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【わかりやすく!】退職給付会計の概要を解説①〜退職給付会計とは・算定方法

会計

みなさん、こんにちは。
今回は、会計処理の中でも苦手な人も多い「退職給付会計」について解説していきたいと思います!
「退職給付会計」について基本的な処理からその背景まで解説していきますので、「退職給付会計」とは何ぞやという人から何となくは知ってるけどあまり理解できていないという人もチェックしてみてください!

退職給付会計とは

退職給付会計とは、その名前の通り、退職以後に支給される給付(退職給付)の会計処理のことで、退職する従業員のこれまでの労働提供の対価として支払われることから勤務をしている時から退職後、支払いを行うまでの期間にわたって計上が必要となる会計処理です。
退職給付は、従業員への将来の支払いであることから会社の負債(退職給付引当金)として貸借対照表へ計上されます。また、従業員が増加するごと、従業員の在籍期間が長くなればなるほどこの退職給付引当金は増加していき、この毎年の増加額を費用(退職給付費用)として損益計算書に計上していきます。

確定給付制度と確定拠出制度

退職給付制度は、その支給方法、積立方法によって「確定給付制度」と「確定拠出制度」に分けられます。

「確定拠出制度」は、企業の外部で掛金積立を行う制度で、毎年支払う掛金が確定している制度(当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を会社が負わない制度)です。毎年の積立掛金が確定していることから確定拠出制度といいます。(例:確定拠出年金制度、中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度など)

「確定給付制度」は、確定給付制度以外の退職給付制度のことで、従業員に将来支払う退職金額が事前に決まっている制度のことをいいます。(将来の)給付が確定していることから確定給付制度といいます。
(例:退職一時金制度、厚生年金基金制度、確定給付企業年金制度など)

制度内容
確定拠出制度企業の外部で掛金積立を行う制度で、毎年支払う掛金が確定している制度
(当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を会社が負わない制度)
確定給付制度確定給付制度以外の退職給付制度のことで、
従業員に将来支払う退職金額が事前に決まっている制度

この退職給付制度によって会計処理も異なります。
次のセクションで退職給付制度ごとの会計処理を見ていきましょう!

確定拠出制度における会計処理

確定拠出制度における会計処理(仕訳)

確定拠出制度については、とても単純です。当該制度に基づく要拠出額をもって費用処理を行います。また、当該制度に基づく要拠出額をもって費用処理するため、未拠出の額は未払金として計上します。

(借方)(貸方)
退職給付費用  XXX現金預金
(又は未払金) 
 XXX

確定給付制度における退職給付債務の算定(BS)

確定給付制度における会計処理

確定給付制度における会計処理は、次の流れで会計処理を行っていきます。

1.退職給付債務の算定
(1)退職により見込まれる退職給付の総額(以下、「退職給付見込額」)の見積り
(2)退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の計算
(3)退職給付債務の計算(退職給付の支払見込日までの期間を反映した割引率を用いて割り引く)

退職給付債務は、退職給付のうち、認識時点までに発生していると認められる部分を割り引いたもの。
退職給付債務は、予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち期末までに発生したと認められる額を、退職給付の支払見込日までの期間(以下、支払見込期間)を反映した割引率を用いて割り引き、当該割り引いた金額を合計して計算します。

図で表すと以下のようになります。

(1)退職により見込まれる退職給付の総額(以下、「退職給付見込額」)の見積り
退職給付見込額は、予想退職時期ごとに、従業員に支給されると見込まれる退職給付額に退職率及び死亡率を加味して見積ります(※)。退職給付見込額の計算において、退職事由(自己都合退職、会社都合退職等)や支給方法(一時金、年金)により給付率が異なる場合には、原則として、退職事由及び支給方法の発生確率を加味して計算し、合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮して見積らなければなりません。
退職給付見込額の見積りにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には予想される昇給等が含まれるものとされています。また、臨時に支給される退職給付等であってあらかじめ予測できないものは、退職給付見込額に含まれません。

(※)退職給付債務は、原則として個々の従業員ごとに計算します。ただし、勤続年数、残存勤務期間、退職給付見込額等について標準的な数値を用いて加重平均等により合理的な計算ができると認められる場合には、当該合理的な計算方法を用いることができます。この場合の「合理的な計算方法」には、従業員を年齢、勤務年数、残存勤務期間及び職系(人事コース)などによりグルーピングし、当該グループの標準的な数値を用いて計算する方法が該当します。個々の従業員ごとに計算した場合と退職給付債務額に重要な差異がないと想定される場合に認められる容認規定です。

(2)退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の計算
退職給付見込額の期間帰属方法として、次の2つの方法の選択適用が認められています。
・期間定額基準
退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法

・給付算定基準
退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法

期間定額基準は、退職時点までの勤務期間に対する当期までの勤務期間の割合を退職給付見込額に乗じることで各期への期間帰属額の算定を行うため、非常にシンプルですが、給付算定基準については少し複雑なため設例で解説します。

前提条件
⑴ 退職給付制度Xでは、従業員が10年超20年未満の勤務後に退職した場合、400の退職一時金を、従業員が20年以上の勤務後に退職した場合、500の退職一時金を支給する。10年未満で退職した場合、退職一時金は支給しない。
⑵ 退職給付制度Yでは、従業員が10年超20年未満の勤務後に退職した場合、100の退職一時金を、従業員が20年以上の勤務後に退職した場合、500の退職一時金を支給する。10年未満で退職した場合、退職一時金は支給しない。

考え方
⑴ 退職給付制度Xの給付算定式の下では、最初の10年間の各年に40(400の退職一時金÷10年)を帰属させ、次の10年間の各年に10((500−400)の退職一時金÷10年)を帰属させます。入社10年以内に退職すると予想される従業員には、給付を帰属させません。

⑵ 退職給付制度Yの給付算定式の下では、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となります。この場合、勤続20年を超える期間の勤務は、重要な追加の退職給付を生じさせないため、勤続20年後に退職すると予想される従業員については、当該期間の給付が均等に生じるとみなした補正により、各年に給付を帰属させることとなります。したがって、最初の20年間の各年に帰属させる給付は、25(500の退職一時金÷20年)になります。

10年から20年の間に退職すると予想される従業員について、最初の10年間の各年に帰属させる給付は、10(100の退職一時金÷10年)となります。当該従業員には、10年後と予想退職時期との間については、給付を帰属させず、また。入社10年以内に退職すると予想される従業員にも、給付を帰属させません。

(3)退職給付債務の計算(退職給付の支払見込日までの期間を反映した割引率を用いて割り引く)
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち期末までに発生したと認められる額を、退職給付の支払見込日までの期間(以下「支払見込期間」という。)を反映した割引率(※)を用いて割り引きます。当該割り引いた金額を合計して、退職給付債務を計算します。

(※)割引率について
退職給付債務等の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しますが、この安全性の高い債券の利回りには、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りが含まれます。優良社債には、例えば、複数の格付機関による直近の格付けがダブルA格相当以上を得ている社債等が含まれます。
割引率は、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければなりません。当該割引率としては、例えば、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれます。

退職給付債務の算定は以上の通りです。退職給付引当金は、この退職給付債務から年金資産(退職給付専用の積立資産)を控除した金額にて貸借対照表(BS)に計上しますが、年金資産の詳細については次の記事でアップします。
全ての退職給付計算に年金資産が登場するわけではありません。これも会社が導入している退職給付金制度による所となります。簡単にいうと、退職一時金制度では内部積立のみのため、年金資産の会計処理は必要なく、確定給付企業年金制度を導入している場合には年金資産の会計処理が必要になってきます。

ご自身の会社が導入している退職給付制度をまずは確認する所からが会計処理のスタートとなります。

勤務費用と利息費用の算定(PL)

確定給付制度における毎期の仕訳として、勤務費用と利息費用の合計を退職給付費用として計上し、同額を退職給付引当金に計上します。

退職給付費用= 勤務費用 + 利息費用 

(借方)(貸方)
退職給付費用  XXX退職給付引当金  XXX


では次に、勤務費用と利息費用の計算方法について解説していきます。

勤務費用とは、1期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付をいいます。
勤務費用の計算は、期首時点で当期の勤務費用を計算する手法を用い、以下のステップで計算を行います。
(1)退職給付見込額の見積り
退職給付見込額は、退職給付債務の計算において見積った額です。
(2)退職給付見込額のうち当期において発生すると認められる額の計算
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち、当期において発生すると認められる額を計算します。当期において発生すると認められる額は、退職給付債務の計算において用いた方法と同一の方法により、当期分について計算します。
(3)勤務費用の計算
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち当期に発生すると認められる額を、割引率を用いて割り引きます。当該割り引いた金額を合計して、勤務費用を計算します。

利息費用とは、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息をいいます。
利息費用の計算は、期首の退職給付債務に割引率を乗じて算定します。

まとめ

・退職給付会計とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付

・制度によって会計処理は異なっており、「確定拠出制度」と「確定給付制度」がある

・「確定給付制度」における退職給付債務の算定は次のステップにより行う。

  • 退職により見込まれる退職給付の総額(以下、「退職給付見込額」)の見積り
  • 退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の計算
  • 退職給付債務の計算(退職給付の支払見込日までの期間を反映した割引率を用いて割り引く)

・「確定給付制度」の会計処理(仕訳)は、毎期、勤務費用と利息費用の合計を退職給付費用として計上し、同額を退職給付引当金に計上していく

いかがだったでしょうか。非常に難しい退職給付会計について、概要は理解できましたでしょうか。

実は、年金資産や数理計算上の差異、過去勤務費用についてなどまだ解説できていないことがたくさんありますので、こちらについては今度の記事にてアップします!

ご質問は、コメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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