G-X0MQHQND78

【わかりやすく!】金融商品会計について解説①〜基準の全体像と有価証券の区分方法を掴む

会計

今回のテーマは「金融商品会計基準」についてです。

「金融商品」と一言に言っても意外とその範囲は幅広く、現金預金や売掛金、借入金、有価証券、デリバティブなど多岐に渡ります。

この金融商品の会計処理について規定しているのが『金融商品に関する会計基準』であり、日本公認会計士協会からは『金融商品会計に関する実務指針』が公表されています。

『金融商品に関する会計基準』には何が書かれているのか、株式を取得したけど会計上はどのように処理するべきか知りたい、という方に向けてわかりやすく解説していこうと思います。

すでに以前の記事で市場価格のない株式の減損に関しては解説していますので、この論点を理解したいという方はこちらの記事をどうぞ。

金融商品会計の対象

金融商品会計基準が対象としている「金融商品」の内容は多岐にわたりますが、まずは「金融商品」の具体的な内容について説明していきます。

「金融商品」は大きく分けて「金融資産」と「金融負債」の2種類に区分することができ、基準上では以下のように定義されています。

金融資産現金預金受取手形売掛金及び貸付金等の金銭債権株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引先渡取引オプション取引スワップ取引及びこれらに類似する取引(デリバティブ取引)により生じる正味の債権等をいう。
金融負債支払手形買掛金借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務等をいう。

ポイントは現金預金や売掛金、買掛金等の金銭債権債務についても「金融商品」の範囲に含まれるという点ですね。

「金融商品」と聞くと銀行や証券会社で取り扱われる株式や保険、デリバティブ商品をイメージしがちですが、どの会社でも保有している現金預金、金銭債権債務に関しても金融商品会計の対象範囲となります。

上記の他、『金融商品会計に関する実務指針』では以下についても金融商品会計基準の対象範囲に挙げられています。

金融商品会計基準の対象に含まれるもの
建設協力金等の差入預託保証金、商品ファンド、ゴルフ会員権等、保険契約、債務保証契約、クレジット・デリバティブ、ウェザー・デリバティブなど

退職給付やリース取引については別途会計基準が定められており、実務指針において金融商品会計基準の対象外であることが明示されています。

それにしても金融商品会計の対象範囲は広いですね。

金融商品会計基準の全体像

続いて金融商品会計基準の全体像を掴んでいきましょう。

金融商品会計基準では対象となる金融商品の範囲から始まり、取得時の貸借対照表への計上価額、評価方法、ヘッジ会計といった特殊な論点についても幅広く規定されています。

金融商品会計基準で規定されている処理の内容をまとめると以下の表の通りとなります。

対象の金融商品会計処理の内容備考
全ての金融商品金融資産及び負債の発生及び消滅の認識金融商品を譲渡、解約した場合の会計処理を確認できる
全ての金融商品金融商品の貸借対照表価額・有価証券は種類ごとに貸借対照表価額が規定されている
・時価の把握が困難な有価証券の計上方法を確認できる
・時価が著しく下落した場合の処理についても規定
金銭債権
(売掛金、受取手形など)
貸倒見積高、貸倒引当金の算定方法債券の種類ごとに貸倒見積高の算定方法を確認できる
デリバティブヘッジ会計の方法・ヘッジ会計の対象、ヘッジ手段、要件等を確認できる
・ヘッジ会計の原則的処理方法の他、金利スワップの取扱いについて規定
新株予約権付社債資本を増加させる複合金融商品の会計処理方法新株予約権付社債について発行者側、取得者側それぞれの処理を確認できる
建設協力金建設協力金の会計処理実務指針の設例にて具体的な会計処理方法を確認できる
 

特に金融商品の貸借対照表価額は保有する有価証券の価値が変動した場合の会計処理を確認するのに非常に重要ですし、債権の貸倒引当金の算定を行う場合にも金融商品会計基準の考え方が基礎となることを覚えておきましょう。

株式の評価や貸倒引当金の算定は毎期の決算で必要になりますし、税務にも影響を与える項目ですので基準の考え方を理解しておくと非常に役に立ちますよ。

金融商品会計における有価証券の区分

金融資産に区分される有価証券には株式、出資証券、公社債などの種類があり、保有目的別に会計処理が異なるため、基準上、いくつかの区分が定められています。

まずは有価証券の区分方法を確認していきましょう。

有価証券は保有目的等の観点から、(1)売買目的有価証券、(2)満期保有目的の債券、(3)子会社株式及び関連会社株式、(4)その他有価証券に区分され、それぞれに貸借対照表価額と評価差額の処理に関する規定があります。

区分の内容と例示をまとめると以下の図の通りとなります。

例えば満期保有目的の債券について、保有目的が変更(満期を待たずに償還することとなった)場合には売買有価証券又はその他有価証券に区分を変更することができます。

同様に、子会社株式及び関連会社株式についても持分比率の低下により一般の株式となった場合には区分の変更が可能です。

一方、売買目的有価証券とその他有価証券については取得当初の意図に基づいて行われるものであるため、基準上は取得後に売買目的有価証券をその他有価証券に振替えること、その他有価証券を売買目的有価証券に振替得ることを認めていません。

区分によって区分変更の可否が異なりますので留意が必要です。

有価証券の貸借対照表計上価額

続いて、有価証券の区分ごとに貸借対照表価額への計上価額を確認しましょう。

(1)売買目的有価証券
売買目的の有価証券は時価をもって貸借対照表へ計上します。時価の変動により利益を得ることを目的としますので、その時点での得られた利益を財務諸表へ反映させるためです。
従って、毎期末の決算時には時価への評価替えを行い、その評価差額は「有価証券評価損益」としてPLに計上します。
(2)満期保有目的の債券
満期保有目的の債券は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表へ計上します。
満期まで保有することを目的としており、時価が算定できたとしても価格変動のリスクを認める必要がないという考えに基づくものです。
毎期末の決算時に償却原価法を適用する必要があります。
(3)子会社株式及び関連会社株式
子会社株式及び関連会社株式は取得価額をもって貸借対照表へ計上します。
子会社株式は事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づいており、関連会社株式についても子会社株式と同様に事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であるとの考え方によるものです。
(4)その他有価証券
その他有価証券は時価をもって貸借対照表へ計上します。
毎期末の決算時に時価への評価替えを行いますが、その評価差額は「その他有価証券評価差額金」としてBSの純資産の部に計上します。
その他有価証券には多様な性格があり、保有目的も多義的であることから売買目的有価証券と小会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を有するものと捉えられています。

それぞれに異なった処理方法が規定されていますので、混同しないように注意が必要です。

まとめ

如何でしたでしょうか。

今回は金融商品会計基準の全体像と有価証券の区分といった基本的なところを解説していきましたが、次回以降、応用的な論点についても解説していこうと思います。

今回のポイントをまとめると以下となります。

・金融商品会計基準の対象範囲には現金預金や売掛金・買掛金などの金銭債権債務も含まれる

・貸倒引当金の算定やヘッジ会計の方法についても金融商品会計基準にて定められている

・有価証券の区分は①売買目的有価証券、②満期保有目的の債券、③子会社及び関連会社株式、④その他有価証券の4区分がある

・有価証券の区分ごとに貸借対象表価額は異なる

・売買目的有価証券とその他有価証券については取得後の区分変更は認められていない

不明点があればいつでもお問い合わせください。個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました