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【わかりやすく!】IFRSによる固定資産の会計処理を解説②〜固定資産減損について

会計

みなさん、こんにちは。今回はIFRSによる固定資産の減損処理についてわかりやすく解説をしていこうと思います。

固定資産の減損処理についても日本基準とIFRSではいくつかの基準差があります。

採用する基準によっては減損の要否も異なってきますので、IFRSではどのような場合に減損が必要になるのか、減損処理の要件をしっかりと確認していきましょう。

IFRSによる固定資産の会計処理の基本についてはこちらの記事でも解説していますので、よろしければチェックしてみて下さい!

また、日本基準における固定資産減損処理についてはこちらの記事にて確認できます。

IFRSにおける減損の判断基準

IFRSではIAS第36号「資産の減損」にて固定資産減損に関する会計処理が規定されています。

IAS第36号第8項では、資産の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合に減損しているとされています。

IAS第36号においては、減損損失の計上のため、以下の3つの規準を検討しています。

減損しているかどうか概要
永久的規準回収可能価額の一時的な低下の認識を回避し、資産の帳簿価額が完全に回収できなくなる場合に認識するものである。
蓋然性規準資産の帳簿価額を回収できない可能性が高い場合に認識するものである。
経済的規準回収可能価額が帳簿価額を下回る場合に、すぐ認識するものである。

IFRSでは上記のうち、経済的規準が採用されています。

一方、日本基準では割引前将来キャッシュフロー総額が帳簿価額を下回る場合に減損損失認識することとしており、蓋然性規準を採用されていると言えます。

IFRSによる減損の認識及び測定

IAS36号では、まず、減損処理の必要のある資産を識別するため、減損の兆候有無を把握することを求めています。

減損の兆候があれば、減損の損失を計上する1段階方式となっており、兆候の把握以降は以下の手順で減損損失の計上が行われます。

1段階処理における手順(IFRS)

①回収可能価額を見積り、帳簿価額との比較による減損テストを行う

②帳簿価額が回収可能価額を上回る場合にその差額を減損損失に計上する

③一定の場合には、減損損失の戻入れを行う

減損損失の戻入れを行う点は、日本基準とは異なる処理ですね。

日本基準では減損の兆候が把握されたとしても、割引前将来キャッシュ・フローを用いた認識の検討を行う2段階処理が採用されています。

2段階処理における手順(日本基準)

①減損の兆候がある場合に、割引前将来キャッシュ・フロー総額を見積り、帳簿価額との比較による減損テストを行う

②帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フロー総額を上回る場合に、帳簿価額と回収可能価額との差額を減損損失に計上する

IFRSと日本基準における減損損失の認識と測定の相違をまとめると下表となります。

日本基準IFRS
①減損の兆候兆候判定にあたり検討すべき事象を例示
・営業利益の2期連続赤字
・営業キャッシュフローの2期連続マイナス
・市場価額の著しい下落
・経営環境の著しい悪化 など
兆候判定にあたり検討すべき事象を例示
・市場価額の著しい下落
・経営環境の著しい悪化
・市場金利の上昇
・PBR1倍割れ
・資産の陳腐化、遊休化
・事業の廃止計画 など
②減損損失の認識の判定帳簿価額>割引前将来CF総額帳簿価額>回収可能価額
③減損損失の測定帳簿価額ー回収可能価額(戻入はしない)帳簿価額ー回収可能価額(戻入をする)
 

IFRSでは市場金利の上昇やPBR(株価純資産倍率)1倍割れについても減損の兆候判定にあたって検討すべき事象として挙げられています。

市場金利の上昇については、回収可能価額の算定に使用する割引率と大きな関連があるため、減損の兆候とされているようです。

また、市場の評価と資産の帳簿価額との関係性の観点からも減損の兆候を識別すべきとの考え方から、PBR1倍割れが減損の兆候とされています。

上記は日本基準では減損の兆候とはされていないため、特に留意が必要と言えます。

IFRSによる使用価値の算定方法

減損の計上に用いられる回収可能価額を算定する際に用いられる使用価値は、①将来キャッシュ・フローと②割引率をそれぞれ算定する必要があります。

この点については日本基準の考え方と大きな相違はありません。

①将来キャッシュ・フローと②割引率の見積りにあたり、IFRSでは以下の点に留意する必要があります。

①将来キャッシュ・フロー

IAS第36号では将来キャッシュ・フローの算定にあたり以下を考慮することを求めています。

・当該資産の残存耐用年数にわたり存在するであろう一連の経済的状況に関する経営者の最善の見積りを反映した合理的かつ支持し得る前提を基礎にする

・経営者によってい承認された直近の予算(最長でも5年)を基礎にし、将来のリストラクチャリング等による見積りは除外する

・直近の予算期間を超えた将来キャッシュ・フローは、逓増率が正当化できる場合を除き、一定のまたは逓減する成長率を使用した予算に基づく将来キャッシュ・フローを延長することにより見積もる。

②割引率

IAS第36号では割引率の算定にあたり以下を考慮することを求めています。

・割引率が一般的なインフレーションによる価格の影響を含む場合には、将来キャッシュ・フローは名目的な条件で見積もる

・割引率が一般的なインフレーションによる価格の影響を含まない場合には、将来キャッシュ・フローは実質的な条件で見積もる

IFRSによるのれんの減損

前回記事でも解説したとおり、IFRSにおいてはのれんの償却は行われず、減損処理のみが行われることとなります。

のれんの減損テストは毎年1回、さらに減損の兆候が識別された場合にはいつもでも行うことが必要となります。

のれんの減損テストは、資金生成単位または資金生成単位グループごとに行うことになりますが、この資金生成単位グループはIFRS8号「事業セグメント」に従って決定された事業セグメントよりも大きいものであってはならないとされています。

のれんが配分された資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回る場合に減損を認識し、まずはのれんに減損損失を配分していくこととなります。

その後、のれん以外のその他の資産に対して帳簿価額に基づいた比例按分により減損損失を配分します。

のれんを含む資金生成単位グループへの減損損失の配分イメージは以下となります。

減損損失の戻入れ

IFRSでは減損損失の戻入れが認められています。

のれん以外の減損損失の戻入れについては、兆候の把握を行った上で、戻入れの認識を行います。

減損の回復の兆候の例としては、以下のような場合が挙げられます。

・資産の市場価額が著しく増加している場合

・技術、市場、経済または法的環境において、企業にとって好影響のある著しい変化が発生または近い将来発生すると見込まれる場合

・市場利率または市場の投資利益率の下落により、割引率に影響を与えた結果、資産の回収可能価額が著しく増加することが見込まれる場合

上記の兆候が見られた場合には回収可能価額を見積り、回収可能価額まで減損損失の戻入れを行うことが出来ます。

なお、のれんの減損損失を認識した期以降の期間におけるのれんの回収可能価額の増加は、自己創設のれんの増加であることが多いと考えられるため、のれんの減損損失の戻入れは認められない点に留意が必要です。

まとめ

如何でしたでしょうか。

IFRSにおける減損損失の処理については日本基準と異なる点も多いため、規定をよく確認しておくことが重要です。

減損損失の戻し入れが出来るのもIFRS特有の処理となりますので、この点もきちんと覚えておきましょう。

それでは、本日のポイントまとめです。

・IFRSでは減損の兆候がある場合、即座に回収可能価額と帳簿価額との比較を行う

(割引前将来CFを用いた認識の判定は行われない)

・IFRSでは金利の上昇やPBR1倍割れも減損の兆候となる

・IFRSでは減損損失の戻入れを行うことができる

・ただし、のれんの減損損失は戻入れができない

解説した内容に不明点があればいつでもお問い合わせください。

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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