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【わかりやすい】新収益認識基準のポイントを解説④〜開示の留意点(科目名はどう変わる?)〜

会計

今回は新収益認識基準における開示(表示・注記)において気をつけるべきことを解説していきます。過去の記事では新収益認識基準の全体像から売上の計上タイミングについても解説していますので気になる方は確認してください。

解説する基準

・収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)
・収益認識に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第30号)

損益計算書(P /L)における表示について

まずは損益計算書における表示についての基準を確認していきましょう。

・収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)
78−2.顧客との契約から生じる収益を、適切な科目をもって損益計算書に表示する。なお、顧客との契約から生じる収益については、それ以外の収益と区分して損益計算書に表示するか、又は両者を区分して損益計算書に表示しない場合には、顧客との契約から生じる収益の額を注記する。

ここで記載されているポイントとしては次の2点です。

・損益計算書に適切な科目(「売上高」、「売上収益」、「営業収益」等)をもって表示
・顧客との契約から生じる収益、顧客との契約以外から生じる収益に分けて損益計算書に表示(又は注記)

貸借対照表(B /S)における表示について

次に、貸借対照表における表示についての基準を確認していきましょう。

79.企業が履行している場合や企業が履行する前に顧客から対価を受け取る場合等、契約のいずれかの当事者が履行している場合等には、企業は、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権を計上する。また、契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示する(適用指針[設例27])。
 なお、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて、貸借対照表に他の資産と区分して表示しない場合には、それぞれの残高を注記する。また、契約負債を貸借対照表において他の負債と区分して表示しない場合には、契約負債の残高を注記する(第80-20項⑴参照)。

ここもポイントとしては次の2点です。

・貸借対照表に適切な科目(「契約資産」、「契約負債」等)をもって表示
・顧客との契約から生じた債権、負債について他の資産と表示する(又は注記)

契約資産は・・・「契約資産」、「工事未収入金」等
契約負債は・・・「契約負債」、「前受金」等
顧客との契約から生じた債権は・・・「売掛金」、「営業債権」等の科目を持って表示します。

新収益認識基準における注記事項

注記については、以下の注記が必要となります。

・重要な会計方針の注記

・収益認識に関する注記
 (収益の分解情報)
 (収益を理解するための基礎となる情報)
 (当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報)

【重要な会計方針の注記】

顧客との契約から生じる収益に関する会計方針として、次の項目を注記することになります。

① 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
② 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)

上記の項目以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記することになります。

履行義務とは簡単にいうと、顧客との契約における「自社の商品やサービスを提供する約束」のことです。
履行義務の充足とは、この約束を果たすことを言います。

そのため重要な会計方針の注記では、収益を認識する基準となる顧客との約束の内容(上記①)、この約束を果たした時点(上記②)を記載することとなります。約束を果たした時点とは、自分が商品を渡した時点なのか、相手が受け取った時点なのかなど「いつ」という観点で記載する必要があります。

【収益認識に関する注記】
(収益の分解情報)

当期に認識した顧客との契約から生じる収益について、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報を注記します。

収益を分解するための区分の例としては下記のようなものが挙げられます。

財又はサービスの種類(例:主要な製品ごと)、地理的区分(例:国又は地域など)、市場又は顧客の種類(例:政府と政府以外の顧客)、契約の種類(例:固定価格と実費精算契約)、契約期間(例:短期契約と長期契約)、財又はサービスの移転の時期(例:一時点と一定の期間)、販売経路(例:消費者への直接販売と仲介業者を通す販売)

また収益を分解する程度については、基準に「企業の実態に即した事実及び状況に応じて決定する」、「複数の区分に分解する必要がある企業もあれば、単一の区分のみで足りる企業もある」と記載されており、企業に画一的な記載を求めているものではなく、会社の実態に合わせた、その企業の収益構造に合わせた開示が求められております。

またセグメント情報等会計基準を適用している場合、収益の分解情報とセグメント情報等会計基準に従って各報告セグメントについて開示する売上高との間の関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を注記することとなっています。

(収益を理解するための基礎となる情報)
顧客との契約が、財務諸表に表示している項目又は収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報として、次の事項を注記します。

① 契約及び履行義務に関する情報
② 取引価格の算定に関する情報
③ 履行義務への配分額の算定に関する情報
④ 履行義務の充足時点に関する情報
⑤ 本会計基準の適用における重要な判断

(当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報)
当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報として、「契約資産及び契約負債の残高等」及び「残存履行義務に配分した取引価格」を注記することになります。

(収益を理解するための基礎となる情報)、(当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報)についての解説はとても長くなってしまうためまた別の記事にてアップ予定です。

四半期財務諸表における取り扱い

今まで記載してきた表示、注記事項は年度末における財務諸表で必要となります。四半期財務諸表では取り扱いが異なるため、四半期財務諸表において取り扱いを記載していきます。

四半期における財務諸表では、「収益の分解情報」の注記のみが求められております。収益の分解情報について、年度の期首から四半期会計期間の末日までの期間が開示の対象期間となっています。

ただし、重要性に乏しいと認められるものについては、記載しないことができます(重要性の判断については、定量的な要因と定性的な要因の両方を考慮する必要がありますが、定量的な要因のみによる判断において重要性がないといえない場合であっても、開示目的に照らして重要性に乏しいと判断されることもあると考えられるとされています)。

また、報告セグメントの売上高に関する情報が、収益の会計処理の定めに基づいており、かつ、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報として十分であると判断される場合には、収益の分解情報は、報告セグメントの売上高に関する情報に追加して注記する必要はないものとされています。収益の分解情報に関する事項を、セグメント情報等に関する事項に含めて記載している場合には、収益の分解情報に関する事項を記載するにあたり、当該注記事項を参照することができます。

新収益認識基準の開示・表示・注記に関するご質問についてはコメント欄、質問(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします! ではでは!


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