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2022年3月期決算で注意すべき会計基準、法人税法①〜研究開発税制の改正について

法人税

2022年3月期の決算で注意すべき、改正された会計基準、税法をまとめていきますので経理関係者の方は是非チェックしてください!

2022年3月期における主な改正事項

2022年3月期において注意すべき改正事項は以下の通りとなっております。
毎年のことではありますが、法人税法の改正事項が多くなっています。こちらは主に令和3年度の税制改正大綱で公表された事項となっています。

また会計基準では、収益認識に関する会計基準への対応が目玉となっています。こちらは2021年4月1日以降に開始する事業年度から適用することとされており、2022年3月期の会社から適用対象となる基準になっています。

1. 研究開発税制の見直し(法人税法)
2. 賃上税制の見直し(法人税法)
  ・給与等の引上げ及び設備投資を行なった場合の税額控除制度
  ・中小企業における所得拡大促進税制
3. 投資促進税制の創設(法人税法)
4. 外国子会社配当金に係る外国源泉税の取扱い(法人税法)
5. 収益認識に関する会計基準等への対応(会計基準、法人税法)
6. 時価算定会計基準への対応(会計基準)

全ての改正事項について完璧に把握する必要はありませんが、自分の会社ではどの改正事項が対象となりそうか、影響がありそうなものだけでも把握できると良いと思います。

今回は、「研究開発税制の見直し」について解説を行っていきます!

こちらの記事も是非チェックしてください。

研究開発税制とは・・・

そもそも研究開発税制とは・・・
研究開発税制とは、企業が研究開発を行なっている場合に、法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じた金額を控除できる制度となっています(法人税額に対する控除上限があります)。

税額控除額
① 試験研究費 × 一定割合・・・控除率
② 法人税額 × 一定割合・・・控除上限額

研究開発税制には以下の種類があります。
【総額型】
「モノ作り」や「サービス開発」など企業が行う研究・開発活動にかかった試験研究費の一部を法人税額から控除する制度

【オープンイノベーション型】
国の研究機関、大学など、他の者との共同研究にかかった特別試験研究費の一部を法人税額から控除する制度

【中小企業技術基盤強化税制】
中小企業者等(※)の場合は、総額型に代えて、より大きな税額控除を受けることができる制度

(※)前3事業年度における平均所得金額が15憶円を超える法人は除かれます。

税額控除割合(改正前)はそれぞれ以下の通りとなっています(いずれの制度においても、控除上限がありますのでご注意ください)。

【総額型】
試験研究費の増減割合に応じて試験研究費の額の6〜14%(改正前)を法人税額から控除することができます。

【オープンイノベーション型】
共同研究の相手先に応じて、上記の控除額とは別に、特別試験研究費(※)の額の20%、25%または30%を法人税額から控除できます。

(※)特別試験研究費の額とは、試験研究費の額のうち国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究、国の試験研究機関、大学その他の者に委託する試験研究、中小企業者からその有する知的財産権の設定又は許諾を受けて行う試験研究、その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究などに係る試験研究費の額をいいます。

【中小企業技術基盤強化税制】
試験研究費の増減割合に応じて試験研究費の額の12〜17%(改正前)を法人税額から控除することができます。

研究開発税制の改正内容

今回の改正内容
この研究開発税制について、活発な研究開発を維持、拡大するとともに、イノベーション創出につながる中長期・革新的な研究開発を促していく観点から、次の見直しが行われます。

(1)総額型及び中小企業技術基盤強化税制の見直し
(2)オープンイノベーション型の対象範囲の追加等
(3)自社利用ソフトウェアに係る試験研究費の追加

(1)総額型及び中小企業技術基盤強化税制の見直し

① 控除率の見直し
研究開発投資の増加インセンティブを強化するため、控除率カーブが見直され、総額型の控除率の下限が2%(現行6%)に引き下げられ、上限を14%(原則10%)とする特例の適用期限を2年延長することとなりました。

【総額型】
【中小企業技術基盤強化税制】

② 総額型及び中小企業技術基盤強化税制の控除上限引上げ
研究開発投資の増加を促すため、一定の要件のもと、総額型及び中小企業技術基盤強化税制の税額控除額の上限が5%上乗せされました。

【総額型】
【中小企業技術基盤強化税制】

オープンイノベーション型の対象範囲の追加等

そもそもオープンイノベーション型とは・・・
特別研究機関等、大学等、その他の者と共同で行う試験研究に要する費用、これらの者へ委託して行う試験研究に要する費用又は中小企業者に支払う知的財産権の使用料がある場合、当該企業が負担した特別試験研究費の一定割合を法人税から控除できる仕組みです。なお、上限額は、総額型税額控除制度による控除額とは別枠で、法人税額の10%相当額となります。

特別試験研究費税額控除制度は、大学や国の研究機関、また他企業等との共同研究及び委託研究等の連携について、特に大きなインセンティブを与える制度となっており、平成5年度税制改正で創設されて以来、オープンイノベーションの促進に資する施策の一つとして、重要なものとして位置づけられております。

今回の改正内容

① オープンイノベーション型の対象範囲及び要件の追加
概要は以下の通りとなっています。

(※1)共同研究・委託研究の範囲は、出資後10年以内に限定しないことを除き、新事業開拓事業者等と同様となっています。そのため、委託研究は、委託契約に基づき委託先の試験研究に該当するもので、次のいずれかを満たす必要があります。
(1) その成果を活用して委託元が行う研究が基礎研究又は応用研究である
(2) 委託先の所有する知的財産権等を使用又は利用する研究である

② 事務手続き等の運用改善
共同研究の相手方が行う特別試験研究費の額であることの確認について、第三者が作成した報告書等によって確認することが可能であることを明確化する等の改善が行われることとなりました。

オープンイノベーション型の適用の流れは以下の通りとなっています。
(経済産業省産業技術環境局 技術振興・大学連携推進課「研究開発税制の概要」より抜粋)

自社利用ソフトウェアに係る試験研究費の追加

ソフトウェアは、CD-ROMなどのメディアで販売されるのが一般的でしたが、近年のクラウドサービスの発達により、エンドユーザーはメディアを購入してソフトウェアを利用するのではなく、クラウド上で利用することが主流となってきています。

顧客に販売するために製作するソフトウェアの開発費は、従来から研究開発税制の対象となっていましたが、クラウドサービスに利用するソフトウェアのように顧客に直接販売せず、顧客へのサービス提供のために自社内で使用するソフトウェアの開発費は、研究開発税制の対象とはなっていませんでした。2021年度税制改正においては、クラウドサービスの進化に対応しつつ、クラウドサービスを利用する企業のデジタル化を促進するため、クラウドサービスで利用するためのソフトウェアの開発費を研究開発税制の対象に加えました。

(経済産業省産業技術環境局 技術振興・大学連携推進課「研究開発税制の概要と 令和3年度税制改正について」より抜粋)

会計上、研究開発費として費用計上されていたもののうち、税務上資産計上されていたもの(※)について今年度の改正で研究開発税制の適用対象に追加されることとなりました。

(※)研究開発費における会計、税務上の違い
研究開発費とは、会計上の用語であり、会計上では全て発生時の費用計上となります。

税務上では、上記のような処理(全て費用計上)は認められていません。税務上、費用処理することができる場合は、以下の場合に限られています。

(2) 取得価額に算入しないことができる費用
次のような費用の額は、取得価額に算入しないことができます。
イ 自己の製作に係るソフトウエアの製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
ロ 研究開発費の額(自社利用のソフトウエアに係る研究開発費の額ついては、その自社利用ソフトウエアの利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな場合におけるその研究開発費の額に限ります。)
ハ 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その合計額が少額(その製 作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、研究開発税制の改正点について解説をしました。

・研究開発税制とは、企業が研究開発を行なっている場合に、法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じた金額を控除できる制度。

2022年3月決算の会社における主な改正内容
(1)総額型及び中小企業技術基盤強化税制の見直し
   ・控除率の見直し
   ・控除上限引上げ
(2)オープンイノベーション型の対象範囲の追加等
   ・対象範囲及び要件の追加
   ・事務手続き等の運用改善
(3)自社利用ソフトウェアに係る試験研究費の追加
   ・クラウドサービス利用のソフトウェアの開発費を研究開発税制の対象に追加

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは。

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