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とある会計士の独立開業噺〜令和3年度論文式試験を解いてみた(会計学②)〜四半期財務諸表の性格について

開業

こんにちは。今回も論文式試験について、実際の監査法人勤務を踏まえた上での解説をしていこうと思います。

令和3年度の公認会計士試験論文式を受験された皆さんは本当にお疲れ様でした!
この3日間は本当に疲れますよね!合格の発表まで、今まで我慢してきたことを思う存分楽しんでくださいね。

それでは、会計学(午後)の財務諸表論、四半期財務諸表における実績主義に関する解説を行なっていきたいと思います。


別記事もアップしていますのでそちらも是非ご確認ください!

会計学(午後)財務諸表論(四半期財務諸表における実績主義)の解答

問題2 問2

四半期財務諸表の性格付けについては,「実績主義」と「予測主義」という 2 つの異なる考え方 がある。わが国の会計基準では,どちらの考え方を基本としているか。また,その考え方が採 用された理由について,国際的な会計基準とのコンバージェンスを図るためといった理由の他 に 2 つ述べなさい。

(解答)

わが国の会計基準(四半期財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第12号))では、次の理由から「実績主義」を基本とすることとしている。

・実績を明らかにすることにより、将来の業績予測に資する情報を提供するものと位置付けることがむしろ適当と考えられること

・企業会計基準委員会が実施した市場関係者へのヒアリング調査や当委員会等での審議を通じて確認した我が国の市場関係者の意見では、「実績主義」における実務処理の容易さが指摘されただけでなく、「予測主義」によると会社の恣意性が入る可能性があり、また、会社ごとに会計方針が大きく異なると企業間比較が困難になるとの指摘が多かったこと

四半期財務諸表の実績主義についての解説

四半期財務諸表の性格付けについては、中間財務諸表と同様、「実績主義」と「予測主義」という2つの異なる考え方があります。

「実績主義」とは、四半期会計期間を年度と並ぶ一会計期間とみた上で、四半期財務諸表を、原則として年度の財務諸表と同じ会計方針を適用して作成することにより、当該四半期会計期間に係る企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する情報を提供するという考え方のことです。これは、我が国の中間作成基準や国際会計基準で採用されている考え方であり、カナダ基準も、基本的には、「実績主義」を採用しています。

一方、「予測主義」は、四半期会計期間を年度の一構成部分と位置付けて、四半期財務諸表を、年度の財務諸表と部分的に異なる会計方針を適用して作成することにより、当該四半期会計期間を含む年度の業績予測に資する情報を提供するという考え方のことです。1973年(昭和48年)に制定された米国基準や我が国の1998年(平成10年)改訂前の「中間財務諸表作成基準」は、この考え方に基づいています。

 

「実績主義」と「予測主義」のいずれの考え方によるべきかという点について、国際的な会計基準の動向も踏まえて検討を行なった結果、次のような理由から、「実績主義」を基本とすることなっています。

会計基準には、実績主義を採用した理由として以下の4つを挙げています。

(1) 1998年(平成10年)3月に企業会計審議会から公表された「中間連結財務諸表等の作成基準の設定に関する意見書」において、①中間会計期間の実績を明らかにすることにより、将来の業績予測に資する情報を提供するものと位置付けることがむしろ適当と考えられること、②恣意的な判断の介入の余地や実行面での計算手続の明確化などを理由として、中間財務諸表等の性格付けが「予測主義」から「実績主義」に変更されたこと

(2) 季節変動性については、「実績主義」による場合でも、十分な定性的情報や前年同期比較を開示することにより、財務諸表利用者を誤った判断に導く可能性を回避できると考えられること

(3) 当委員会が実施した市場関係者へのヒアリング調査や当委員会等での審議を通じて確認した我が国の市場関係者の意見では、「実績主義」における実務処理の容易さが指摘されただけでなく、「予測主義」によると会社の恣意性が入る可能性があり、また、会社ごとに会計方針が大きく異なると企業間比較が困難になるとの指摘が多かったこと

(4) 2000年(平成12年)9月に改訂されたカナダ基準では、「予測主義」の弊害を掲げて「実績主義」が望ましいと判断されたこと

四半期財務諸表における会計方針と簡便的な会計処理

「実績主義」を基本に据えて四半期財務諸表を作成することとしたため、四半期財務諸表は、原則として年度の財務諸表の作成にあたって適用される会計方針に準拠して作成されなければなりません。
そのため、収益、費用の認識及び測定について年度の会計処理と同一であることが原則必要です。

ただし、一部例外として簡便的な会計処理が認められています。

・棚卸資産の実地棚卸の省略
・減価償却方法に定率法を採用している場合の減価償却費の期間按分計算、退職給付費用の期間按分計算
・連結会社相互間の債権債務の相殺における差異調整の省略と未実現損益の消去における見積り計算等
・一般債権の貸倒見積高の算定方法
・棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げの方法
・原価差異の配賦方法
・固定資産の減価償却費の算定方法
・経過勘定項目の処理方法
・税金費用の算定方法

一部の例外として、簡便的な会計処理が認められている理由は、四半期財務諸表は、年度の財務諸表や中間財務諸表よりも開示の迅速性が求められているためであります。従来、年に1回、もしくは半年に1回公表していた財務諸表を四半期ごとに公表しなくてはいけなくなりましたので、四半期財務諸表は、年度の財務諸表よりも迅速性が求められています。

この点を踏まえ、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、中間作成基準よりも簡便的な会計処理によることができることとされております。

四半期財務諸表作成のための特有の会計処理

四半期連結財務諸表作成のための特有の会計処理として、次の2点が挙げられます。

・原価差異の繰延処理
・税金費用の計算

四半期財務諸表では、中間財務諸表よりも売上原価が操業度等により大きく変動し、売上高と売上原価の対応関係が適切に表示されない可能性があるため、売上原価に関連するこの2項目については例外的に四半期特有の会計処理を認めた方が経済的実態をより適切に表し、財務諸表利用者に対して将来の業績予測に資する情報を提供することができるためです。

こちらは先程の簡便処理とは異なり、四半期特有の事象により、四半期特有の会計処理を認めた方がより適切な会計処理になるということです。

まとめ

四半期財務諸表作成における簡便的な会計処理特有の会計処理の違いがわかったでしょうか。
簡便的な会計処理は、開示の迅速性のために容認されている会計処理であり、
特有の会計処理は、四半期という期間の性質に合わせた、より経済的実態を表すために容認された会計処理となっています。

どちらも四半期にのみ行われる特別な会計処理ですが、認められている理由が異なるところがポイントです。
四半期財務諸表作成の会計処理に関するご相談についてはコメント欄、質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは!

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