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【わかりやすく!】包括利益とは? 包括利益とP /L・B /Sの関係を解説!

会計

みなさん、「包括利益」をご存知でしょうか。
当期純利益は、馴染みの深い言葉ですが、包括利益という言葉はなかなか聞かないかもしれませんね。
また聞いたことはあるけど、完璧には理解しておらず、どういったものか説明できる人は多くないかもしれません。
今回は、そんな包括利益についてわかりやすく解説をしていきたいと思います!

前回の記事についても是非チェックしてみて下さい!

包括利益とは

包括利益とはひと言で説明すると

純資産の変動額のこと(株主との直接的な取引は含まない) です

会計基準(包括利益の表示に関する会計基準(企業会計基準第25号))には、以下のように定義されています。

.「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の非支配株主も含まれる。

純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分

・「持分所有者」・・・企業の株主、新株予約権の所有者、非支配株主のこと
・「持分所有者との直接的な取引」・・・配当や追加出資、出資の払い戻しのこと

つまり、包括利益とは、株主や新株予約権の所有者との直接的な資本取引を除いた純資産の変動額のこと です

皆さんは純資産額の変動というと、当期純利益、剰余金の配当が思い浮かぶと思いますが、剰余金の配当については持分所有者との直接的な取引に該当しますので、包括利益には該当しません。当期純利益は、持分所有者との直接的な取引に該当しませんので、包括利益に含まれます。

包括利益を式で表すと以下のようになります。

包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益

包括利益は当期純利益と「その他の包括利益」を合計したものとなります。

「その他の包括利益」とは、純資産額の変動額のうち、当期純利益を除いたものです。

なんだか循環してしまっていますね。
つまり「その他の包括利益」とは、P /Lに(当期純利益として)計上されずに、B /S上に計上されている「含み損益」のことです。

次のセクションでは、「その他の包括利益」について解説していきます。

その他の包括利益とは

「その他の包括利益」とは、P /Lに(当期純利益として)計上されずに、B /S上に計上されている「含み損益」のことです。
会計基準では、以下のように定義されています。

5.「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益に含まれない部分をいう。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と非支配株主に係る部分が含まれる。

その他包括利益は、あくまで ”変動額” を意味していますので、B /Sに計上額のうち 、”当期の変動額” を「その他の包括利益」といいます。B /Sに表示される金額は、残高であり、”累計額” となるため、純資産の部の内訳項目としては「その他の包括利益”累計額”」となります。「包括利益」と「その他の包括利益」、「その他の包括利益累計額」は混同しやすいので注意しましょう。

・その他の包括利益は、P /Lに(当期純利益として)計上されずに、B /Sに計上されている含み損益
・その他の包括利益累計額は、B /Sに表示されるその他の包括利益の累計額のこと

では、「その他の包括利益」にどのような項目があるかみていきましょう。

・その他有価証券評価差額金
・・・その他有価証券の評価差額

・繰延ヘッジ損益
・・・ヘッジ手段の時価評価差額

・為替換算調整勘定
・・・在外子会社の財務諸表を取り込む際の換算手続において発生する、為替差額(決算時為替相場で換算される資産および負債項目の円貨額と取得時または発生時の為替相場で換算される資本項目の円貨額との差額)

・退職給付に係る調整額・・・連結財務諸表における退職給付会計の未認識項目(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用)の前期末との差額(当期発生額した未認識項目から前期末計上額のうち当期費用処理された額を控除した額)

包括利益計算書(C /I)とP /L・B /Sの関係

では、次に包括利益計算書(C /I:Statement of Comprehensive Income)について解説していきます。
包括利益計算書は、連結財務諸表の一つを構成する当期の包括利益を表す財務諸表です。
連結財務諸表でのみ必要となるものとなります。

包括利益計算書は、次の二つの形式が認められていますが、損益計算書と包括利益計算書をそれぞれ作成する2計算書方式を採用している会社が実務ではほとんどなります。やはり指標としての当期純利益はまだまだ重視されている印象です。

2計算書方式 当期純利益を表示する損益計算書と、包括利益を表示する包括利益計算書からなる形式
1計算書方式 当期純利益の表示と包括利益の表示を一つの計算書(「損益及び包括利益計算書」)で行う形式

包括利益計算書(C /I)と貸借対照表(B /S)、損益計算書(P /L)の関係を図で表すと以下のようになります。

貸借対照表における「利益剰余金」の増減額を表すのが損益計算書の「当期純利益」で、「その他の包括利益累計額」の増減額を表すものは包括利益計算書の「その他の包括利益合計」となります。
貸借対照表の純資産額の増減額を表すのが、包括利益計算書の「包括利益」となります。※株主との直接取引は除く

B /Sにおける「利益剰余金」の増減損益計算書の「当期純利益」
B /Sにおける「その他の包括利益累計額」の増減包括利益計算書の「その他の包括利益合計」
B /Sにおける「純資産」の増減包括利益計算書の「包括利益」

組替調整額(リサイクリング)とは?

次に組替調整額(リサイクリング)について解説していきます。

組替調整額とは

当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分のこと

その他の包括利益は、B /Sに計上される「含み損益」ですが、この「含み損益」が実現したことにより当期純利益に計上された額を組替調整額(リサイクリング)といいます。

組替調整額の具体的な例として以下のケースがあります。

・その他の有価証券評価差額金について当期に売却又は減損により当期純利益に含められるケース
・繰延ヘッジ損益に関して、ヘッジ対象に係る損益が認識されたことに伴って当期純利益に含められるケース
・為替換算調整勘定に関して、子会社に対する持分の減少(全部売却又は清算)に伴って当期純利益に含められるケース
・退職給付に係る調整額に関して、償却が行われることにより当期純利益に含められるケース

包括利益に関する注記
ではこの組替調整額を認識する必要がなぜあるのかというと、会計基準において、その他の包括利益の内訳項目ごとに組替調整額を注記することが求められているためです。ただし、個別財務諸表、四半期財務諸表では省略することができます。注記のイメージは図の通りです。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回の内容をまとめると下記の通りです。

・包括利益とは、株主や新株予約権の所有者との直接的な資本取引を除いた純資産の変動額のこと

・式では「包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益」と表せられる。

・その他の包括利益は、P /Lに計上されていない変動額(B /Sに計上されている含み損益)のこと

・包括利益計算書は、次の二つの形式が認められており、ほとんどの会社が2計算書方式を採用している

・貸借対照表における「利益剰余金」の増減額を表すのが損益計算書の「当期純利益」で、「その他の包括利益累計額」の増減額を表すものは包括利益計算書の「その他の包括利益合計」となる ※株主との直接取引は除く

・組替調整額とは、当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分のことであり、連結財務諸表において組替調整額を注記することが求められている。

包括利益はなかなか理解するのが難しいかもしれませんが、構造や財務諸表間の関係や流れを理解すれば覚えられるのではないでしょうか。

国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)では、B /S重視の考え方となっており、当期純利益よりも、純資産額の変動要因を明示することが必要とされています。
包括利益は、その国際的な会計基準の考え方と整合させるために日本においても導入されたものとなっております。
日本ではまだまだ当期純利益を重視する考え方が一般的ですが、今後、包括利益はますます重要な指標となっていくと思われますので、覚えておいて損はないはずです!

ご質問は、コメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)で受け付けていますのでよろしくお願いします!

ではでは!

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