G-X0MQHQND78

【わかりやすく!】外貨建取引の会計基準を解説②〜為替予約の独立処理と振当処理は何が違う?

会計

今回は前回解説した外貨建取引の会計基準に関して、為替予約の会計処理を取り扱います。

輸出入取引を行う際に為替予約をとる場合があるかと思いますが、会計処理方法が複数あったりとかなり複雑です。特に、例外的な処理として位置付けられている「振当処理」は、簿記を勉強していくなかでもつまづきやすい論点ですので(私も非常に苦手な箇所でした)、わかりやすく解説していきますね。

日常的に外貨建て取引の仕訳に触れている方や簿記の試験を控えている方はぜひチェックして下さい!

なお、外貨建取引の基本的な会計処理方法については前回記事で確認できますのでこちらもどうぞ!

為替予約の会計処理の概要

為替予約の会計処理には、独立処理と振当処理の2種類があります。独立処理が原則的な方法であるのに対して、振当処理は特例的に認められた方法となっており、為替予約の処理方法として独立処理を採用した後で、振当処理へ変更することは認められておりません。

会計の考え方には「継続性の原則」がありますので、一度決定した会計方針を継続して採用する必要があります。

◆独立処理

独立処理とは為替予約について原則として期末に時価評価を行って、評価差額を損益として処理する方法です。為替予約を付した結果、期末時のレート変動により得をした場合には評価益を計上し、損をしてしまった場合には評価損を計上していきます。

◆振当処理

振当処理とは、取引で発生した外貨建の金銭債権債務を為替予約のレートで換算し、直物為替相場による換算額との差額を、為替予約の契約締結日から外貨建金銭債権債務の決済日までの期間にわたって配分していく方法です。

取引時点のレートと為替予約レートの差額で為替差損益を算定して、決済日までに按分していくので、独立処理のような期末日時点での評価損益の算定は不要となります。

なお、振当処理は①営業取引の発生時に為替予約を付した場合と②営業取引の発生後に為替予約を付した場合で仕訳が異なってきます。

独立処理の具体例

それでは独立処理の具体的な仕訳を設例を用いて確認していきましょう。

3月決算の会社を想定し、設例の前提は以下とします。

●2021年12月1日に商品100ドルを掛取引で売上。

●売掛金の決済日は2022年4月30日とする。

●2022年1月1日に売掛金100ドルに対して為替予約を行った。

●2022年4月30日に売掛金と為替予約の決済を実施した。

直物為替レートと先物為替レートは以下とします。

直物為替レート先物為替レート
2021年12月1日115円/ドル118円/ドル
2022年1月1日110円/ドル115円/ドル
2022年3月31日105円/ドル108円/ドル
2022年4月30日100円/ドル100円/ドル
 

独立処理の場合には、取引により発生した金銭債権(ヘッジ対象)と為替予約(ヘッジ手段)をそれぞれ独立して考えて仕訳を起票します。

①売掛金の仕訳

処理日 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
取引日     2021年12月1日 売掛金 11,500 売上高 11,500
為替予約日 2022年1月1日 為替予約日は仕訳なし
決算日   2022年3月31日 為替差損益 1,000 売掛金 1,000
決済日     2022年4月30日 現金預金 10,000 売掛金 10,500
為替差損益 500    

外貨建て金銭債権を決算日にて決算日レートに評価替え、決済時に決済時レートとの差額を為替差損益として処理しています。

前回の記事で解説した外貨建て金銭債権債務の原則的な仕訳を行っているだけですので、ここは難しくないかと思います。

②為替予約の仕訳

処理日 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
取引日     2021年12月1日 取引日は仕訳なし
為替予約日 2022年1月1日 為替予約日は仕訳なし
決算日   2022年3月31日 為替予約 700 為替差損益 700
決済日     2022年4月30日 現金預金 1,500 為替予約 700
    為替差損益 800

為替予約の仕訳は、まず決算日時点で評価損益の計上を行います。115円/ドルで為替予約を行っていたのに対し、決算日での先物為替レートは108円/ドルとなっているので7円/ドル×100ドル=700円得したことになります。

また、決済日においては直物為替レートは100円/ドルにまで下がっているので、115円/ドルで為替予約を行っていたことにより、15円/ドル×100ドル=1,500円の現預金を入手することが出来ます。この1,500円が為替予約を付していたことで得られる評価益となりますが、決算日にすでに計上していた為替差損益700円がありますので、決済日に損益計算書に計上できる為替差損益は1,500円−700円=800円となるわけです。

振当処理の具体例(営業取引の発生時に為替予約を付す場合)

続いて振当処理(営業取引の発生時に為替予約を付す場合)の仕訳を確認していきましょう。

外貨建てで売上や仕入れを行ったのと同時に為替予約を付した場合には、取引により発生した債権債務を為替予約の予約レートにより換算することが出来ます。

決済時に受領(もしくは支払い)するレートで債権債務を計上するため、決済にあたって為替差損益は発生しませんし、決算日時点での為替差損益の計上も不要となるため、非常に簡便的な方法となります。

ここでも3月決算の会社を想定し、設例の前提は以下とします。

●2021年12月1日に商品100ドルを掛取引で売上し、同時に為替予約を行った。

●売掛金の決済日は2022年4月30日とする。

●2022年4月30日に売掛金と為替予約の決済を実施した。

直物為替レートと先物為替レートは以下とします。

直物為替レート先物為替レート
2021年12月1日115円/ドル118円/ドル
2022年3月31日105円/ドル108円/ドル
2022年4月30日100円/ドル100円/ドル
 
処理日 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
取引日     2021年12月1日 売掛金 11,800  売上高 11,800
決算日   2022年3月31日 決算日は仕訳なし
決済日     2022年4月30日 現金預金 11,800 売掛金 11,800

このように為替予約を付した取引日の先物為替レートで取引の計上・債権の決済をするのみの非常にシンプルな仕訳となります。為替差損益の計上も不要ですので簡単ですね。

振当処理の具体例(営業取引の発生後に為替予約を付す場合)

続いて営業取引の発生後に為替予約を付した場合の振当処理の仕訳です。この場合は上記と比べて複雑な処理となり、直々差額と直先差額という言葉が用いて説明を行いますので、事前に用語の解説を行います。

直々差額:取引発生時の直物レートと為替予約時の直物レートの差額
直先差額:為替予約時の直物レートと為替予約時の先物レートの差額

ここでも3月決算の会社を想定し、設例の前提は以下とします。

●2021年12月1日に商品100ドルを掛取引で売上。

●売掛金の決済日は2022年4月30日とする。

●2022年1月1日に売掛金100ドルに対して為替予約を行った。

●2022年4月30日に売掛金と為替予約の決済を実施した。

直物為替レートと先物為替レートは以下とします。

直物為替レート先物為替レート
2021年12月1日115円/ドル120円/ドル
2022年1月1日110円/ドル118円/ドル
2022年3月31日105円/ドル108円/ドル
2022年4月30日100円/ドル100円/ドル
 

振当処理の場合には、取引により発生した金銭債権(ヘッジ対象)と為替予約(ヘッジ手段)を一体ととして仕訳を起票します。

処理日 勘定科目 借方 勘定科目 貸方
取引日     2021年12月1日 売掛金 11,500 売上高 11,500
為替予約日 2022年1月1日 売掛金 300 前受収益 800
為替差損益 500    
決算日   2022年3月31日 前受収益 600 為替差損益 600
決済日     2022年4月30日 現金 11,800 売掛金 11,800
前受収益 200 為替差損益 200

為替予約日において直々差額を計上するとともに、予約レート(118円/ドル)で売掛金を確定させるため、売掛金を300円増やす処理を行います。

この時、直先差額の800円は決済日にわたって按分処理を行うために前受収益勘定で繰延べます。

1月1日から4月30日までの4ヶ月で直先差額の按分を行うため、1ヶ月あたりの為替差損益は800円/4ヶ月=200円となりますね。

決算日においては3月末までの3ヶ月分、すなわち600円を前受収益から為替差損益に振り替えます。

決済日に残りの前受収益200円を為替差損益に振り替えて、仕訳が完結します。

為替予約日で直々差額を計上、為替予約日から決済日までの期間で直先差額を按分して計上していくのがポイントです。

まとめ

如何でしたでしょうか。営業取引の発生後に為替予約を行なった場合の振当処理の仕訳は複雑ですので、直々差額と直先差額の意味をきちんと理解した上で処理方法を覚えることが重要です。

簿記の試験においては独立処理よりも振当処理の方が出題されやすいと思いますので、それぞれの方法を混同し内容にしっかりと区別しておきましょう!

最後に、今回の解説のポイントです。

・為替予約の処理方法には独立処理(原則)と振当処理(特例)の2種類がある

・独立処理では金銭債権債務と為替予約をそれぞれ独立して考えて仕訳を起票する

・振当処理では直々差額と直先差額の用語の意味を理解することが重要

・取引時に為替予約を付す場合の振当処理では簡便的な仕訳が可能(為替差損益が発生しない)

不明点があればいつでもお問い合わせください。個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました