今回は、聞いたことがあるけれどなかなか理解できていない「決算書」について解説を行っていきたいと思います。
決算書は、会社のお金周りの情報を得る上で非常に重要なものとなってきます。
決算書を正しく読むことができれば、会社の状態を正しく把握することができ、会社の株を買う場面や自分の会社の状態を理解する場面で非常に役に立ちます。
決算書とはそもそも何なのかといった基本的な解説から決算書の正しい読み方について解説をしていきたいと思います。
前回の記事についてはこちら
決算書とは?
決算書は、会社の財政状態や経営成績を表した書類のことをいいます。
具体例を挙げると売上がいくらなのか、利益はいくらなのか、また現金預金や固定資産などの資産はいくらあるのか、借入などの負債はいくらなのかを表した書類のことです。
代表的な決算書の種類として以下の2つがあります。
・貸借対照表(読み方:タイシャクタイショウヒョウ 英語:Balance sheet)
・損益計算書(読み方:ソンエキケイサンショ 英語:Profit and loss statement)
■ 貸借対照表(B /S)
貸借対照表は、企業の決算日時点における資産、負債、純資産の状態(財政状態)を表すために作成される決算書のこと。複式簿記により損益計算書とともに作成される。
具体的には、現金や建物、土地などの資産をどれくらい持っているか、借金などの負債はどれくらいあるのかといった財政状態を報告するための書類。
■ 損益計算書(P /L)
損益計算書は、企業の決算日までの一定期間における収益と費用の成績(経営成績)を表すために作成される決算書のこと。複式簿記により貸借対照表とともに作成される。
具体的には、売上などの収益がいくらであったか、原価などの費用はどれくらいであったかといった経営成績を報告するための書類。
企業の財政状態を表す決算書が「貸借対照表」、経営成績を表す決算書が「損益計算書」となり、この2つは複式簿記により一緒に作成される決算書となります。
実際の貸借対照表と損益計算書を見てみましょう。
2021年3月期の日本テレビホールディングスの貸借対照表と損益計算書となります。
上場会社はEDINETや自社のHPでも決算書を公開しているので気になる会社があれば検索してみてください。
計算書類、財務諸表とは? 決算書との違いについて
ここまで「決算書」とはについて説明してきましたが、「決算書」は一般的な呼び方であり、法律上の用語では、「計算書類」、「財務諸表」と言われます。
皆さんは、「計算書類」、「財務諸表」という用語を聞いたことありますでしょうか。
聞いたことある方は、「計算書類」、「財務諸表」のそれぞれの違いについて説明できますでしょうか。
これらの違いは、作成が求められる法律が異なっており、それぞれ作成しなければいけない作成書類も異なっています。
計算書類 | 財務諸表 | |
法律 | 会社法 | 金融商品取引法 |
作成書類 | ・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変動計算書 ・個別注記表 |
・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変動計算書 ・キャッシュ・フロー計算書 ・附属明細書 |
対象 | すべての会社 | 主に上場企業など |
目的 | 債権者保護と株主との利害調整 | 投資家保護と投資情報の提供 |
なぜ、法律で「計算書類」や「財務諸表」の作成が義務付けられているのかというと、
例えば、上場企業の株を皆さんが買いたいと思った時、気になるのは「その会社の株価が今後上がるのか」ということですよね。すぐに潰れてしまいそうな会社であればもちろん株を購入したりしないでしょう。
また、銀行も会社にお金を貸すときにどういった視点で貸すことを決めるでしょうか。
それは、「その会社が借りたお金を返すことができるか」ということが大事な要素になると思います。
会社は株主から投資をしてもらう場合や、銀行からお金を借りる場合に会社が潰れないような会社か、利益がきちんと出ている会社なのか、を表すために必要なのが「決算書」の作成なのです。
投資家保護の目的、債権者保護の目的等から法律にて対象となる会社に「計算書類」、「財務諸表」の作成を義務付けているのです。
株主資本等変動計算書とキャッシュ・フロー計算書
作成書類のうち、「貸借対照表」と「損益計算書」については先ほど説明しました。
まだ解説していない「株主資本等変動計算書」、「キャッシュ・フロー計算書」について解説します。
■ 株主資本等変動計算書(Statements of Shareholders’ Equity:S /S)
貸借対照表における純資産の部の変動の様子を表すために作成される決算書のこと。株主資本等の純資産が増加(または減少)した原因や、その増加(または減少)したものをどの項目に振り分けたのかを報告するための書類。
■ キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement:C /S)
キャッシュフロー計算書は企業の決算日までの一定期間における現金の流れを表すために作成される決算書のこと。キャッシュフロー計算書は「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の大きく3つに分かれており、それぞれの区分にて動いた現金額を報告するための書類。
この2つは、B /SやP /Lの補足的な決算書といえるでしょう。
以下、2021年3月期の日本テレビホールディングスの株主変動計算書
貸借対照表と損益計算書の読み方
ここまで「決算書」の概要と種類について解説してきました。
ここからは、「貸借対照表」と「損益計算書」の実際の読み方について解説していきます。
■ 貸借対照表の読み方
貸借対照表は、企業の決算日時点における資産、負債、純資産の状態(財政状態)を表すために作成される決算書のことです。
貸借対照表は、「資産の部」、「負債の部」、「純資産の部」に分類されています。
・「資産の部」
会社の資産が計上されている部分。流動資産と固定資産で構成される。
流動資産は、現金預金や売掛金、商品など会社の営業で使用する資産や1年以内に現金化できるものが計上される。
固定資産は、建物や土地、投資有価証券や関係会社株式など1年以上の期間を経て現金化されるものが計上される。
・「負債の部」
会社の負債が計上されている部分。流動負債と固定負債で構成される。
流動負債は、買掛金や未払金、短期借入金など会社の営業で使用する負債や1年以内に支払う必要があるものが計上される。
固定負債は、長期借入金など1年以上の期間を経て支払う必要があるものが計上される。
・「純資産の部」
資産から負債を引いた差額となる。主に株主資本から構成されており、株主資本は、株主からの出資と過去からの利益の蓄積(繰越利益剰余金)にて計上される。
貸借対照表の大まかな分類について解説しました。ここで代表的な指標をいくつか紹介します。
・流動比率 = 流動資産 / 流動負債 × 100
短期の負債に対し、どれだけの短期の資産を有しているかを表している指標となります。
流動比率が高い会社ほど安定している指標で、一般的なラインとしては、200%が安定している会社と言えるでしょう。
・固定比率 = 固定資産 / 自己資本 × 100
設備投資などの固定資産をどれだけ自己資本で賄っているかを表す指標となります。
固定比率が低い会社ほど安定している指標で、一般的なラインとしては、100%以下が安定している会社と言えるでしょう。
・自己資本比率 = 純資産 / 総資本 × 100
総資本に対する返済義務のない自己資本の比率を表す指標となります。
自己資本比率が高い会社ほど負債なく会社を運営できており、安定している指標となります。
一般的なラインとしては、50%〜70程度が安定している会社と言えるでしょう。
■ 損益計算書の読み方
損益計算書は、企業の決算日までの一定期間における収益と費用の成績(経営成績)を表すために作成される決算書のことです。
損益計算書は、「収益」、「費用」、「利益」にて構成されています。
売上から始まり、段階的に対応する費用が表示され、その差額が利益として表されます。
最終的に当期純利益が最終的な利益として表示されます。
収益 | 費用 | 利益 |
売上 | 売上原価 | 売上総利益 (売上ー売上原価) |
ー | 販売費及び一般管理費 | 営業利益 (売上総利益ー販管費) |
営業外収益 | 営業外費用 | 経常利益 (営業利益±営業外損益) |
特別利益 | 特別損失 | 税引前当期純利益 (経常利益±特別損益) |
ー | 法人税等 | 当期純利益 (税引前利益ー法人税等) |
それぞれの段階の利益の性質は以下の通りです。
・売上総利益
当期中の売上から売上原価(商品やサービスを生み出すために生じた費用)を控除した額
売上原価には、材料費の他に製造に要した人件費や製造経費も含まれます。
・営業利益
売上総利益から販管費(販売や営業を行うために生じた費用)を控除した額
販管費には、事務所の家賃などの経費や営業や販売に要した人件費、広告宣伝費など販売のために生じた費用が含まれます。そのため営業利益は会社の本業により稼いだ利益としての性質を持っています。
・経常利益
営業利益に営業外損益を加味した額
営業外損益には借入金の支払利息や所有している株式の配当金など本業以外によって発生した損益が含まれます。そのため経常利益は本業以外の利益も含まれているものの経常的に稼げる利益としての性質を持っています。
・税引前当期純利益
経常利益に特別損益を加味した額(法人税を控除する前の利益)
特別損益には、臨時的に発生した費用や収益が計上されます。
・当期純利益
税引前当期純利益に法人税等を加味した額
最終的な会社の利益を表しています。
もちろん利益率の高い会社ほど収益性が高い会社となり、優良企業と言えます。
ただし、各段階利益で性質が異なっているため、本業での収益性が高い会社なのか、本業以外で収益性が高い会社なのか見抜く必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、決算書について解説しました。
決算書は、会社の状態を正しく把握する上で非常に役に立ちます。
資産をたくさん持っていても負債がたくさんある可能性もあり、また資産をたくさん持っている会社でも直近の売上、利益は少なくなっている可能性もあります。
決算書を正しく読むことで会社が今どのような状態にあるのかを見ることができるものとなります。
有価証券報告書では、2年間分の数字が比較された状態で開示されているため、前年度と比べて当期の数値がどうであるか見ることができるようになっています。
決算書に書かれている数字の意味がわかるようになると会社の状況やどういったところに強みがあるのかなど知ることができて決算書を読むのが楽しくなりますね。
個別のご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!
ではでは!