2022年3月期の決算で注意すべき、改正された会計基準、税法をまとめていきますので経理関係者の方は是非チェックしてください!
2022年3月期における主な改正事項
2022年3月期において注意すべき改正事項は以下の通りとなっております。
毎年のことではありますが、法人税法の改正事項が多くなっています。法人税法は主に令和3年度の税制改正大綱で公表された事項となっています。
また会計基準では、収益認識に関する会計基準への対応が大きなトピックとなっています。
こちらは2021年4月1日以降に開始する事業年度から適用することとされており、2022年3月期の会社から適用対象となる基準になっています。
1. 研究開発税制の見直し(法人税法) 2. 賃上税制の見直し(法人税法) ・給与等の引上げ及び設備投資を行なった場合の税額控除制度 ・中小企業における所得拡大促進税制 3. 投資促進税制の創設(法人税法) 4. 外国子会社配当金に係る外国源泉税の取扱い(法人税法) 5. 収益認識に関する会計基準等への対応(会計基準、法人税法) 6. 時価算定会計基準への対応(会計基準)
全ての改正事項について完璧に把握する必要はありませんが、自分の会社ではどの改正事項が対象となりそうか、影響がありそうなものだけでも把握できると良いと思います。
今回は、ブログでまだ解説したことがない「投資促進税制の創設」について解説を行っていきます!
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投資促進税制の創設
投資促進税制は、2021年度(令和3年度)税制改正において新設された税制となっており、大きく2つの税制のことを指しています。
・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 ・デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
それぞれ2つの税制における趣旨、概要は以下の通りです。
■ カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」という高い目標に向けて、産業競争力強化法において規定される予定の「認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画」に基づき導入される、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備や、脱炭素化を加速する製品を生産する設備に対して、税制上支援する措置が行われる税制
■ デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
企業の持続的成長のために、デジタルトランスフォーメーション(DX)による企業変革が重要となってくることを踏まえ、新規ビジネスの構築等に関する計画(認定事業適応計画)に基づく、持続性・クラウドの利用・レガシーシステムからの脱却・サイバーセキュリティーといった点が確保された「事業変革デジタル投資」を促進することを目的として創設された税制
どちらも”これからの新しい時代のため”に企業が投資を行うのであれば、その投資に対して税制面で優遇するといった内容となっています。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
まず初めに、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の概要をまとめると以下の内容となっています。
・2050年カーボンニュートラルの実現には、民間企業による脱炭素化投資の加速が不可欠 ・このため、産業競争力強化法に新たな計画認定制度を創設。計画認定制度に基づき、 ① 大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備 ② 生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備 の導入に対して、最大10%の税額控除又は50%の特別償却を新たに措置(※)する。 (※)措置対象となる投資額は、500億円まで。 控除税額は、後述のDX投資促進税制と合計で法人税額の20%まで。
では、この税制を理解するための背景を解説していきます。
・そもそも「カーボンニュートラル」とは?
「カーボンニュートラル」とは、 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。 2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。 「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」(人為的なもの) から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。 カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減並びに吸収作用の保全及び強化をする必要があります。
2050年までにカーボンニュートラルを実現させるためには、民間企業における脱炭素化投資が不可欠のため、この投資を促進させるために、税制面で優遇を行うといったことがこの税制の背景にあります。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の適用要件、税制措置
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の適用要件は以下の通りとなっています。
■ 適用対象法人 ① 青色申告書を提出する法人 ② 認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応事業者(※) (※)認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応事業者 産業競争力強化法第21条の16第1項に規定する認定事業適応事業者のうち、認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画にその認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に従って行う同号に規定するエネルギー利用環境負荷低減事業適応のための措置として生産工程効率化等設備等を導入する旨の記載があるものをいいます。詳細については、経済産業省ホームページをご覧ください。 ■ 適用対象資産 その認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に記載された生産工程効率化等設備等でその製作または建設の後事業の用に供されたことのないもの ⇨以下のような事例が挙げられています。 ・化合物パワー半導体 ・EV又はPHEV向けリチウムイオン蓄電池 ・定置用リチウムイオン蓄電池 ・燃料電池 ・洋上風力発電設備の主要専門部品 ■ 適用対象期間(年度) 令和3年8月2日から令和6年3月31日までの期間内に、認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に記載された生産工程効率化等設備等の取得または製作もしくは建設をし、国内にあるその法人の事業の用に供した場合
上記の適用要件を満たした場合に以下の税制措置(特別償却or税額控除)が認められます。
■ その他留意点
下記の①〜③のいずれにも該当しない大企業については、研究開発税制・地域未来投資促進税制・カーボン ニュートラルに向けた投資促進税制・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の税額控除を適用できない点に注意する必要があります。
① 当期所得 ≦ 前期所得 ② 継続雇用者給与等支給額(※1)>継続雇用者比較給与等支給額(※1) ③ 当期設備投資額 > 減価償却費の30% (※2) (※1)要件を判定する場合に雇用調整助成金及びこれに類するものを控除しない。 (※2)2020年(令和2年)3月31日以前に開始した事業年度については10% ・地方税において、「特別償却」を選択した場合には、全ての法人に係る法人住民税及び法人事業税について適用される一方で、「税額控除」を選択した場合には、中小企業者等(※2)に係る法人住民税にのみ適用されることとなります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進
まず初めに、デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の概要をまとめると以下の内容となっています。
・ウィズ・ポストコロナ時代を見据え、デジタル技術を活用した企業変革(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためには、経営戦略・デジタル戦略の一体的な実施が不可欠。 ・このため、産業競争力強化法に新たな計画認定制度を創設。部門・拠点ごとではない全社レベルのDXに向け た計画を主務大臣が認定した上で、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対し、税額控除(5%・3%)又は特別償却30%を措置する。
では、この税制を理解するための背景を解説していきます。
・そもそも「デジタルトランスフォーメーション」とは?
・デジタルトランスフォーメーション」とは? 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を言います。 つまり、進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもののことを言います。
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の適用要件、税制措置
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の適用要件は以下の通りとなっています。
■ 適用対象法人 適用対象法人は、青色申告書を提出する法人で認定事業適応事業者である法人です。 ■ 適用対象資産 情報技術事業適応設備(※1)(その製作の後事業の用に供されたことのないものに限ります。)または事業適応繰延資産(※2)です。 (※1)情報技術事業適応設備 認定事業適応事業者が、指定期間内に、情報技術事業適応の用に供するために特定ソフトウエアの新設もしくは増設をし、または情報技術事業適応を実施するために利用するソフトウエアのその利用に係る費用を支出する場合における、その特定ソフトウエアならびにこれらのソフトウエアとともに情報技術事業適応の用に供する機械および装置ならびに器具および備品(主として産業試験研究の用に供される一定の資産を除きます。)をいいます。 (※2)事業適応繰延資産 認定事業適応事業者が、指定期間内に、情報技術事業適応を実施するために利用するソフトウエアのその利用に係る費用を支出した場合における、その支出した費用に係る繰延資産をいいます。 (注)情報技術事業適応設備の取得価額および事業適応繰延資産の額の合計額のうち本制度の対象となる金額は300億円が上限とされています。 ■ 適用対象期間(年度) 令和3年8月2日から令和5年3月31日までの期間(以下「適用期間」といいます。)内に、認定事業適応計画に従って実施される情報技術事業適応(「情報技術事業適応設備を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除」および「事業適応繰延資産となる費用の額を支出した場合、
上記の適用要件を満たした場合に以下の税制措置(特別償却or税額控除)が認められます。
■ その他留意点
下記の①〜③のいずれにも該当しない大企業については、研究開発税制・地域未来投資促進税制・カーボン ニュートラルに向けた投資促進税制・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の税額控除を適用できない点に注意する必要があります。
① 当期所得 ≦ 前期所得 ② 継続雇用者給与等支給額(※1)>継続雇用者比較給与等支給額(※1) ③ 当期設備投資額 > 減価償却費の30% (※2) (※1)要件を判定する場合に雇用調整助成金及びこれに類するものを控除しない。 (※2)2020年(令和2年)3月31日以前に開始した事業年度については10% ・地方税において、「特別償却」を選択した場合には、全ての法人に係る法人住民税及び法人事業税について適用される一方で、「税額控除」を選択した場合には、中小企業者等(※2)に係る法人住民税にのみ適用されることとなります。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、投資促進税制について解説をしました。
・投資促進税制には、
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
の2つがあり、どちらも”これからの新しい時代のため”に企業が行う投資に対して税制面で優遇するといった内容
・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制は、取得価額の50%の特別償却又は取得価額の5%/10%の税額控除が受けられる(取得価額500億が限度)
・デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制は、取得価額の30%の特別償却又は取得価額の3%/5%の税額控除が受けられる(取得価額300億が限度)
個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!
ではでは。