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【わかりやすく!】企業価値評価について解説③〜コスト・アプローチと無形資産の評価

M&A

今回は企業価値評価についての解説です。前回の記事で紹介した企業価値の算定方法である、コスト・アプローチの主な算定方法、無形資産の評価についてわかりやすく紹介していこうと思います。

コスト・アプローチとは、企業の純資産の時価評価額等を基準に株主資本価値を算定するアプローチです。

マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ(DCF法)による具体的な計算方法については前回記事で解説をしておりますので、こちらもチェックしてみて下さい。

コスト・アプローチ① 時価純資産法

コスト・アプローチによる具体的な評価手法には簿価純資産法、時価純資産法(もしくは修正純資産法)があります。

ただし、簿価純資産法については財務諸表上の純資産の簿価をそのまま企業価値と見做す手法ですので特別な算定方法はありません。

まずは、時価純資産法による算定方法から解説していきます。

時価純資産法による算定方法には、前回の記事で紹介したマーケット・アプローチによる算定方法やDCF法のような算定式は存在せず、厳密な定義はありません。

評価対象企業の資産・負債を全て時価評価することとなるのが時価純資産法の考え方ですが、実務においては全ての資産・負債を時価評価する困難といえます。

そこで、一部の重要な項目のみを時価に置き換えて企業価値を算定する、修正純資産法が採用されることが多いようです。

コスト・アプローチ② 修正時価純資産法

修正時価純資産法による具体的な算定方法を確認していきましょう。

まず、「時価」の考え方についてですが、修正時価純資産法においては原則として「再調達原価」を利用します。

再調達原価
再調達原価とは、ある資産を再度取得する場合に必要となる予想購入額をいいます。
なお、再調達原価の算定に当たっては、取得価額以外にも送料や手数料、保管費といったコストも加算する必要があります。

ただし、評価対象企業が保有する非事業用資産及び負債については正味売却価額で評価する方が実態にするものと考えられます。

それではどういった項目を時価に修正していくのか、以下に勘定別の修正項目を列挙しましたのでそれぞれ確認してみて下さい。

■資産側の主な修正項目

(1)受取手形・売掛金

受取手形及び売掛金は、会計上回収可能性を評価した上で必要な貸倒引当金を計上することが求められます。

修正時価評価法による評価に当たり、計上された貸倒引当金が楽観的な予測によるものであると判断された場合には貸倒引当金の追加計上の修正が必要となります。

(2)棚卸資産

棚卸資産については会計上、期末時における評価(再調達原価による評価、正味売却価額による評価)が必要となります。

低価法による評価を適用している場合に見積りが不十分であると判断される場合には、追加の評価切下げによる修正が必要となる場合があります。

(3)有価証券

有価証券については会計上、保有目的ごとに期末評価を行うことが求められています。

満期保有目的の債権などは取得原価で計上されるため、時価に置き換えることが可能な場合であれば時価評価への修正が必要となる場合があります。

(4)不動産

会計上、土地は取得価額、建物は減価償却累計額控除後の取得価額で計上されますが、不動産については鑑定評価書による時価評価が可能です。

修正時価評価法による評価では鑑定評価書などにより時価への修正が必要となります。

(5)投資有価証券

非上場の投資有価証券や関係会社株式については取得価額で計上されますが、時価情報が取得できる場合には時価への修正が必要となります。

■負債側の主な修正項目

(1)支払手形・買掛金

支払手形・買掛金は基本的には修正は不要です。

(2)借入金・社債

借入金・社債についても基本的には修正は不要です。

(3)退職給付に係る負債

単体財務諸表においては退職給付に係る数理計算上の差異を認識しないことも可能となりますが、この場合は簿外の債務があると言えるため、修正純資産法の評価にあたり、追加の負債として認識する必要がある場合もあります。

(4)非支配株主持分

非支配株主持分の時価は子会社の企業価値を評価することで算定可能ですので、時価と簿価との差額に重要性がある場合には修正純資産法の評価において時価へ修正する必要があります。

重要性が低い場合、連結BSの計上額をそのまま控除することが一般的です。

無形資産の評価ステップ

続いて、企業価値評価における無形資産の評価方法について解説していきます。

無形資産とは「その経済的特性によって現れる非貨幣性資産であり、物質的実態はもたず、その所有者に権利と特典を与え、通常その所有者の為に収入を創出するもの」と定義されています。

無形資産の評価は、企業がM&Aを行なった際の企業結合会計の適用時に必要となりますので企業価値評価において重要な項目といえます。

無形資産の例としては以下が挙げられます。

・特許技術
・商号、商標、団体マーク及び認証マーク
・顧客リスト
・フランチャイズ契約
・営業及び放送権
など

無形資産の評価は以下の4ステップで行われます。

(1)事前準備と計画

対象企業の評価プロセス、必要情報、抽出される無形資産、評価手法を事前に理解し、監査法人による監査に備え、計画の概要について共通の認識をもっておくようにします。

(2)データ収集と分析

事前準備ができたら、市場データ等を基に、評価すべき無形資産の抽出を行います。

(3)価値算定とデータモデリング

評価すべき無形資産の特定が出来たら、評価手法の選定と評価モデルの作成を行います。

具体的な評価手法については次章で詳細に解説していきます。

(4)報告とレビュー

評価作業が完了したら、評価報告書の提出とともに、監査法人のレビューを受けます。

無形資産の評価手法

無形資産の評価は、企業価値評価の評価アプローチと同様、①マーケット・アプローチ、②インカム・アプローチ、③コスト・アプローチの3種類のアプローチにより実施されます。

マーケット・アプローチによる評価

マーケットアプローチの主な評価法には「類似資産比準法」があります。

類似資産比準法は、類似資産に係る乗数もしくは参考市場取引価格に基づく評価方法です。

ただ、無形資産については比較可能な類似資産を見つけることは難しいので、マーケット・アプローチが採用されることは稀です。

インカム・アプローチによる評価

インカム・アプローチの主な評価方法には①ロイヤリティ免除法、②超過収益法、③差額利益法があります。

①ロイヤリティ免除法

ロイヤリティ免除法は、商標、特許などに使用される評価方法です。

対象の資産を保有していることで、保有していない場合に比べて支払いを免除されるロイヤリティ支払額に着目した評価方法です。

②超過収益法

超過収益法とは、事業から計上される収益から、キャピタルチャージとして、運転資本、有形固定資産、その他無形資産、人的資産が寄与する部分を控除することにより計算する方法です。

評価対象の無形資産に関連する事業の利益から、上記の特定資産から生まれる利益を控除して、無形資産の価値を算定します。

③差額利益法

差額利益法とは、評価対象の無形資産を保有することにより、当該資産を保有しない場合に比べて、いくらの利益が追加で増加するかに着目する評価方法です。

例えば、ブランドの服とノーブランドの服の販売を取り扱う企業であった場合、両者の販売価格の差額が1万円であれば、その差額の1万円に着目して無形資産の評価を行います。

コスト・アプローチによる評価

コスト・アプローチの主な評価方法には①複製原価法、②再調達原価法があります。

①複製原価法

複製原価法とは、評価対象の無形資産と同一の資産を複製するのに要するコストを用いて評価する手法です。

②再調達原価法

再調達原価法とは、評価対象の無形資産と同一の資産を調達するのに要するコストを用いて評価する方法です。

再調達原価法の適用にあたっては、陳腐化した価値を控除する点に留意する必要があります。

まとめ

如何でしたでしょうか。

企業価値評価の手法には様々な方法がありますので、企業の特徴に応じた評価手法を選択できるようにしっかりと理解しておくことが重要です。

また、近年は特許権やブランドなど、目に見えない無形資産を保有する企業も多くなってきていますので、無形資産の評価を行う際は事前に監査法人と情報の共有をしておく必要があることにも留意しましょう。

それでは、本日のポイントまとめです。

・コスト・アプローチにおける企業評価では「修正時価評価法」が用いられることが多い

・修正時価評価法においては原則として「再調達原価」を利用する

・無形資産の評価では対象資産の抽出、評価方法の理解、監査法人との事前のすり合わせなどの事前準備が大事

・無形資産の評価でも、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチの3つの評価アプローチが用いられる

解説した内容に不明点があればいつでもお問い合わせください。

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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