今回は、消費税計算について解説していきます。
消費税を計算する上で、やっかいなのが、取引のうち、課税対象取引、不課税取引、非課税取引、免税取引のどれに該当するかの判断が非常に細かく、覚えにくい箇所ですよね。
そんな消費税計算の不課税取引、非課税取引について、本来の趣旨などから解説を行なっていきます。
以前、消費税の概要についてはこちらの記事で解説しております。是非チェックしてみてください。
消費税の適用を受ける取引
そもそも消費税法の適用を受ける取引はどういった取引なのか解説をしていきます。
以下の4要件を全て満たした取引が、国内取引の課税の対象となっています。
(1)国内において行うものであること (2)事業者が事業として行うものであること (3)対価を得て行うものであること (4)資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であること
■ 資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供とは?
消費税法上は、取引の形態を次の3つに分類しています。
【売上】 ① 資産の譲渡・・・商品の販売、資産の売却など ② 資産の貸付け・・・建物の賃貸、機械のリースなど ③ 役務の提供・・・サービスの提供を行うことなど 【仕入】 ① 資産の譲受け・・・商品の仕入、資産の購入など ② 資産の借受け・・・建物の賃借、機械のリースなど ③ 役務の提供・・・サービスの提供を受けることなど
■ 事業として行うものとは?
法人が行う活動は全て「事業として」に該当します。そのため、本業以外で行なった取引がその他の要件を満たす場合には、課税対象取引となります(株式の売却など)。
■ 対価を得て行う取引とは?
対価を得て行うとは、「資産の譲渡等に対して反対給付を受けることをいう」とされています。
そのため、「無償による資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供」などは不課税取引となります。
対価性のない取引の具体的な例としては、次の通りです。
① 保険金、共済金 ② 損害賠償金 ③ 立退料 ④ 配当金 ⑤ 寄附金・祝金・債権放棄・債務免除 ⑥ 補助金・助成金 ⑦ 保証金・権利金等(返還義務があるもの) ⑧ 収用に伴う収益補償金・移転補償金・経費補償金
課税対象取引の課税、非課税分類
そもそも課税の対象となる取引を先のセクションで解説しました。
次に第2段階として、課税対象取引を「課税取引」と「非課税取引」に分類する必要があります。
図でイメージすると以下の通りです。
「非課税取引」は15項目が限定列挙されています。そのうち、「税の性格から課税することになじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」に最終分類できます。
<税の性格から課税することになじまないもの> 1. 土地等の譲渡及び貸付け 2. 有価証券等の譲渡 3. 利子を対価とする金銭の貸付け 4. 郵便事業株式会社が行う郵便切手類の譲渡 5. 物品切手等の譲渡 6. 行政手数料等に係る役務の提供 7. 外国為替業務に係る役務の提供
<社会政策的な配慮に基づくもの> 8. 社会保険医療に係る資産の譲渡等 9. 介護保険サービス事業や社会福祉事業等としての資産の譲渡等 10. 助産に係る資産の譲渡等 11. 火葬料、埋葬料を対価とする役務の提供 12. 身体障害者用物品の譲渡等 13. 学校教育に係る役務の提供 14. 教科用図書の譲渡 15. 住宅の貸付け
(注)以下の取引は土地の貸付けから除かれます。
① 一時的に使用させる場合・・・契約による土地の貸付期間が1月に満たない場合 ② 施設の利用に伴う土地の貸付け・・・駐車場、建物、野球場、プール又はテニスコート等の施設の利用(貸付け)が土地の使用を伴うことになるとしても、その土地の使用は土地の貸付けに含まれず、その土地を含めた全体を施設の利用(貸付け)として考える。
免税取引(輸出取引等)の範囲
本来課税される取引であっても、国外で消費をもたらすものについては「消費地課税主義」及び「国際競争力の低下防止」の観点から免税規定が設けられています。
・消費地課税主義
国内において消費される商品やサービスに税負担を求めることを「消費地課税主義」といいます。
日本の消費税を輸出先である国外に居住する者に負担させることを防ぐため、法施行地外で消費される輸出取引については、消費税を免除しています。
・国際競争力の低下防止
輸出されるものに対して消費税を課税すると、国際市場における競争力の低下を招くことから輸出取引等については、消費税を免除し、これを防いでいます。
■ 輸出取引等の範囲
1. 本邦から輸出として行われる資産の譲渡、貸付け 2. 外国貨物(輸入された貨物で未通関のもの)の譲渡、貸付け 3. 国内・国外にわたって行われる次のもの ① 旅客の輸送、貨物の輸送等の国際運輸 ② 国際電話等の国際通信 ③ エアメール等の国際郵便又は信書便 4. 専ら国際運輸の用に供される船舶又は航空機に係る次の行為で船舶運航事業者に対するもの ① 譲渡、貸付け、修理 ② 役務の提供(水先、誘導等) 5. 外国貨物に係る役務の提供(荷役、運送、保管、検数、鑑定等) 6. 非居住者に対する無形固定資産等(特許権、ノウハウ、著作物等)の譲渡、貸付け 7. 非居住者に対する一定の役務の提供(国内に所在する資産に係る運送、保管等を除く)
■ 輸入取引における課税対象
輸入取引の課税の対象については、次のように定められています。
保税地域から引き取られる外国貨物には、消費税を課する
・保税地域とは?
資産を輸入する場合、国内に陸揚げした後、各種の検査を通過しなければなりません。陸揚げしたもの全てにすぐ課税を行なってしまうと、検査を通過しなかった場合に税金を戻す等の手間がかかってしまうため、課税を一時保留する場所として、「保税地域」が設けられています。
・外国貨物とは?
外国貨物とは、次の貨物のことをいいます。
① 国外から国内に到着した貨物で、輸入が許可される前のもの
② 国内から輸出する貨物で、輸出の許可を受けたもの
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、消費税の計算における不課税取引、非課税取引、免税取引について解説を行いました。
最終的な課税取引の対象となるには、3段階の分類を行うことを覚えておきましょう。
・<第1段階> 課税の対象取引に該当するか(4要件)
・<第2段階> 非課税取引(15項目限定列挙)に該当しないか
・<第3段階> 免税取引(輸出取引等)に該当しないか
次の記事では、消費税の納税義務者や仕入税額控除について解説を行なっていこうと思います。
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