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【わかりやすく!】繰越欠損金の控除上限の特例を解説〜令和3年度税制改正

法人税

みなさん、こんにちは。今回は令和3年度税制改正の中から繰越欠損金の控除上限の特例について解説していきます。

繰越欠損金を有する会社であれば税金計算の所得から控除することが出来ますが、コロナ後の積極的な投資を支援するために控除上限の特例が設けられています。

コロナ禍での業績悪化により欠損金を計上する会社も増えていますので、今回の特例についてきちんと理解した上で申告に臨むようにしましょう。

前回の記事では年末調整についてわかりやすく解説しております。よろしければこちらのチェックしてみてください!

 

繰越欠損金とは?

まず、法人税計算に出てくる繰越欠損金について説明します。

欠損金とは税務上の赤字のことをいい、所得が赤字であれば法人税は課税されません。

欠損金が生じた場合には、翌事業年度以降に生じた所得と相殺することが可能となり、繰越欠損金として繰越していくことが可能です。

例えば、繰越欠損金の金額が150万円であった場合、その事業年度の所得が100万円であれば、繰越欠損金の150万円のうちの100万円が損金に参入され、所得金額はゼロとなります。

なお、欠損金の繰越控除を行うことが出来る法人は以下の条件をいずれも満たす法人となります。

①欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していること
②その後の事業年度についても連続して確定申告書を提出していること

欠損金額が生じた事業年度で青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度の確定申告書が白色申告書であったとしても繰越欠損金の控除を受けることが可能です。

繰越欠損金の控除限度額

繰越控除される欠損金額は各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金となり古いものから順に控除されていきます。

なお、中小法人等以外の法人(資本金1億円以上の大法人)の各事業年度における控除限度額は、繰越控除をする事業年度のその控除前の所得の金額に対して次の率を乗じた金額とされています。

(1)平成24年4月1日〜平成27年3月31日開始事業年度:100分の80

(2)平成27年4月1日〜平成28年3月31日開始事業年度:100分の65

(3)平成28年4月1日〜平成29年3月31日開始事業年度:100分の60

(4)平成29年4月1日〜平成30年3月31日開始事業年度:100分の55

(5)平成30年4月1日以降開始事業年度:100分の50

大法人の場合には繰越欠損金の50%しか控除ができない制度になっていました。

今回の税制改正により、コロナ禍で生じた繰越欠損金の控除上限を50%から最大100%へ引き上げられる特例が制定されたという訳です。

繰越欠損金の控除上限の特例制度の概要

「繰越欠損金の控除上限の特例制度」は大法人向けの制度となり、制度の概要は以下となります。

産業競争力強化法上の事業適応計画の認定を受けた企業について、コロナ禍に生じた欠損金がある場合、最長5事業年度の間、欠損金の繰越控除前の所得の金額の範囲内(最大100%)で損金参入される制度

最大100%としているのは、その所得の金額の50%を超える部分については、「事業適応計画に従って行った累積の投資の残額に達するまでの金額」とされているためです。

以下、投資額と控除上限のイメージ図となります。

(参考:経済産業省「繰越欠損金の控除上限」の特例ガイドライン)

https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/kurikoshi.pdf

コロナ後の積極的な投資を支援するという本特例の趣旨の通り、従来の控除上限の50%に投資額を上乗せ出来るようになるという訳です。

投資額によっては所得の100%を控除することが可能です。

特例事業年度と計画期間について

本特例ではコロナ禍の影響を受けた特例事業年度の欠損金額が対象となり、控除金額に上乗せ可能な投資期間は最長5年間となっています。

■特例事業年度

・新型コロナウイルス感染症の影響を受け欠損が生じている期間

・原則、令和2年4月1日から令和3年4月1日までの日を含む1又は2事業年度

■投資期間

計画開始日から最長5年間

■税制適用期間

次のいずれも満たす事業年度

・事業適応計画の実施時期内の日を含む事業年度

・特例事業年度の初年度以降、黒字化してから5年以内の事業年度

・令和8年4月1日以前に開始する事業年度

 特例の適用期間は令和8年度までとなりますので、令和8年度までに黒字化及び投資の実施を行う必要があることに留意が必要です。

 

なお、特例事業年度は1又は2事業年度となりますが、決算期ごとの特例事業年度の例は以下のイメージ図のとおりとなります。

(参考:経済産業省「繰越欠損金の控除上限」の特例ガイドライン)

 

繰越欠損金の控除上限の特例制度の適用要件

繰越欠損金の控除上限の特例制度の適用を受けるにはいくつかの要件があります。

産業競争力強化法 施行規則
・事業適応計画の実施期間は、5年以内とすること
・証明書の発行申請は、計画期間内の日が属する各事業年度の終了から1ヶ月以内にすること
産業競争力強化法 施行規則(様式)
・特例事業年度及び当該事業年度を特例対象とする該当性に関する説明を記載すること
・特例対象投資の投資期間は、計画開始日から最長5年とすること
告示(繰越欠損金に関する課税の特例)
・事業適応計画の申請の日を含む事業年度の前事業年度を基準として、計画期間終了時にROA5%もしくはEBITDAマージン5%向上を目標とする計画であること
告示(実施指針)
・財務内容の健全性が向上すること
・前者の意思決定に基づくものであること(取締役会等の決議文書など)
・事業の成長発展を図るために前向きな取組みを行うこと
・事業の成長発展を図るために投資を行うこと

要件に挙げられている「投資」の例としては以下が掲げられています。

■「投資」の例

①研究開発投資

②固定資産投資(有形・無形)

③企業の合併、買収その他戦略的取組への出資

④人的投資

⑤構造改革投資

特例制度の適用が受けられるように、上記の要件をよく確認しておくようにしましょう。

まとめ

如何でしたでしょうか。

繰越欠損金の控除上限の特例はコロナ禍で生じた業績の悪化からの回復に役立つ制度となっていますので、適用を受けることのできる企業はしっかりと準備しておくとよいと思います。

具体的な申請の流れやスケジュールについては経済産業省の『「繰越欠損金の控除上限」の特例ガイドライン』にまとまっていますので参考にしてみてください。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/kurikoshi.pdf

最後に今回の解説ポイントのまとめです。

・繰越欠損金の控除上限の特例は大法人向けの制度となっている

・コロナ禍の事業年度で生じた欠損金について、従来の控除上限50%に投資額を加えた金額を控除することが可能となる

・適用期間は令和8年4月1日以前に開始する事業年度まで

・適用要件には計画期間終了時にROA5%もしくはEBITDAマージン5%向上を目標とするなど、定量的な要件も含まれる

解説した内容に不明点があればいつでもお問い合わせください。

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

それでは、さようなら。

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