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【わかりやすく】組織再編会計について⑤〜逆取得・株式交換・株式移転の会計処理【解説】

M&A

皆さん、こんにちは
今回は、組織再編の形式ごとの取得の会計処理について解説を行なっていきます!
まだ解説できていない「逆取得」、「株式交換」、「株式移転」について設例で解説を行なっていきます。

前回の記事についてはこちらです。是非チェックしてみてください。

吸収合併による逆取得の会計処理と設例

「逆取得」とは

「逆取得」とは株式を交付した会社と企業結合会計上の取得企業が一致しない取得

吸収合併において取得企業が法律上の存続会社とならない場合がありますが、取得企業と被取得企業のいずれが存続会社となるかは組織再編の形式の相違にすぎません。
そのため、取得企業と被取得企業のいずれが存続会社となるかは、原則として、連結財務諸表上の会計処理には影響しません。

[設例] 逆取得となる吸収合併の会計処理

⑴ 前提条件
① A社とB社は合併した。当該合併は、A社が吸収合併存続会社となったが、取得企業はB社とされた(逆取得)。
② 合併比率(A社:B社)は、1:2.5、合併期日のB社の株価は1株当たり40であった。
③ 発行済株式数は、A社が100株、B社が60株であった。
④ A社及びB社の合併期日前日の個別貸借対照表は次のとおりであったものとする。

A 社(吸収合併存続会社・被取得企業)個別貸借対照表
諸資産(*1) 1,100 /
資本金 300
利益剰余金 800
合 計 1,100

(*1)企業結合日におけるA社の諸資産の時価は1,300であった。

B社(吸収合併消滅会社・取得企業)個別貸借対照表
諸資産 2,000 /
資本金 600
利益剰余金 1,300
その他有価証券評価差額金 100
合 計 2,000

■ A社(吸収合併存続会社)の個別財務諸表上の会計処理

吸収合併消滅会社(取得企業)の資産及び負債適正な帳簿価額で引き継ぐ
吸収合併存続会社(被取得企業)の増加資本適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本として処理

仕訳

(借方)(貸方)
諸資産  2,000資本剰余金  1,900
その他有価証券
評価差額金
100

■ A社(吸収合併存続会社)の連結財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社を取得企業としてパーチェス法を適用(ただし、連結財務諸表上の資本金は個別財務諸表における吸収合併存続会社の資本金とする)(消滅会社であるB社を取得企業として処理を行うところがポイントです。)

・取得原価の算定
合併が逆取得となる場合の取得の対価となる財の時価は、A社株主が合併後の企業(結合後企業)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数のB社株式を、B社が交付したものとみなして算定します。

今回の設例では、逆取得であり、B社が「取得企業」と判定されたため、B社がA社を取得するためには、いくつのB社株式を交付すればよいかで考えることとなります。
合併比率(A社:B社)は1:2.5であり、A社の発行済株式総数は100株のため、B社は、A社取得のために40株発行すれば取得できることなります。

取得原価:1,600
=企業結合日における株価 40 ×  交付株式数40

・取得原価の配分

取得原価:1,600

企業結合びにおけるA社諸資産の時価1,300

のれん:300 (差額)

・増加資本の処理

(借方)(貸方)
諸資産  1,300払込資本
(資本剰余金)
  1,600
のれん300

B社の資本金は600の一方で、A社の資本金は300のため差額300を資本剰余金に振り替えます。

(借方)(貸方)
資本金  300資本剰余金  300

株式交換の会計処理と設例

株式交換は、ある結合当事企業が他の結合当事企業の株式の取得を通じて、他の結合結合当事企業を間接取得するものです。

しかし、株式の取得を通じて企業を間接取得するか、合併等により企業又は事業を直接取得するかは組織再編の形式の相違にすぎず、企業又は事業の直接取得と間接取得という組織再編の形式の相違は、原則として、連結財務諸表上の会計処理には影響しません(個別財務諸表上には影響を及ぼします)。

■ 株式交換完全親会社の個別財務諸表上の会計処理

株式交換完全子会社株式パーチェス法を適用した場合の取得原価で計上
(逆取得の場合)適正な帳簿価額による株主資本の額で計上
株式交換完全親会社の増加資本払込資本とする(内訳は自由)
(逆取得の場合)同上

■ 連結財務諸表上の会計処理

通常の取得の場合株式交換完全親会社を取得企業としてパーチェス法を適用する
逆取得の場合株式交換完全子会社を取得企業としてパーチェス法を適用する

[設例] 取得-株式交換完全親会社の会計処理

⑴ 前提条件
① A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。
② 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
③ A社はB社の株主にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12であり、交付した株式の時価総額は600(= @12×100株×0.5)となった。
④ 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。⑤ A社は、増加すべき株主資本600のうち、100を資本金とし、残額500については剰余金とした。
⑥ 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

B社個別貸借対照表(被取得企業)
現 金 100
有価証券 170
土 地 100 /
資本金 100
資本剰余金(資本準備金) 100
利益剰余金 150
その他有価証券評価差額金 20
合 計 370

■ A社の個別財務諸表上の会計処理
パーチェス法を適用した場合の取得原価で計上します。

(借方)(貸方)
B社株式  600資本金  100
その他資本剰余金500

取得企業であるA社は、B社を取得(100%子会社)するために、A社株式を50株交付しています。
そのため、 A社株式時価@12 × 50株 =600 をB社株式の取得原価とします。

■ A社の連結財務諸表上の会計処理
株式交換完全親会社を取得企業としてパーチェス法を適用します。

取得原価:600

識別可能な資産(時価):490 (=現金100+有価証券170+土地220)
識別可能な負債(時価):0

のれん(差額):110

(借方)(貸方)
現金  100B社株式  600
有価証券170
土地220
のれん110

株式移転の会計処理と設例

株式移転はある結合当事企業が株式移転設立完全親会社を経由した株式の取得を通じて、他の結合当事企業を間接取得するものです。

株式移転についても、株式の取得を通じて、企業を取得するか、合併等により企業又は事業を直接取得するかは組織再編の形式にすぎず、企業又は事業の直接取得と間接取得という組織再編の形式の相違は、原則として、連結財務諸表上の会計処理に影響しません(個別財務諸表上には影響を及ぼします)。

■ 株式移転設立完全親会社の個別財務諸表上の会計処理

株式移転完全子会社
(取得企業)
株式移転完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額で計上
株式移転完全子会社
(被取得企業)
パーチェス法を適用した場合の取得原価で計上
株式移転設立完全親会社払込資本とする(内訳は自由)

■ 連結財務諸表上の会計処理

株式移転完全子会社
(取得企業)の連結
投資と資本の消去差額は生じない
株式移転完全子会社
(被取得企業)の連結
投資と資本の消去差額をのれん(又は負ののれん)とする

[設例] 取得-株式移転設立完全親会社の会計処理

⑴ 前提条件
① A社とB社(A社とB社に資本関係はない。)は、株式移転(交換比率は1:0.5)により株式移転設立完全親会社C社を設立した。
② 当該株式移転は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
③ A社の株主には、A社株式1株当たりC社株式が1株交付された。また、B社の株主には、B社株式1株当たりC社株式0.5株が交付された。なお、株式移転日のA社の株価(1株当たり12)により計算したB社株主に交付した株式の時価総額は600(=@12×100株×0.5)であったものとする。また、A社及びB社の発行済株式総数はそれぞれ100株であったものとする。
④ 株式移転日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。
⑤ 株式移転設立完全親会社C社は、増加すべき株主資本1,100のうち、資本金を300増加させ、残額については剰余金とした。
⑥ 株式移転日の前日のA社及びB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

A 社個別貸借対照表
現 金 200
有価証券 180
土 地 150 /
資本金 200
資本剰余金(資本準備金) 150
利益剰余金 150
その他有価証券評価差額金 30
合 計 530
B社個別貸借対照表
現 金 100
有価証券 170
土 地 100 /
資本金 100
資本剰余金(資本準備金) 100
利益剰余金 150
その他有価証券評価差額金 20
合 計 370

■ 移転設立完全親会社(C社)の個別財務諸表上の会計処理

A社株式(取得企業)・・・適正な帳簿価額による株主資本の額で計上
B社株式(被取得企業)・・・パーチェス法を適用した場合の取得原価で計上

(借方)(貸方)
A社株式  500資本金  300
B社株式600その他資本剰余金800

B社株式600
取得企業であるA社は、B社を取得するために、A社株式を50株(100株×0.5)交付しています。
そのため、 A社株式時価@12 × 50株 =600 をB社株式の取得原価とします。

■ 連結財務諸表上の会計処理

① 株式移転完全子会社A社(取得企業)に関する会計処理

(借方)(貸方)
現金  200A社株式  500
有価証券180その他有価証券
評価差額金
30
土地150

・株式移転完全子会社A社(取得企業)の純資産の引き継ぎ

(借方)(貸方)
資本剰余金  150利益剰余金  150

② 株式移転完全子会社B社(被取得企業)に関する会計処理

取得原価:600

識別可能な資産(時価):490 (=現金100+有価証券170+土地220)
識別可能な負債(時価):0

のれん(差額):110

(借方)(貸方)
現金  100B社株式  600
有価証券170
土地220
のれん110

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は企業結合における「逆取得」、「株式交換」、「株式移転」について解説しました。

株式の取得を通じて企業を間接取得するか、合併等により企業又は事業を直接取得するかは組織再編の形式の相違にすぎず、企業又は事業の直接取得と間接取得という組織再編の形式の相違は、原則として、連結財務諸表上の会計処理には影響しないという点がポイントとなります。

・「逆取得」とは株式を交付した会社と企業結合会計上の取得企業が一致しない取得のこと

・吸収合併における「逆取得」の連結財務諸表上の処理は、吸収合併消滅会社を取得企業としてパーチェス法を適用する(消滅会社が存続会社を取得するために必要な株式を交付したとみなして算定する)。

・株式交換は、ある結合当事企業が他の結合当事企業の株式の取得を通じて、他の結合結合当事企業を間接取得するもの

・株式移転はある結合当事企業が株式移転設立完全親会社を経由した株式の取得を通じて、他の結合当事企業を間接取得するもの

・株式の取得を通じて、企業を取得するか、合併等により企業又は事業を直接取得するかは組織再編の形式にすぎず、企業又は事業の直接取得と間接取得という組織再編の形式の相違は、原則として、連結財務諸表上の会計処理に影響しない(個別財務諸表上は影響する)

個別のご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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