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【わかりやすく!】企業価値評価について解説①〜株式の評価方法の基本

M&A

みなさん、こんにちは。今回は「企業価値評価」について解説をしていこうと思います。会計基準の話とは少し毛色が違いますが、組織再編や株式の取得の処理などで仕訳を起票する際に「企業価値評価」による株価算定が行われることは実務でもよくあります。

組織再編の会計処理については前回の記事で解説をしておりますので、よろしければこちらも確認してみてください(全6回あります)。

 

会計士試験でも選択科目の「経営学」では企業価値評価が試験範囲に含まれており、株価算定(いわゆるバリュエーションと呼ばれるものです)に携わる会計士も結構いますね。

今回は企業価値評価の考え方について基礎的なところからわかりやすく解説していきます。

企業価値評価の目的とは?

まずは企業価値評価を行うことの目的から確認していきましょう。

そもそも、企業価値の評価を行うことの目的としては以下の4点が挙げられます。

①M&A取引目的
例えばM&Aによりとある企業を買収しようとした場合にはいくらで相手先企業を買ってくるかということを検討する必要があります。
この時に企業価値評価を行い、売買価格の算定を行います。
②グループ内取引目的(税務目的)
連結グループ内での取引を実施する場合、税務目的で必要となる企業価値評価もあります。
取引価格の決定に恣意性がないことを客観的に示すために企業価値評価が行われる場合等が該当します。
③会計処理目的
例えば減損会計の検討における将来キャッシュフローの検討や、組織再編にあたって計上された仕訳に関して会計監査人(監査法人等)へ取引説明を行う際に企業価値評価のレポートを利用する場合があります。
会計基準に則した価値の妥当性を示す必要があるためです。
④係争等の目的
裁判や和解調停などの係争の論点となっている事項の価値の妥当性を示す目的でも企業価値評価が行われる場合があります。

上記の目的で行われる企業価値評価については専門性や客観性が必要となるため、実務では監査法人やコンサルティングファーム、大手会計事務所等へ依頼することが一般的です。

企業価値の構成要素について

続いて、企業価値評価の基礎として企業価値の構成要素を理解していきましょう。

「企業価値評価」の世界では「事業価値」、「企業価値」、「株主資本価値」の3つの価値が用いられます。

似たような言葉ではありますが、それぞれの価値の意味をしっかりとおさえて混同しないようにしましょう。

事業価値
事業価値とは、その企業の事業から生じる価値のことをいい、貸借対照表に計上されている事業用資産と事業用負債の価値を包含する事業の価値として算定します。
この事業価値の算定手法にはマーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチといった複数のアプローチが用いられます。(各手法については後ほど解説していきます)
企業価値
事業価値に非事業用資産と非事業用負債を加減した価値を企業価値といいます。
なお、事業用資産・負債と非事業用資産・負債の区別は、該当の資産・負債が事業運営に直接関係するものか否かにより判断します。
非事業用資産の例を挙げると、遊休地となっている土地や、純粋な投資目的で保有している有価証券等が該当します。
株主資本価値
企業価値から純有利子負債を差し引いた価値を株主資本価値といいます。
非上場企業の株価を算定する際は、株主資本価値を発行済み株式数で割り返すことで算定することがきます。

3つの価値の関係をイメージ化すると以下となります。

■事業価値=事業用資産−事業用負債

■企業価値=事業価値±非事業用資産・負債

■株主資本=企業価値−純有利子負債

企業価値評価の3つのアプローチについて

企業価値評価の手法には3つのアプローチ方法があります。

①マーケット・アプローチ

市場における株価や取引価格を基準に事業価値や株主資本価値を算定するアプローチです。

その名の通り、マーケット(市場)に着目するアプローチとなっていて、主な評価法には株式市価法等があり、上場企業の場合には比較的容易に、客観的な企業価値評価を行うことができます。

一方、株価を利用する評価法の場合は非上場企業には適用できないというデメリットもあります。

②インカム・アプローチ

将来または過去のキャッシュフローや損益を基準とするアプローチです。

インカム(収入)に着目するアプローチとなっており、DCF法(Discount Cash Flow法)による評価方法が有名です。

DCF法では企業の将来キャッシュフローを現在価値に割引くことで対象企業の事業価値を算定します。この時に将来のキャッシュフローの予測、計算に使用する割引率や成長率への判断が恣意的なものとならないように注意が必要です。

③コスト・アプローチ

企業の純資産の時価評価額等を基準に株主資本価値を算定するアプローチです。

その名の通り、コスト(原価)に着目するアプローチとなっており、貸借対照表の資産と負債の純額である純資産に焦点を当てます。

コスト・アプローチは大きく分けて簿価純資産法と時価純資産法の2つに大別され、客観性の高い手法であるとされます。一方、あくまでもBSの純資産額を基礎とするために、将来の収益力や成長性、無形資産の価値が反映されないという点に注意が必要です。

それぞれ企業の異なる価値側面に注目する手法となっており、3つの方法を複合的に用いて算定を行えば、対象企業の価値をより的確に掴むことが可能となります。

各アプローチの考え方、代表的な評価手法をまとめたものが下表となります。

各アプローチ方法の主な評価手法の詳細については次回の記事でじっくり解説していきます。

企業価値評価を行うときの留意点

企業価値評価の方法には3つのアプローチ方法があると説明してきましたが、それぞれ長所と短所があり、一概にどの手法が優れているとは言い難いところがあります。

評価対象の企業の特性や財政状態、将来性などを勘案して適用すべき手法が異なってきますので、それぞれの手法の特長を理解しておくことが重要になってきます。

以下にて、各手法がどのような企業の価値評価算定に適しているのかをまとめましたので参考にしてみて下さい。

①マーケット・アプローチ

【株式市価法】

上場企業のうち、ある程度の出来高を有する企業、株価が安定している企業に適している。

【株価倍率法】

非上場企業に多く用いられ、同業他社が多い企業に適している。

②インカム・アプローチ

【DCF法】

最も合理的な評価手法と言われ、上場企業と非上場企業のどちらにおいても利用することが可能。

③コスト・アプローチ

【修正純資産法】

客観性が高い手法であるといえるが、修正純資産法では、企業価値の重要な源泉である収益力が評価に反映されず、不動産会社など保有資産そのものが企業価値の源泉である場合を除いて、企業価値を適切に表さない場合もある

同じ企業の価値であっても、算定手法が異なれば評価結果も異なってきます。

実務においてはなるべく全ての価値側面(すなわりインカム、マーケット、コスト)を考慮した上で、総合的に勘案して価値に関する最終判断を行うのが原則となります。

上場しているか否か、類似企業がどれほどあるかによって採用できる方法も限定されますが、多面的な観点から価値分析を行うことが重要となります。

まとめ

如何でしたでしょうか。

実務においては専門家に依頼をすることが多いため、評価結果を読み解く上でも基本的なところからしっかりと理解できておくと良いと思います。

最後に、今回のポイントをまとめます。

・企業価値評価を行う目的は①M&A目的、②税務目的、③会計目的、④係争目的など幅広い目的がある

・企業価値評価では「事業価値」、「企業価値」、「株主資本価値」の3つの価値概念がある

・マーケット・アプローチとは市場の株価や取引価格を基準とした価値算定方法である

・インカム・アプローとは将来または過去のキャッシュフローや損益を基準とした価値算定方法である

・コスト・アプローチとは企業の純資産額を基準とした価値算定方法である

不明点があればいつでもお問い合わせください。個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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