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【簡単に!】グループ通算制度を解説③〜制度開始時・加入時の時価評価のポイント

法人税

今回は「グループ通算制度」の3回目です。

グループ通算制度では制度開始時・加入時の時価評価(繰越欠損金の切り捨ても)について、組織再編税制との整合性を図る観点での改正がなされています。

連結納税制度からどのような点が変わっていくのか、そのポイントを解説していきます。

なお、グループ通算制度って何?という方は第1回目の解説記事をご覧下さい。

また、SRLYルールなどの個別論点については第2回目の記事で解説していますので、よろしければこちらもどうぞ。

グループ通算制度では時価評価の対象法人が縮小される

グループ通算制度の適用開始時、通算グループへの加入時(及び離脱時)において、資産の時価評価課税や欠損金の切捨て等の制限があります。現行の連結納税制度に比べると時価評価の対象が縮小する方向となっています。

グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入に伴う資産の時価評価について、対象外となる法人は、次の法人とされています。

【適用開始時の時価評価除外法人】

・いずれかの子法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる親法人

・親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる子法人

グループ通算制度では、制度開始時に親法人との間で100%親子関係が継続することが見込まれる場合、子法人での時価評価は不要となります。
子法人の時価評価が必要になるケースとしては、親法人又は他の子法人が所有する子法人の株式の全部又は一部について、開始時に売却することが見込まれている場合などが想定されますが、実務上、子法人が時価評価すべきケースはかなり限定的であるといえます。

加入時の時価評価除外法人】

・通算グループ内の新設法人

・適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人

・適格組織再編成と同様の要件として次の要件の全てに該当する法人
 A :通算親法人との間の完全支配関係の継続要件、加入法人の従業者継続要件、加入法人の主要事業継続要件

 B :通算親法人又は他の通算法人と共同で事業を行う場合に該当する一定の要件

※通算グループへの加入の直前に支配関係がある場合には、Aの各要件

実務上、時価評価の対象になるのは、グループ外の会社を相対取引での株式購入により100%化した場合で、上記Bの共同事業要件に該当しないケースが主たるものになると思われます。かなり限定的なケースとなりそうですね。

現行の連結納税制度では、制度開始時・加入時の時価評価課税は100%グループ内の新設法人が対象外とされていましたが、グループ通算制度へ移行すると時価評価課税対象外の法人が拡大しますので注意しましょう。

時価評価の対象資産には変更なし

グループ通算制度の開始時もしくは加入時の時価評価の対象法人の範囲は縮小されますが、対象資産の範囲については現行の連結納税制度から変更はありません。

時価評価を行う場合の対象資産は以下の通りです。

(ただし、帳簿価額が1,000万円に満たない場合等、一定の資産は除かれます)

○固定資産

○棚卸資産たる土地(土地の上に存在する権利を含みます)

○有価証券

○金銭債権

○繰延資産

対象外となる一定の資産については国税庁ホームページのQ&Aにて解説されていますので、詳しく知りたい方はリンク先を参照してみてください。

(国税庁ホームページ:グループ通算制度のQ&A 問41)

時価評価資産の範囲|国税庁

離脱時の時価評価について

現行の連結納税制度においては、連結納税グループから離脱する法人については資産の時価評価を行うことはありません。

これに対し、グループ通算制度では次の(1)もしくは(2)の資産について、直前の事業年度において時価評価損益の計上を行うことが出来ます。

(1)主要な事業を継続することが見込まれていない場合(離脱の直前における保有資産の時価が簿価を超える場合を除く)

(2)帳簿価額が10億円を超える上記(1)の資産の離脱後の譲渡等による損失を計上することが見込まれ、かつ、その法人の株式の譲渡等による損失が離脱後に計上されることが見込まれている場合

(1)の場合、対象となるのは固定資産、土地等、有価証券(売買目的有価証券等を除く)、金銭債権及び繰延資産となります。

(1)もしくは(2)に該当する場合にはグループ通算制度から離脱する法人にて資産の時価評価が行われます。

欠損金の切捨てが可能な場合

グループ通算制度の開始時・加入時において過年度の欠損金額を切捨てることが出来る場合があります。

通算法人が次の(1)もしくは(2)に該当する場合は、それぞれの場合に応じて過年度の欠損金額の内から所定の金額が切り捨てられます。

時価評価除外法人の範囲の変更は欠損金の切捨てが出来る法人の範囲にも影響してくる、ということですね。

(1)時価評価除外法人に該当しない場合

(2)時価評価除外法人に該当する場合で支配関係発生日後に新たな事業を開始するなど一定の要件に該当する場合

(1)の場合、通算制度の承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度については、同日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額はないものとされます。

 

(2)の場合、通算制度の承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度については、次のイ又はロの欠損金額はないものとされます。

イ:その通算法人の支配関係事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額

ロ:その通算法人の支配関係事業年度以後の各事業年度において生じた欠損金額のうち法人税法第64条の14第2項に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額等一定の金額

時価評価を要する法人、時価評価を要しない法人それぞれの場合における欠損金額の切捨てが可能な場合を図解すると以下になります。

(国税庁ホームページ:グループ通算制度のQ&A 問52より抜粋)

まとめ

最後に本日のポイントをまとめます。

・連結納税制度に比べ、時価評価の対象法人の範囲は縮小する

・時価評価の対象資産の範囲は連結納税制度から変動なし

・グループ通算制度から離脱する法人について時価評価が出来るようになる

・時価評価の対象法人の範囲の変更は欠損金の切捨てが出来る場合にも影響するので要注意

令和4年(2022年)度からの制度適用に向けて少しずつ理解を深めていきましょう!

不明点があればいつでもお問い合わせください。個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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