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【わかりやすく】組織再編会計について③〜共通支配下等の取引の会計処理【解説】

M&A

皆さん、こんにちは
今回は、組織再編会計の「共通支配下の取引等」の会計処理について解説を行なっていきます!
あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、意外と実務で該当するケースも多く見かけますのでので会計処理について把握したいという方は是非チェックしてみてください。

前回の記事についてはこちら

共通支配下の取引等とは

・「共通支配下の取引等」とは
「共通支配下の取引」及び「非支配株主との取引」を合わせて「共通支配下の取引等」といいます。

・「共有支配下の取引」とは

「共通支配下の取引」とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいう。

・「非支配株主との取引」とは

「非支配株主との取引」とは、企業集団を構成する子会社の株主と、当該子会社を支配している親会社との間の取引である。

「共通支配下の取引」は、企業結合の前後で同一の株主により支配されているという点がポイントとなります。
例えば、親会社と子会社の合併や子会社同士の合併などが共通支配下の取引に含まれます。

共通支配下の取引等の会計処理

■ 共通支配下の取引の会計処理
共通支配下の取引は、親会社の立場からは「企業集団内部の取引」となるため、基本的に連結財務諸表には影響しないように会計処理を行います。

個別財務諸表上企業集団内を移転する資産及び負債
移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上

対価として交付された株式
移転された資産及び負債の適正な帳簿価額により計上
連結財務諸表上内部取引として計上
(基本的に連結財務諸表には影響しない)

■ 非支配株主との取引
非支配株主との取引は親会社の立場からは外部取引となるため、子会社株式の追加取得、一部売却に準じて処理します。

個別財務諸表上非支配株主から追加取得する子会社株式を時価により計上
連結財務諸表上子会社株式の取得原価と非支配株主持分との差額を資本剰余金として処理

共通支配下の取引等 設例による解説

共通支配下の取引と言われても、言葉だけで理解するのも難しいため、設例で解説を行なっていきます。

[設例] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理-買収により取得した子会社を合併した場合

⑴ 前提条件
① P社(公開企業)はX1年3月31日にS社の株式の80%を1,700で取得し、子会社とした。株式取得時のS社の資産は、諸資産500と土地(再評価額1,000、土地再評価差額金500)であり、取得時のS 社の個別貸借対照表は次のとおりである。

S 社個別貸借対照表
諸資産 500
土 地 1,000 /
資本金 1,000
土地再評価差額金 500
合 計 1,500

② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
③ P社はS社をX2年4月1日に合併した(吸収合併存続会社はP社とする)。
④ S社の発行済株式数は100株であり、合併比率は1:1である。
⑤ P社は新株をS社の非支配株主に20株(合併期日の時価600(1株当たり30))発行した。また、P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
⑥ P社は連結財務諸表作成にあたり、S社株式取得時に発生したのれんの償却期間は5年としている。
⑦ 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

P 社個別貸借対照表  
諸資産 300
S 社株式 1,700 /
資本金 1,000
利益剰余金 1,000
合 計 2,000
S 社個別貸借対照表  
諸資産 1,500
土 地 1,000  /
資本金 1,000
利益剰余金 1,000
土地再評価差額金 500
合 計 2,500
P 社連結貸借対照表
諸資産 1,800
土 地 1,000
のれん(*1) 400 /
資本金 1,000
利益剰余金(*3) 1,700
非支配株主持分(*2) 500
合 計 3,200

(*1) 取得時ののれん500(S社株式の取得原価1,700-S社の取得時の純資産の時価1,500の80%)から、X2年3月期の償却額100を控除した金額となる。
(*2) 取得時の300(S社の取得時の純資産の時価1,500×20%)、取得後剰余金200(1,000×20%)の合計額となる。
(*3) P社の利益剰余金1,000とS社の取得後剰余金800(1,000×80%)の合計から、のれんのX2年3月期の償却額100を控除した金額となる。
(*4) S社のその他有価証券評価差額金の支配獲得時からの増加額のうち親会社株主持分について計上される。

■ P社(親会社)の個別財務諸表上の会計処理
上記の設例では、合併前より80%部分はS社を取得しているため、当初より取得していた80%部分と残り20%部分の非支配株主との取引を分けて考えます。

・共通支配下の取引(80%部分は当初より企業集団内)
S社のうち80%部分は合併前より取得していたため、80%部分については共通支配下の取引に該当します。
そのため、企業集団内を移転する資産及び負債については、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上します(のれん含む)。また、親会社が合併直前に保有していた子会社株式の適正な帳簿価額との差額を「抱合せ株式消滅差益」として特別損益に計上します。

① S社の資産、負債について合併直前の適正な帳簿価額を計上(80%分)
② P社が合併直前に保有していた子会社株式を消滅させる
③ ①と②の差額を抱合せ株式消滅損益として計上する(赤字部分
なお、のれんについてはP社に帰属する部分のみしか計上されていないため80%に按分する必要なく、全額計上される。

(借方)(貸方)
諸資産  1,200S社株式  1,700
土地800抱合せ株式消滅差益700
のれん400

・非支配株主との取引(20%部分取得に該当)
S社のうち20%部分は合併前より取得していない部分のため、20%部分については非支配株主との取引に該当します。
企業集団内を移転する資産及び負債については、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上しますが、親会社が合併に当たって交付した株式による払込金は時価により算定し、合併直前に保有していた子会社株式の適正な帳簿価額との差額を「その他資本剰余金」として計上します。

① S社の資産、負債について合併直前の適正な帳簿価額を計上(20%分)
② P社が合併にあたって交付した株式の払込額を時価により計上する
③ ①と②の差額を抱合せその他資本剰余金として計上する(赤字部分

(借方)(貸方)
諸資産  300その他資本剰余金  600
土地200
その他
資本剰余金
100

では、次に子会社同士の合併の設例を見ていきましょう。

[設例] 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理
(合併の対価が現金等の財産のみである場合)

⑴ 前提条件
P社は期首に、80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする合併をさせる。
この結果、S1社の株主は現金200を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%のままである。)。
なお、P社の子会社S1社と子会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

S1社個別貸借対照表  
諸資産 100 /
資本金 80
利益剰余金 20
合 計 100
S2社個別貸借対照表  
現 金 200
諸資産 400 /
資本金 400
利益剰余金 200
合 計 600

また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240とする。

■ P社(親会社)の個別財務諸表上の会計処理
① S2社が支払った現金200のうちP社に帰属する部分を計上
② P社保有のS1社株式を消滅させる
③ ①と②の差額を「交換損益」として認識する(赤字部分

(借方)(貸方)
現金  160子会社株式  64
交換損益  96

■ S2社の個別財務諸表上の会計処理

① S1社から受け入れる資産、負債を適正な帳簿価額により計上する
② 対価として支払った現金200を消滅させる
③ ①と②の差額を「のれん」として認識する(赤字部分

(借方)(貸方)
諸資産  100現金  200
のれん100

■ S1社の個別財務諸表上の会計処理
S1社は、合併により消滅するため、計上されている資産、負債、純資産を消滅させる

(借方)(貸方)
資本金  80諸資産  100
利益剰余金20

■ P社(親会社)の連結財務諸表上の会計処理

・S2社に関する仕訳

(借方)(貸方)
資本金  400子会社株式  240
利益剰余金80非支配株主持分240

・S1社株式の交換損益の修正及び親会社の持分変動
(連結修正仕訳)

(借方)(貸方)
交換損益  96利益剰余金  16
資本剰余金
(利益剰余金)
  20のれん 100

共通支配下の取引は親会社の立場からは、企業集団内部の取引にあたるため、連結財務諸表に影響を与えないようにしなければなりません。一方で、非支配株主との取引は、親会社の立場からは外部取引にあたるため、非支配株主との取引のみが連結財務諸表に影響を与えることとなります。

そのため、連結上以下の影響が出るように、連結修正仕訳をきることとなるのです。

(借方)(貸方)
非支配株主持分  20現金  40
資本剰余金
(利益剰余金)
20

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は「共通支配下の取引等」について解説しました。「共通支配下の取引等」は、企業集団内部の取引なのか、非支配株主との外部の取引なのかという点がポイントとなります。

・共通支配下の取引とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいう

・「非支配株主との取引」とは、企業集団を構成する子会社の株主と、当該子会社を支配している親会社との間の取引である

・共通支配下の取引は、親会社の立場からは「企業集団内部の取引」となるため、基本的に連結財務諸表には影響しないように会計処理を行う

・非支配株主との取引は親会社の立場からは外部取引となるため、子会社株式の追加取得、一部売却に準じて処理する

次の記事から、「取得」についての会計処理の解説を行なっていこうと思います。

個別のご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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