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【わかりやすく】組織再編会計について②〜共同支配企業の形成の会計処理【解説】

M&A

皆さん、こんにちは
今回は、組織再編会計の「共同支配企業の形成」の会計処理について解説を行なっていきます!
あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、意外と実務で該当するケースも多く見かけますのでので会計処理について把握したいという方は是非チェックしてみてください。

前回の記事についてはこちら

共同支配企業の形成とは

・共同支配企業の形成とは

「共同支配企業の形成」とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、当該共同支配企業を形成する企業結合をいう

共同支配企業は、一般的には「合弁会社」とも呼ばれています。共同新設分割による新会社の設立、同一事業を専業とする子会社同士の合弁など様々な形式がとられます。

共同支配企業の形成の判定基準

ある企業結合を共同支配企業の形成と判定するためには、共同支配投資企業となる企業が、複数の独立した企業から構成されていること(独立企業要件)及び共同支配となる契約等を締結していること(契約要件)に加え、対価要件とその他の支配要件を満たしていなければなりません。以下の4つの要件すべてを満たす必要があります。

要件内容
独立企業要件共同支配投資企業は、複数の独立した企業から構成されている
契約要件共同支配投資企業が共同支配となる契約等を締結している
対価要件企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式である
その他の支配要件その他の支配関係を示す一定の事実が存在しない

共同支配企業の形成の会計処理

共同支配企業の形成では、支配されている企業と支配している企業とで会計処理が必要となります。
先ほどの図でいう、X社が支配されている企業(共同支配企業)でA社、B社が支配している企業(共同支配投資企業)となります。
まずは、支配されている企業(共同支配企業)の会計処理からみていきましょう。

■ 共同支配企業の会計処理

共同支配投資企業から
移転された資産及び負債
移転前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上
増加資本適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本として処理

次に支配している企業(共同支配投資企業)の会計処理をみていきましょう。
支配している企業は、個別処理(個別財務諸表上の処理)と連結上の処理(連結財務諸表上の処理)を行います。

■ 共同支配投資企業の会計処理

① 個別財務諸表上の会計処理

吸収合併存続会社(結合企業)の株主子会社株式の適正な帳簿価額を共同支配企業株式に振替処理する
吸収合併消滅会社(被結合企業)の株主引き換えられた子会社株式(被結号企業の株式)の適正な帳簿価額に基づいて共同支配企業株式(結合後企業の株式)の取得原価を算定する

② 連結財務諸表上の会計処理
共同支配企業に対する投資について持分法を適用します。
新たに共同支配する事業に係る「のれん」の計上と従来単独で支配していた事業に係る「持分変動差額」の認識を行います。

のれん
=共同支配企業に対して投資したとみなされる額 ー 対応する新たに共同支配する事業の企業結合直前の資本

持分変動差額
=共同支配投資企業の事業が移転されたとみなされる額 ー 移転した事業に係る共同支配投資企業の持分の減少額

共同支配企業の形成 設例による解説

なかなか言葉だけで理解するのも難しいため、設例で解説を行なっていきます。
途中で迷子になってしまわないように、今どこの会社の会計処理なのか(支配している会社なのか、支配されている会社なのか)、個別財務諸表の処理なのか連結財務諸表の処理なのか、を再確認するようしてみてください。

[設例] 共同支配企業の形成-子会社同士の合併の会計処理

⑴ 前提条件

A社の100%子会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は450(株主資本400、評価・換算差額等50)、諸資産の時価は500、企業の時価は600)を吸収合併消滅会社とし、B社の100%子会社Y社(株式数200株、諸資産の適正な帳簿価額は200(株主資本180、評価・換算差額等20)、諸資産の時価は300、企業の時価は400)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、X社の株主はY社の株式300株を受け取る。この際、A社とB社はY社を共同支配する契約を締結し、当該吸収合併は共同支配企業の形成と判定されたものとする。

この結果、合併後のY社(株式数500株)に対する持分比率は、A社が60%(300株)、B社が40%(200株)となった。

なお、A社の子会社X社とB社の子会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

X 社個別貸借対照表
諸資産 450 /
資本金 300
利益剰余金 100
その他有価証券評価差額金 50
合計 450
Y 社個別貸借対照表
諸資産 200  /
資本金 150
利益剰余金 30
その他有価証券評価差額金 20
合計 200

また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は300、B社の保有するY社の株式の適正な帳簿価額は150であった。

■ Y社(共同支配企業)の会計処理(個別財務諸表)
移転前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上する

(借方)(貸方)
諸資産  450払込資本  400
その他有価証券評価差額金50

■ A社、B社(共同支配投資企業)の会計処理

・A社(個別財務諸表)
移転した子会社株式Xの適正な帳簿価額300に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する

(借方)(貸方)
共同支配企業株式  300子会社株式  300

・B社(個別財務諸表)
子会社株式の適正な帳簿価額を共同支配企業株式に振替処理する

(借方)(貸方)
共同支配企業株式  150子会社株式  150

・A社(連結財務諸表)
共同支配企業に対する投資について持分法を適用する

「のれん」の計上 60 (①ー②)

① 共同支配企業に対して投資したとみなされる額:240
(Y社企業時価400×持分比率の増加60%)

② 対応する新たに共同支配する事業の企業結合直前の資本 180
(Y社諸資産の時価300×持分比率の増加60%)

「持分変動差額」の認識 80 (①ー②)

①共同支配投資企業の事業が移転されたとみなされる額:240
(X社企業時価600×持分比率の減少40%)

②移転した事業に係る共同支配投資企業の持分の減少額:160
(X社株主資本400×持分比率の減少40%)

(借方)(貸方)
共同支配企業株式  80持分変動差額  80

・B社(連結財務諸表)
共同支配企業に対する投資について持分法を適用する

「のれん」の計上 40 (①ー②)

① 共同支配企業に対して投資したとみなされる額:240
(X社企業時価600×持分比率の増加40%)

② 対応する新たに共同支配する事業の企業結合直前の資本 200
(X社諸資産の時価500×持分比率の増加40%)

「のれん」の計上 40 (①ー②)

① 共同支配企業に対して投資したとみなされる額:240
(X社企業時価600×持分比率の増加40%)

② 対応する新たに共同支配する事業の企業結合直前の資本 200
(X社諸資産の時価500×持分比率の増加40%)

「持分変動差額」の認識 132 (①ー②)

①共同支配投資企業の事業が移転されたとみなされる額:240
(Y社企業時価400×持分比率の減少60%)

②移転した事業に係る共同支配投資企業の持分の減少額:108
(Y社株主資本180×持分比率の減少60%)

(借方)(貸方)
共同支配企業株式 132持分変動差額 132

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は共同支配企業の形成について解説しました。共同支配企業の形成は、どちらの企業も支配を行なっていないという点がポイントとなります。そのため連結処理ではなく、どちらの企業も持分法処理を行うこととなります。今回の内容をまとめると以下の通りです。

・共同支配企業の形成とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、当該共同支配企業を形成する企業結合のこと

・共同支配企業と判定するための4要件がある(独立企業要件、契約要件、対価要件、その他の支配要件)

・個別財務諸表上の処理としては、損益は生じない(適正な帳簿価額にて処理)

・連結財務諸表上の処理は、持分法を適用する

・共同支配企業の形成は、どの企業も支配していない点がポイント(そのため持分法処理となる)

次の記事では、「共通支配下の取引」についての会計処理の解説を行なっていこうと思います。

個別のご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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