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【わかりやすく】のれんの減損について解説【論文式試験にも出題】

M&A

今回は、会計学(午後)にて出題された「のれんの減損」に関する解説を行なっていきたいと思います。
のれんの減損に関する会計処理は論文式試験受験生に限らず、実務でもよく行う処理のため気になる方は是非チェックしてみて下さい。

監査論については別記事をアップしていますのでそちらをご確認ください。

会計学(午後)財務諸表論の解答

問題1、問2

のれんを含む資産グループについて減損損失を認識する場合には,当該減損損失はのれんに優先的に配分される。のれんに減損損失が優先的に配分される理由について述べなさい。

(解答)

のれんを含む資産グループについて減損損失を認識する場合、のれんの超過収益力が失われているため。

簡単に一文で表すと、上記の通りとなります。解答としてもこのような趣旨のことが記載されていれば良いのではないかと思います(超過収益力が失われているというキーワードが大事です)。ただ、のれんの減損について解説している記事が少なかったことからのれんの減損について解説していきたいと思います。会計士受験生であってもこの一文で本当の趣旨を理解できている人は少ないと思います。

のれんの減損について解説

のれんとは

簡単にいうと「超過収益力」のことを言います。企業がM&A(買収・合併)で支払った金額のうち、買収先の純資産額を上回った差額のことをのれんと言っています(例:純資産額10億円の会社を買収価額12億円で取得した場合に2億円(12億円-10億円)がのれんとなります。

のれんの本質は、ブランド力や技術力、人的資源、顧客情報、ノウハウなど目に見えない資産価値となっています。

のれんの減損は次のステップで処理を行なっていきます。

そもそも固定資産の減損とは?についてはこちらの記事をご参照ください。

1. のれんの分割
・・・別の会社や事業を取得した際などに計上されるのれんについて、複数の事業に影響しているものであれば、その事業別にのれんを分割する必要があります。

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第6号)
51.のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数である場合には、のれんの帳簿価額を合理的な基準に基づき分割する(減損会計基準 二8. 参照)。

⑴ のれんの帳簿価額を分割し帰属させる事業の単位は、取得の対価が概ね独立して決定され、かつ、取得後も内部管理上独立した業績報告が行われる単位とする(減損会計基準 注解(注9)参照)。

⑵ のれんの帳簿価額の分割は、のれんが認識された取引において取得された事業の取得時における時価の比率に基づいて行う方法その他合理的な方法による(減損会計基準 注解(注10)参照)。その他合理的な方法には、取得された事業の取得時における時価と当該事業の純資産(資産総額と負債総額の差額)の時価との差額の比率に基づいて行う方法等が含まれる。

2. のれんに係る資産のグルーピング
・・・のれんに係る資産のグルーピングには次の2つの方法があります。

① のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行う方法(原則処理)
② のれんの帳簿価額を関連する資産グループに合理的な基準で配分する方法(容認処理)

のれんは、あくまで「超過収益力」であり、のれん自体では独立したキャッシュ・フローを生み出さないことから①の方法が原則とされています。

① のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行う方法の会計処理は次の2ステップとなります。

ステップ1 のれんを含まない資産グループごとに減損損失を認識するかの判定、測定を行う(まずはのれんを含まない単位で判定、測定を行う)

ステップ2 のれんを含む資産グループ(より大きな単位)で減損損失を認識するかの判定、測定を行う

ステップを2段階踏む趣旨としては「のれんの超過収益力がどれくらい失われているのか」といった判断を行うためとなります。とてもわかりづらいので設例で解説していきましょう。

設例 のれんの減損処理について

設例
前提条件:のれんを認識した取引において事業Ⅰと事業Ⅱが取得されており、のれんの帳簿価額は200、のれんが認識された時点の事業Ⅰ、事業Ⅱの時価は、それぞれ450、670であった。事業Ⅰと事業Ⅱは内部管理上独立した業績報告が行われている。事業Ⅰに属する資産グループA、B、Cに減損の兆候が生じている。

事業Ⅰに属する資産グループA、B、Cの帳簿価額と将来キャッシュ・フロー
帳簿価額 A:100、B:200、C:120
割引前将来キャッシュ・フロー A:130、B:210、C:100、のれんを含むより大きな単位:440
回収可能価額(割引後将来CF)A:120、B:190、C:70、のれんを含むより大きな単位:380

・のれんの帳簿金額の分割
まず初めに、のれんの帳簿金額の分割を行います。のれんは事業Ⅰと事業Ⅱにまたがって認識されていますが、今回減損の兆候が生じているのは事業Ⅰのみであり、のれんを帳簿価額に分割する必要があります。方法としては、のれん(帳簿金額200)を取得時に基づく事業の時価の割合で配分していきます。

・事業Ⅰののれん 80 (200 /(450+670)×450 =80)
・事業Ⅱののれん 120 (200 /(450+670)×670 =120)

・のれんに係る資産のグルーピング及び減損の認識、測定
次にのれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位をグルーピングとして減損の判定を行なっていきます。ステップとしては次の2ステップです。

ステップ1 のれんを含まない資産グループごとに減損損失を認識するかの判定、測定
ステップ2 のれんを含む資産グループ(より大きな単位)で減損損失を認識するかの判定、測定

【ステップ1 のれんを含まない資産グループごとに減損損失を認識するかの判定、測定】

のれんを含まないということで、資産グループA、B、Cについて減損に認識、測定を行なっていきます。

資産グループA 帳簿価額:100 < 割引前将来キャッシュ・フロー:130・・・減損の認識「不要」
資産グループB 帳簿価額:200 < 割引前将来キャッシュ・フロー:210・・・減損の認識「不要」
資産グループC 帳簿価額:120 > 割引前将来キャッシュ・フロー:100・・・減損の認識「必要

資産グループC 帳簿価額:120 – 回収可能価額:70 = 減損損失額:50

【ステップ2 のれんを含む資産グループごとに減損損失を認識するかの判定、測定】

のれんを含む資産グループ帳簿価額:500 (のれん帳簿価額 80+資産グループA、B、Cの帳簿価額合計420
のれんを含む資産グループ割引前将来キャッシュ・フロー:440・・・減損の認識「必要」(帳簿価額>割引前将来CF)
のれんを含む資産グループ回収可能価額:380 = 減損損失額:120 (帳簿価額500 – 回収可能価額380)

ステップ2で算定した減損損失120のうち、ステップ1で算定した資産グループCの減損損失50を除いた70は、のれんの超過収益力が失われた部分であるため、原則としてのれんに優先的に配分します。

まとめ

いかがだったでしょうか?のれんの減損についての会計処理はステップがいくつもあり難しい会計処理となっています。

のれんは超過収益力のことであり、のれんを含む資産グループにて減損の計上の必要となった場合には、「のれんの超過収益力がどれくらい失われているか」ということを算定するために2段階のステップで計算(差を算定)していくというところをぜひ覚えておいて下さい。

また次の記事でも論文式試験の解答、解説をアップしていきたいと思います。
のれんの会計処理に関するご質問についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!ではでは!

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