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【わかりやすく!】IFRSにおける投資不動産の会計処理を解説

会計

今回はIFRSの投資不動産に関する基準について解説をしていきます。

IFRSにはIAS第40号「投資不動産」という基準があり、投資不動産の会計処理について具体的に定められています。

一方、日本基準では投資不動産に関する会計基準は存在しないため、会計処理の方法についてはIFRSと日本基準の間でいくつかの基準差が存在します。

投資不動産を所有している会社でIFRSを適用する場合には、IAS第40号は欠かせないものとなりますので、基準の内容をしっかりと確認していきましょう。

前回の記事では、IFRSによる固定資産減損について解説を行っていますので、よろしければこちらもどうぞ。

投資不動産とは?

まず、IAS第40号の対象となる「投資不動産」とは何かについて確認していきましょう。

IFRSでは「投資不動産」を以下のように定義づけています。

投資不動産とは、以下を除き、賃貸収益を得るためもしくは資本増価のためまたは、その両方を目的として、所有者がもしくはファイナンス・リースの借手が保有する不動産をいう。

①物品の製造・販売、サービスの提供に使用、または経営管理目的で保有される不動産

②通常の営業過程において販売目的で保有される不動産

自己の事業のために使用される不動産ではなく、独立したキャッシュ・フローを生み出す賃貸目的の不動産が投資不動産に該当します。

IAS第40号では、投資不動産の例示として以下が挙げられています。

①通常の営業過程において短期間に販売されるものではなく、長期的な資本増価のために保有される土地
②将来の用途を未定のまま保有する土地
③企業が所有し、オペレーティング・リースしている建物
④現在は借手がいないが、オペレーティング・リースによりリースするために保有されている建物
⑤投資不動産として将来利用するために建設中または開発中の不動産

将来の用途が未定の土地については、IFRSでは資本増価のために保有するとみなすこととされています。

投資不動産に該当するもの・しないもの

投資不動産の定義や例示は前項の通りとなりますが、例えば不動産の一部を事業のために自己使用し、一部を賃貸に出しているケースも起こり得ます。

投資不動産に該当するものとしないものをケースごとに解説すると以下のようになります。

①投資不動産と自己使用不動産の目的で構成される不動産

IAS第40号10項では、賃貸収益または資本の増価のために保有されている部分と、事業に使用または経営管理目的で保有(本社建物等)で保有される部分で構成される不動産について、次のように取り扱うものとしています。

■個別に売却(もしくはファイナンスリース)することが可能な場合

⇨当該部分を個別に会計処理する。

■個別に売却できない場合

⇨事業に使用または経営管理目的で保有される部分の重要性が低い場合には、当該不動産を投資不動産とする。

②オペレーティング・リースされている不動産

オペレーティング・リースの下で借手が保有する不動産賃借権が、投資不動産の定義を満たす場合で、かつ、公正価値モデルを使用する場合は投資不動産に分類することが可能です。

この場合には、貸手もオペレーティング・リースの不動産を計上することとなりますが、貸手側の会計処理は変更されません。

なお、IFRS第16号「リース」の適用により、投資不動産は、所有者または使用権資産として借手が保有する不動産とされます。

借手が、投資不動産に公正価値モデルを適用する場合は、投資不動産の定義を満たす使用権資産にも適用する必要があります。

リース取引と投資不動産の関係をまとめると下表となります。

オペレーティング・リースファイナンス・リース
借手固定資産に計上されていない
⇨不動産賃借権を投資不動産に分類可能
固定資産に計上している
⇨投資不動産に分類可能
貸手固定資産に計上している
⇨投資不動産に分類可能
リース債権を計上する
 

③連結会社間で賃貸されている不動産

連結会社間でリースされている不動産については、当該不動産を次のように扱います。

■当該不動産を所有する企業の観点からは、それが投資不動産の定義を満たす場合、個別財務諸表では投資不動産として取り扱う。

■企業集団の観点からは、投資不動産に該当しないため、連結財務諸表において自己使用目的の不動産として取り扱う。

投資不動産の当初認識と事後測定

投資不動産は、有形固定資産と同様に以下の条件をいずれも満たす場合に資産として認識されます。

①関連する将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
②原価が、信頼性をもって測定できること

また、投資不動産の主な原価の内容は以下のように構成されます。

投資不動産の事後測定の方法としては、有形固定資産と同様に公正価値モデルまたは原価モデルのいずれかを選択して、当該会計方針を全ての投資不動産に適用することが求められます。

公正価値モデル
公正価値が信頼性をもって算定できない場合を除き、全ての投資不動産を公正価値で評価し、公正価値の変動から生じる差額は発生した期の損益に含める。
原価モデル
取得原価から、減価償却累計額および減損損失累計額を控除して計上する。

なお、日本基準では公正価値モデルの考え方はなく、取得価額で計上されるのみとなっていますので、この点は基準差となります。

IFRSでは投資不動産について公正価値に基づいて毎期評価替えを行うことが出来る点に留意しましょう。

投資不動産に関する開示

IFRSでは投資不動産に関する開示事項が定められており、全般的な開示項目には以下があります。

■公正価値モデルを適用しているか、原価モデルを適用しているか
■公正価値モデルを適用している場合には、オペレーティング・リースの下で借手が保有する不動産賃借権の取扱い
■投資不動産の分類が困難な場合の判断基準
■公正価値の算定方法と重要な前提
■独立の鑑定人による評価に基づく程度
■投資不動産から発生する曽根き
■売却代金等の送金に対する制限の存在及び金額
■投資不動産の購入、建設、修繕、改良のための契約上の義務

また、公正価値モデルを採用している場合と原価モデルを採用している場合で要求される事項が異なっています。

IFRSに基づいて有価証券報告書や計算書類等の開示書類を作成する場合、適用する評価モデルには特に留意が必要です。

公正価値モデルを原価モデルそれぞれに要求される開示項目をまとめると下表となります。

公正価値モデル原価モデル
右記は不要減価償却の方法
右記は不要耐用年数または減価償却率
右記は不要期首と期末の取得原価及び減価償却累計額・減損損失累計額
以下を示した期首と期末の帳簿価額の調整額
①取得による増加額とその後の支出に伴う増加額
②企業結合による取得に基づく増加額
③IFRS第5号の売却目的に分類される資産額とその処分額
④公正価値の修正に伴う正味損益
⑤表示通貨換算による正味為替差損益
⑥棚卸資産、自己使用不動産への振替及びそれらからの振替
⑦その他の変動
以下を示した期首と期末の帳簿価額の調整額
①取得による増加額とその後の支出に伴う増加額
②企業結合による取得に基づく増加額
③IFRS第5号の売却目的に分類される資産額とその処分額
④減価償却額
⑤減損損失及び戻入れ額
⑥表示通貨換算による正味為替差損益
⑦棚卸資産、自己使用不動産への振替及びそれらからの振替
⑧その他の変動
右記は不要公正価値
 

まとめ

如何でしたでしょうか。

日本基準では明確な定めのない投資不動産について、IFRSではさまざまな規定が設けられているのできちんと基準を確認するようにしましょう。

最後に今回の解説ポイントをまとめます。

・IFRSでは将来の使用用途が定まっていない土地は投資不動産とみなされる

・連結会社間のリースによる投資不動産は個別財務諸表では投資不動産、連結財務諸表では自己使用の不動産となる

・投資不動産の事後測定には原価モデルと公正価値モデルのいずれかを選択する

・原価モデルと公正価値モデルにより、開示項目に相違が生まれる

解説した内容に不明点があればいつでもお問い合わせください。

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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