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【わかりやすく】市場価格のない株式の減損処理について解説

会計

今回は、有価証券の評価のうち、市場価格のない株式の減損処理について、わかりやすく解説をしていきたいと思います。
市場価格のない株式の減損処理については、一部見積りが必要となる部分もあり、実務でも難しい論点となっていますので是非チェックしてみて下さい!

前回の記事についても是非チェックしてみて下さい!

市場価格のない株式とは

市場価格のない株式とは、非上場株式など、市場において取引されていない株式のことをいいます。

また、出資金など株式と同様に持分の請求権を生じさせるものは、同様の取扱いとなります。
これらを合わせて「市場価格のない株式等」といいます。

市場価格のない株式の評価

市場価格のない株式の評価は大きく分けて2パターンあります。
一つは期末時における「通常時の評価」と、もう一つは「実質価額が著しく低下した場合の評価」です。

・期末時における「通常の評価」について

市場価格のない株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とします。


・「実質価額が著しく低下した場合の評価」について

市場価格のない株式等については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません。

 

期末時における通常時の評価について取得原価を持ってB /Sに計上を行いますが、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額(減損処理)を行わなければなりません。

次のセクションで、実質価額とは?、相当の減額とは?について解説を行なっていきます!

市場価格のない株式の減損について

市場価格のない株式は、基本的には、取得原価を持ってB /Sに計上を行いますが、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、減損処理が必要となります。

市場価格のない株式等については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません。

次に減損処理が必要となる場合の用語の解説を行なっていきます。

財政状態とは・・・
財政状態とは、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した「1株当たりの純資産額」をいいます。
(なお、この際に基礎とする財務諸表は、決算日までに入手し得る直近のものを使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していればその事項も加味します)

財政状態の悪化とは・・・
財政状態の悪化とは、この「1株当たりの純資産額」が、当該株式を取得したときのそれと比較して相当程度下回っている場合をいいます。

実質価額とは・・・
通常は、この1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額が当該株式の実質価額となります。
一方で、会社の超過収益力や経営権等を反映して、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合もあります。

実質価額が著しく低下したとは・・・
少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合をいいます。ただし、市場価格のない株式等の実質価額について、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額をしないことも認められています。

上記の内容を要約すると

時価評価を反映させた1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額(実質価額)が取得価額(取得した時の株式価額)と比較して50%程度以上低下している場合には、実質価額によりB /S計上を行い、その差額(評価差額)について損失処理を行うこととなります。

一方で、会社の超過収益力や経営権等を反映して実質価額を評価する場合もあります。

ただし、上記の実質価額が、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額をしないことも認められています。
市場価格のない株式の回復可能性とは・・・について次のセクションで解説します!

市場価格のない株式の回復可能性について

市場価格のない株式について、実質価額が取得価額と比して50%以上低下した場合には、減損処理が必要となりますが、実質価額が回復可能性がある場合には、減損処理しないことも認められています。

では、実質価額について回復可能性がある場合とはどういったことを指すのかについて解説していきます。

回復可能性がある場合とは・・・?

市場価格のない株式であっても、子会社や関連会社等(特定のプロジェクトのために設立された会社を含む。)の株式については、実質価額が著しく低下したとしても、事業計画等を入手して回復可能性を判定できることもあるため、この場合には、減損処理をしないことも容認しています。

しかし、この事業計画等は実行可能で合理的なものでなければならず、回復可能性の判定は、特定のプロジェクトのために設立された会社で、当初の事業計画等において、開業当初の累積損失が5年を超えた期間経過後に解消されることが合理的に見込まれる場合を除き、おおむね5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として行うものとされています。

また、回復可能性は毎期見直すことが必要であり、その後の実績が事業計画等を下回った場合など、事業計画等に基づく業績回復が予定どおり進まないことが判明したときは、その期末において減損処理の要否を検討しなければなりません。

この場合注意して頂きたい点として、
当初の取得価額がおおむね5年以内に回復すると見込まれることを回復可能性と言っており、下落率50%以上でなくなったことではないので注意してください。

超過収益力を反映して取得した場合の減損について

市場価格のない株式について、取得時から会社の超過収益力や経営権等を反映して、財務諸表から得られる1株当たり純資産額に比べて相当高い価額で当該会社の株式を取得するケースがあります。

この場合の減損処理について解説していきます。

■ 取得時から会社の超過収益力や経営権等を反映して株式を取得した場合
金融商品会計に関するQ&A(会計制度委員会)Q33.

売買価額が、第三者による鑑定価額又は一般に認められた株価算定方式による評価額に基づいて、両者の合意の下に決定されたとしても、その後、超過収益力等が減少したために実質価額が大幅に低下することがあり得ます。

したがって、このような場合には、たとえ発行会社の財政状態の悪化がないとしても、将来の期間にわたってその状態が続くと予想され、超過収益力が見込めなくなった場合には、実質価額が取得原価の50%程度を下回っている限り、減損処理をしなければなりません

先のセクションで解説した実質価額は、会社の実際の純資産価額を基にしていますが、開業間もない会社や急成長している会社についてはその超過収益力や経営権等を実質価額に反映している場合があります。

このような場合には、この超過収益力や経営権等を反映させた実質価額が取得原価の50%程度を下回っている限り、減損処理を行う必要があります。

 

■ 発行会社の財政状態が悪化している会社の株式を第三者割当により引き受けた場合
金融商品会計に関するQ&A(会計制度委員会)

Q34:発行会社の財政状態が悪化している会社の株式を第三者割当により引き受けた場合、期末の評価はどのように行うのでしょうか。特に、会社が債務超過会社の場合には期末の評価額はゼロとなるのでしょうか。

A:
発行会社の財政状態が悪化している会社の株式を第三者割当増資により引き受ける場合、将来の業績回復を見込んだ実行可能な事業計画や経営方針等の存在が前提となります。それが合理的であると判断される限り、当該事業計画等に基づく一定期間、業績の動向を見守り、実績が事業計画等を大幅に下回らなければ、当該会社に対する投資は減損処理の対象とはなりません。なお、その合理性を判断するに当たっては、当該事業計画等の実行可能性、増資額の十分性、将来の業績回復との関連性などを勘案して総合的に検討する必要があります。

その後も、損益見込や資金収支計画等は毎期見直しを行い、当該計画等に基づく業績回復が予定どおり進まないことが判明した場合には、その期末において相当額を減損処理しなければなりません。したがって、債務超過会社が一定期間経過後なお経営改善等の効果が現れずに依然として債務超過が解消されない場合には、期末の評価額はゼロとなります。

なお、個別財務諸表において減損処理が行われた結果、連結財務諸表において、評価減後の子会社株式の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却残高(借方)との合計額を下回った場合には、当該下回った金額に相当するのれんの一時償却を行わなければならないこととされています。

解説:
債務超過会社(純資産額がマイナスの会社)の株式を取得した場合、取得後すぐに減損処理する必要があるのか、といった論点です。
回答にある通り、この場合、純資産価額をもとに取得原価が決定されたわけではなく、将来の事業計画等をもとに取得原価が決定されています。そのため、その取得原価のもととなった将来の事業計画等が、計画通りに進捗していれば、当該会社に対する投資は減損処理の対象とはならないということとなります。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は市場価格のない株式の評価について解説を行いました。
本日の内容をまとめると以下の通りです。

・市場価格のない株式とは、非上場株式など、市場において取引されていない株式のこと

・市場価格のない株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とするが、時価評価を反映させた1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額(実質価額)が取得価額(取得した時の株式価額)と比較して50%程度以上低下している場合には、実質価額によりB /S計上を行い、その差額(評価差額)について損失処理を行う

・子会社や関連会社等(特定のプロジェクトのために設立された会社を含む。)の株式については、実質価額が著しく低下したとしても、事業計画等を入手して回復可能性を判定できることもあるため、この場合には、減損処理をしないこともできる

・取得時から会社の超過収益力や経営権等を反映して株式を取得した場合、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合もある

・その超過収益力等が減少したために実質価額が大幅に低下した場合、たとえ発行会社の財政状態の悪化がないとしても、将来の期間にわたってその状態が続くと予想され、超過収益力が見込めなくなった場合には、実質価額が取得原価の50%程度を下回っている限り、減損処理を行う

市場価格のない株式の評価は、取得時の価額をどのように設定したかで減損処理の方法が変わってきます。そのため評価を行う株式の取得価額がどのように設定されているか確認することがポイントとなります。

個別のご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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