(税効果会計基準 第二 二 1)。


将来減算一時差異は、将来の課税所得を減額させる効果を持つ差異なのに、将来の税金負担額を軽減させる効果がないとはどういうことでしょうか。

繰延税金資産は、「将来の税金負担額を減額する効果があるかどうか」 をいいます。

しかし、将来減算一時差異が解消する時にそもそも将来の課税所得がなければ、税金は減額されません。
赤字(課税所得がマイナス)の会社は、法人税が課せられないということです。

将来の課税所得が見込めなければ、いくら課税所得を減額させても将来の税金負担額は変わらないため、繰延税金資産を計上することができない、ということになります。

将来の課税所得を減額させる効果を持つ = 将来の税金負担額を軽減させる ではない

そのため、繰延税金資産については回収可能性(将来の税金を減額させる効果を持つのか)が論点となるのです。

繰延税金資産の回収可能性について

繰延税金資産の回収可能性とは、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうか という意味です。

繰延税金資産の回収可能性(将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうか)については、次の⑴から⑶に基づいて、判断していきます。

(1) 収益力(に基づく一時差異等加減算前課税所得)
(2) タックス・プランニング(に基づく一時差異等加減算前課税所得)
(3) 将来加算一時差異

【(1)収益力(に基づく一時差異等加減算前課税所得)】
まず、(1)収益力(に基づく一時差異等加減算前課税所得)についてですが、こちらは、将来減算一時差異が解消される年度に、税金が計上されるだけの十分な課税所得(収益力)が見込まれるのかということです。そもそも、十分な課税所得が発生しなければ、税金を減額させることはできないため、全ての前提となる重要な判断ポイントです。

【(2)タックス・プランニング(に基づく一時差異等加減算前課税所得)】
次に、(2)タックス・プランニング(に基づく一時差異等加減算前課税所得)について説明します。
(1)で収益力について説明しましたが、将来減算一時差異が解消される年度に、将来の固定資産や有価証券を売却するといった特別な計画により十分な課税所得が発生すると計画している場合、単に計画(プランニング)しているだけでなく、その実行可能性が高いかということが求められます。

【(3)将来加算一時差異】
最後に(3)将来加算一時差異について説明します。将来の課税所得が十分に見込まれる場合以外でも、将来加算一時差異が発生する場合には、将来の税金負担額を軽減する効果を有する効果があるといえます。将来加算一時差異は、将来の課税所得を増額させる効果を持つ差異であるため、将来減算一時差異を「相殺」できるだけの将来加算一時差異が見込まれるかがポイントになります。
しかし実務的には、将来加算一時差異の金額が将来減算一時差異の金額を下回るケースの方が多いため、繰延税金資産の回収可能性を判断する場合には、(1)の将来の収益力に基づく課税所得によって判断していくことになります。

将来の収益力(=税金を減額させるだけの十分な課税所得)が見込まれるのかについては、”将来の見積り”となることから繰延税金資産の回収可能性は会計の中でも難しい論点となっているのです。

将来の収益力について、判断するための一定の指標がなければ、会社ごとに好き勝手な計画を作成し、繰延税金資産を計上することとなってしまうため、将来の収益力を判断するための一定の指標が基準には設けられています。

この解説については次回の記事にてアップしますのでそちらも是非チェックしてみて下さい!

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は繰延税金資産の回収可能性とは? について解説しました。
今回の内容をまとめると以下の通りです。

・繰延税金資産とは税効果会計における「将来減算一時差異」について、将来の税額から減額される額(「将来減算一時差異」に税率を乗じた金額)を資産として計上したもの

・将来減算一時差異が解消する時にそもそも将来の課税所得がなければ、税金は減額されないことから、将来減算一時差異(将来の課税所得を減額させる効果を持つ)=繰延税金資産(将来の税金負担額を軽減させる)ではない

・繰延税金資産の回収可能性については、(1)収益力、(2)タックスプランニング、(3)将来加算一時差異に基づいて判断していく必要がある

次回の解説では、繰延税金資産のスケジューリング、会社分類判定(将来の収益力判断のための一定の指標)について解説していきます!
個別のご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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