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【わかりやすく!】外貨建取引の会計基準を解説①〜外貨建取引の基本的な処理

会計

皆さん、こんにちは。

本日のテーマは「外貨建取引」についてです。銀行の外貨預金を利用したり、海外との取引を外貨ベースで行うことも多くあると思いますが、そんな時に会計上はどの様な処理をすればいいのか、為替が変動した時に出てくる「為替差損益」ってなに?という疑問を解決できるようにわかりやすく解説していきますね。

外貨建て取引とは?

外貨建て取引の例としては外貨預金やドル建て保険等の外貨建て金融商品、外貨建ての商品売買取引(及び付随する外貨建ての債権債務)が挙げられますが、会計基準では以下のように定義されています。

(イ):取引価額が外国通貨で表示されている物品の売買又は役務の授受
(ロ):決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入又は貸付
(ハ):券面額が外国通貨で表示されている社債の発行
(ニ):外国通貨による前渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入
(ホ):決済金額が外国通貨で表示されているデリバティブ取引

なお、国内のメーカー等が商社を通じて輸出入を行い、商社で発生する為替差損益をメーカー等が負担する取引の場合には、メーカー・商社間で円貨で取引をしていても外貨建取引に該当するので注意が必要です。

取引発生時・決済時の処理

①取引発生時の処理

外貨建ての取引は、原則として取引発生時の為替レートによる円換算額を持って記録します。

例えば、100ドルの商品の仕入れを行なった際、仕入れ日のレートが1ドル110円であれば、11,000円で仕入れの記帳を行う、といったイメージです。

なお、前渡金または前受金が充当される部分については、前渡金または前受金の金銭授受時の為替レートで円換算し、残りの部分を取引発生時の為替レートで換算します。

100ドルの仕入れに50ドルの前渡金(前渡時のレートは100円/ドル)用いた場合、仕入れ日のレートが1ドル110円であれば、10,500円(50ドル×100円+50ドル×110円)で記帳する、ということですね。

②決済時の処理

外貨建ての金銭債権債務を決済する場合、取引発生時の為替レートと決済時の為替レートの差額は「為替差損益」として処理されます。

100ドルの売掛金を11,000円(110円/ドル)で記帳していた場合にレートが変動し、120円/ドルで決済されると1,000円の差額が生じますので、これを為替差損益として損益計算書に計上します。

この時の仕訳は以下となります。

勘定科目借方勘定科目貸方
現金・預金12,000売掛金11,000
為替差損益1,000

なお、「為替差損益」を損益計算書に表示する場合は、差損と差益を相殺した上で、「営業外損益」の区分に表示することとなります。

決算時の処理

続いて決算時の会計処理方法について、外貨建て取引の種類別に解説していきます。

外貨建て金銭債権債務(売掛金、買掛金、借入金など)

売掛金、買掛金、借入金などの外貨建ての金銭債権債務は決算時において、決算日レートへの評価替えを行います。取引発生時と決算日レートの差額を「為替差損益」で処理します。

例えば100ドルの売掛金を11,000円(110円/ドル)で記帳していた場合にレートが変動し、決算日に120円/ドルとなった場合、決算時の仕訳は以下となります。

決算日レートと取引時レートの差額を売掛金残高に乗じて為替差損益を算定します。

勘定科目借方勘定科目貸方
売掛金1,000為替差損益1,000
(決算日レート120−110)×100ドル=1,000
外貨建て売買目的有価証券

外貨建ての売買目的有価証券は、決算時における外貨の時価を決算日レートで換算します。

この時、決算時の時価を決算日レートで換算した結果と帳簿価額の差額は「有価証券運用損益」で計上します。「為替差損益」は使わないので注意しましょう。

例えば100ドル(帳簿価額は10,000円)で保有していた売買目的有価証券の時価が110ドル、決算日レートが120円/ドルとなった場合、決算時の仕訳は以下となります。

勘定科目借方勘定科目貸方
有価証券3,200(※)有価証券運用損益3,200
 ※(110ドル×120円=13,200円)-帳簿価額の10,000=3,200
外貨建て満期保有目的債券

外貨建満期保有目的債券に償却原価法を適用する場合、当期償却額に係る円換算額と換算差額の算定方法は以下となります。

①償却原価法の適用による当期償却額は、外貨建ての当期償却額を期中平均相場により円換算し、利息の調整項目として処理する。


②為替相場の変動に基づく当期の換算差額は、以下の手順で計算し、為替差損益として処理する。  ア.外貨建ての償却原価法に基づいて算定された価額(以下「償却原価」という。)を決算時の直物為替相場により円換算した額から取得時(当期取得の場合)の帳簿価額又は前期末の貸借対照表価額を控除する。

 イ.アから上記1で算定した額を控除する。

以下、例示として仕訳を記載しますのでご確認ください。

・満期保有目的債権の取得価額:80ドル×100円=8,000円

・償却原価法適用時の償却額:10ドル

・期中平均レート:110円/ドル

・決算日レート:120円/ドル

・満期保有目的債権の時価評価額:(取得価額80ドル+償却額10ドル)×決算日レート=10,800円

勘定科目借方勘定科目貸方
投資有価証券2,800(※1)有価証券利息1,100(※2)
為替差損益1,700
※1:満期保有目的債権の評価額10,800−取得価額8,000=2,800 ※2:償却額10ドル×期中平均レート110円=1,100
外貨建てその他有価証券

外貨建てその他有価証券の決算時の円貨額は、原則として外貨による時価を決算日レートにより換算して算定します。

この時、決算時の時価を決算日レートで換算した結果と帳簿価額の差額は原則として「その他有価証券評価差額金」で計上します。「為替差損益」は使わないので注意しましょう。

例えば100ドル(帳簿価額は10,000円)で保有していたその他有価証券の時価が110ドル、決算日レートが120円/ドルとなった場合、決算時の仕訳は以下となります。

勘定科目借方勘定科目貸方
投資有価証券3,200(※)その他有価証券評価差額金3,200
※(110ドル×120円=13,200円)-帳簿価額の10,000=3,200
外貨建て子会社株式及び関連会社株式

外貨建子会社株式及び関連会社株式の決算時の円貨額は、外貨による取得原価を取得時の為替レートにより換算して算定します。従って、上記のような決算日レートによる評価替えをすることは不要となり、評価替えのための特段の仕訳は行いません。

外国通貨による記録も可能

外貨建て取引が発生した場合には基本的には発生日のレートで換算を行なった上で記録を行いますが、以下の場合には外国通貨のまま(例えばドルベースで)記録することも認められています。

・本店の事業部、部門又は支店において外国通貨による取引が行われ、決済による外貨が円転されることなく、他の外貨建金銭債権債務の決済に恒常的に用いられている場合

・海外の支店において、上記と同様の状況にある場合

外国通過によって記録を行なった場合には、各月末等の一定時点での為替レートを基礎として計算された期中平均レートによって円貨に換算を行う必要があります。

まとめ

如何でしたでしょうか。

外貨建ての取引が発生した場合は、期末時点(もしくは四半期末時点)での評価替えが必要となりますので、忘れずに処理を行うことが重要となります。

今回の解説内容の詳細は「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」にて確認できますので、興味があれば覗いてみて下さい。

【参考】会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」

https://jicpa.or.jp/specialized_field/publication/files/2-11-4-2-20141120.pdf

本日のまとめは以下となります。

・取引発生時と決算日レート(決済時レート)の差額は「為替差損益」として営業外損益に計上

・有価証券の保有目的ごとに期末時の評価替えの処理方法が異なるので要注意

・外貨建ての子会社・関連会社株式は期末日レートへの評価替えは不要

・外国通貨のままで記録することも可能だが、各月末等に期中平均レートで円貨替えする

次回は為替予約の振当処理について解説する予定です。

不明点があればいつでもお問い合わせください。個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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