G-X0MQHQND78

【わかりやすい】外形標準課税とは?〜概要と注意点について

法人税

今回は、法人事業税における外形標準課税について解説をしていきます。

外形標準課税は、対象となる法人が限られている税金であり、全ての法人に関係のある税金ではありません。そんな外形標準課税について、概要と対象となる会社、注意すべき点など解説をしていきます!

こちらの記事では、事業所税について解説を行っているので是非チェックしてみてください。

外形標準課税とは?

外形標準課税とは、資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度のことです。

もともと、法人事業税は所得を基準として課税されるものであります。

外形標準課税は、法人事業税のうちの2分の1相当を所得基準による課税ではなく、外形基準による課税をするものとなっています。

具体的には、①所得を基準とした課税(所得割)、②法人の生み出した付加価値を基準とした課税(付加価値割)、③資本金等の金額を基準とした課税(資本割)によって徴収を行うものとなっています。

① 所得割・・・所得を基準とした課税
② 付加価値割・・・法人の生み出した付加価値を基準とした課税
③ 資本割・・・資本金等の金額を基準とした課税

上記のうち、所得以外、すなわち外形基準を課税ベースとするもの(②、③)が一般に外形標準課税と呼ばれるものとなっています。

外形標準課税導入の背景

外形標準課税が導入される以前の法人事業税は、所得に応じて課税する仕組みになっていました。

しかし、所得が発生しない場合には、法人事業税を負担しないこととなってしまいます。

所得が発生しない欠損法人は、全法人数の約60%と言われています。

こうした欠損法人も地方公共団体が提供する行政サービスを享受しています。
これでは、税負担の公平性という観点から好ましくありません。

「応能課税」と「応益課税」
税金の負担方法には、2つの考え方があります。

・「応能課税」は、税金は負担する人の能力に応じて課税すべきであるという考え方。累進課税など。国税に応能課税の考え方が当てはまります。

・「応益課税」は、行政が納税者に行政サービスを施しているので、受益の程度に応じて税金を負担すべきであるという考え方。地方税に応益課税の考え方が当てはまります。

事業税を行政サービスから受ける利益への対価と考えると、その課税標準は、所得よりも、受益の程度をより良く表すものを課税標準とする方が好ましいと考えられます。

そのため、法人の生み出した「付加価値」、「資本金額」を基準として、本来の事業税の姿である事業活動の規模に応じた課税をするために平成16年に導入されたのが、この外形標準課税なのです。

付加価値割とは?

外形標準の一つである付加価値割について詳細を解説していきます。

付加価値割は、以下の計算式によって計算されます。

付加価値額 = 付加価値額 × 税率

 付加価値額 = 収益配分額(※1) ± 単年度損益(※2)

 (※1)収益配分額 = 報酬給与額(A) + 純支払利子(B) + 純支払賃借料(C)

   (A)報酬給与額 = 給料、賞与、手当、退職金等の合計額

   (B)純支払利子 = 支払利子から受取利子を引いた額

   (C)純支払賃借料 = 土地・建物に係る支払賃借料から受取賃借料を引いた額

 (※2)単年度損益 = 繰越欠損金控除前の法人事業税の所得金額

付加価値額
利益の金額に、人件費、支払利息、賃借料を加算して算定を行います。

■ 報酬給与額(A)
報酬給与額は、雇用関係等に基づき労務の提供の対価として支払われるものであって、法人税で損金に算入され、かつ、所得税で給与所得又は退職所得とされる性質のものであれば、その名称や支給形態を問わず原則として報酬給与額に含めます。

報酬などのうち、法人税法上で損金に算入されるものであり、役員報酬や従業員への給与、賞与が該当します。その他にも退職金、確定拠出年金も含まれます。

注意すべき点は、派遣への支払については全額が報酬給与額に含まれるのではなく、労働者派遣をした者に支払う金額に75%を乗じた金額が報酬給与額となります。

報酬給与額に含まれないもの
・法人税の所得計算で損金されないもの
・通勤手当
・在宅手当
・法定福利費 など

■ 純支払利子(B)
純支払利子は、支払利子から受取利子を控除した金額のことです。

支払利子、受取利息のほか、手形の割引料も該当します。

東京都税主税局に記載されているQ&Aを一部抜粋して記載します。

Q:租税に係る利子税・延滞金は支払利子について含めるのですか。

A:申告期限の延長に係る利子税及び延滞金(約定利息としての性質を有するもの)については、法人税において損金算入されるため、支払利子の対象となります。(取扱通知4の3の1) 
  不申告や納期限後の納付に係る延滞金(遅延利息としての性質を有するもの)については、法人税において損金算入されないため、支払利子には含まれません。
Q:売掛債権をファクタリング会社に譲渡したときのファクタリング費用は、支払利子に含めるのですか。

A:売掛債権を譲渡したときの債権金額と譲渡価額の差額は資産の譲渡から生じるものであって、負債から生じる利子とは性質が異なるため、原則として、支払利子には該当しません。ただし、譲渡の対象となる債権に償還請求権が付されているときは、支払利子に該当します。
Q:リース取引に係る利息相当額を支払利子に算入するとのことですが、これはすべてのリース取引が対象となるのですか。

A:リース取引のうち、その利息相当額を純支払利子に算入することとされているのは、法人税法上資産の売買とされるリース取引及び金銭貸借とされるリース取引のみです。(取扱通知4の3の5・4の3の6) 
 したがって、すべてのリース取引が対象となるのではなく、法人税法上賃貸借取引となるようなリース取引に係る利息相当額は純支払利子に含めません。

■ 純支払賃借料(C)
純支払賃借料は、支払賃借料から受取賃借料を控除した金額のことです。

東京都税主税局に記載されているQ&Aを一部抜粋して記載します。

Q:ビルの袖看板を借りていますが、この対価は純支払賃借料に含まれますか。

A:土地又は家屋と一体となって効用を果たす構築物等の賃借料相当額についても、土地又は家屋の支払賃借料及び受取賃借料に含まれます。 
 また、純支払賃借料の対象となるのは、固定資産税における土地又は家屋を連続1月以上使用又は収益する権利の対価として受払される額であり、その使用については土地又は家屋(建物)の全部又は一部を問いません。
 したがって、壁面使用料のように建物の壁面のみの使用に係る対価も支払賃借料に含まれます。
Q:荷物の保管契約を結び保管料を支払っていますが、個々の荷物の保管状況につき「1月以上」預けているかどうかを把握することは困難です。この場合も純支払賃借料に含めますか。

A:荷物の保管料については、「契約等において1月以上荷物を預け、一定の土地又は家屋を使用又は収益していると認められる場合」に、純支払賃借料に含めます。(取扱通知4の4の3) 
 この場合の「1月以上」とは、個々の荷物の保管期間をいうものではなく、荷物の保管行為(実際の保管だけでなく、契約等によりいつでも保管できる状態を含みます。)全体の期間をいいます。

■ 単年度損益
単年度損益は、法人事業税の「所得割」の所得と同じで、その期の法人事業税上の損益の金額を元にして算出されます。

単年度損益 = 繰越欠損金控除前の法人事業税の所得金額

「所得割」の所得は、繰越損失がある場合、法人事業税上の損益の金額から繰越損失の金額を差し引いた金額とします。一方で、「付加価値割」の付加価値は、仮に繰越損失があっても考慮せずに、そのまま計算に用います。

東京都税主税局に記載されているQ&Aを一部抜粋して記載します。

Q:付加価値額は収益配分額と単年度損益との合計額とのことですが、欠損の場合は収益配分額から減算できるのですか。また、収益配分額よりも欠損金額が多くて減算しきれなかった金額は、翌期の付加価値額から控除できるのですか。

A:単年度損益がマイナスの場合には、当該事業年度の収益配分額から単年度損益の金額を減算して付加価値額を計算します。単年度の損失が大きく、付加価値額がマイナスとなる場合には、当該事業年度の付加価値割額はゼロとなります。
 しかし、付加価値額のマイナス分については、付加価値額は当該事業年度における事業活動の規模を表すものであることから、翌期以降の付加価値額から控除することはできません。

資本割とは?

最後に資本割について詳細を解説していきます。

資本割は、以下の計算式によって計算されます。

資本割 = 資本金等の額(又は連結個別資本金等の額) × 税率

東京都税主税局に記載されているQ&Aを一部抜粋して記載します。

Q:資本割の課税標準となる「資本金等の額」とは何ですか。

A:「資本金等の額」は、法人税法に規定する資本金等の額(又は連結個別資本金等の額)に無償増減資がある場合の加減算をした金額と、資本金及び資本準備金の合算額又は出資金の金額とを比較して大きい金額を基礎とした上で、次の順序による計算を行った金額です。

① 収入金額課税事業以外の事業に係る算定
② 事業年度が1年に満たない場合の月数按分
③ 一定の要件を満たす持株会社の資本金等の額の算定(特定子会社株式等の控除措置)
④ 外国の事業以外の事業に係る算定
⑤ 非課税事業以外の事業に係る算定
⑥ 上記⑤までの計算の結果が1,000億円を超えている場合の算定
⑦ 収入金額等課税事業(小売電気事業等・発電事業等)と所得等課税事業とを併せて行う法人のそれぞれの事業に係る算定
Q:いつの時点の資本金等の額を用いるのですか。

A:
① 確定申告書、仮決算による中間申告書
 各申告書に係る法人税額の課税標準の算定期間の末日(事業年度の末日)
② 予定申告書
 当該予定申告にかかる6月の期間の直前の法人税額の課税標準の算定期間の末日(前事業年度の末日)
Q:自己株式を取得した場合、資本割の課税標準となる資本金等の額はどのように算定しますか。

A:自己株式を取得した場合、法人税法上の資本金等の額の減算項目に該当します。(法人税法施行令第8条第1項第20号、第21号)  均等割の税率区分の基準となる資本金等の額においても、この法人税法の取扱いに基づき資本金等の額を計算します。
 金融商品取引所の開設する市場における購入でない場合など、法人税法第24条第1項第5号~第7号に該当する取得の場合は、次の計算式により減算額を計算します。

その他注意すべき事項

■ 雇用安定控除(付加価値割に係る配慮措置)

「報酬給与額」が「収益配分額」の70%相当額を超える場合には、雇用安定控除として、「付加価値額」から一定額(雇用安定控除額)を控除します。

以下の前提条件の場合に、付加価値額の算定において雇用安定控除額を控除します。
付加価値額= 500 + 100 − 150(★)雇用安定控除

(前提条件)
・報酬給与 500
・純支払利子、純支払賃借料 0
⇨収益配分額 500

・単年度損益 100

(★)雇用安定控除
報酬給与500 − 収益配分額500×70%(=350)=150

■ 付加価値割における人材確保等促進税制の導入 (※)時限措置

令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について、以下の要件を満たす場合には、人材確保等促進税制により、法人事業税付加価値割の算定において一定額を控除します。(法附則9⑬~⑰)

(新規雇用者給与等支給額−新規雇用者比較給与等支給額)/新規雇用者比較給与等支給額 ≧ 2%

また、この場合に雇用安定控除との重複を避けるために以下の算式により控除額を算定します。

人材確保等促進税制控除額 =
控除対象新規雇用者給与等支給額 × (報酬給与額−雇用安定控除額)÷ 報酬給与額

外形標準課税における税率

税率については各地方自治体によって異なるためそちらを参照ください。

東京都における外形標準課税の税率は以下をご参考としてください。

概要 | 法人事業税に係る外形標準課税 | 法人事業税・法人都民税 | 東京都主税局

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、外形標準課税について解説を行いました。

・外形標準課税とは、資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度のこと

・法人事業税の「所得割」のほかに「付加価値割」、「資本割」が外形基準として課税される

・付加価値割は以下の通り計算される
付加価値割 = 付加価値額(=収益配分額 ± 単年度損益) ×税率
収益分配額は報酬給与、純支払利子、純支払賃借料の合計

・資本割は以下の通り計算される
資本割 = (資本金等の額) × 税率

・その他注意すべき事項として「雇用安定控除」、「人材確保等促進税制」が挙げられる。

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは。

コメント

タイトルとURLをコピーしました