相続税は、個人が被相続人(亡くなった人のこと)から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金です。少子高齢化の現代にとって、相続する人、相続させる人双方にとってとても重要な税金となっています。
そんな相続税について、簡単に概要を知りたいという人にとってわかりやすく解説していきます。
前回の記事についても是非チェックしてみてください。
相続税の概要
相続税は、配偶者や子(相続人等)などが死亡した人(被相続人)の財産を相続した場合に、相続した財産の価額を基にかかる租税となります。
私たち個人は、毎年の所得に対して所得税を支払っています。その支払った残りの部分を生活費などの消費に回し、それでも残った場合には財産として蓄積されることとなります。
相続税は、この蓄積された財産をその人の死亡の機会に課税しようとするものとなっています。
しかし、一回所得税を支払っているところ、さらに相続税を課せられることについて二重課税ではないかといった意見もある中、相続税を課す根拠として以下の点が挙げられます。
① 所得税の補完機能
死亡した人(被相続人)が生前において受けた税制上の特典、その他による負担の軽減などにより蓄積した財産を、相続開始の際に清算する。
② 富の集中排除機能
相続により相続人等が得た偶然の富の増加に対し、その一部を税として徴収することで、相続した者としなかった者との間の負担の均衡を図り、合わせて富の過度な集中を抑制する。
贈与税の概要
贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手に与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することによって成立する契約をいいます。
相続や遺贈により財産を取得した場合、その財産には相続税が課税されますが、もし、被相続人が生前、相続人となる配偶者や子供などに財産を贈与してしまったとしたら、相続税がかからなかったり、かかったとしても少ない負担で済んでしまい、生前に贈与することにより財産を分散した場合としなかった場合とでは、税負担に著しい不公平が生じることとなります。
そのため、生前に行われる贈与財産にも税を課し、相続税を補完する必要があり、贈与による取得財産には贈与税を課税することとされています。
相続税と贈与税は、相互に密接な関係があり、共に相続税法に規定されています。
相続税と贈与税の課税方式
■ 相続税の課税方式
相続税の課税方式には、大別して「遺産課税方式」と「遺産取得課税方式」の2つの考え方があります。
方法 | メリット | |
遺産課税方式 | 被相続人の遺産に焦点を当て、遺産の総額に対して課税する方式 | 死亡した者の所得税を補完する意義があり、作為的な仮装の遺産分割による租税の回避を防止しやすく、また遺産分割のいかんに関係なく遺産の総額によって相続税の税額が定まるため、税務の執行が容易となる |
遺産取得課税方式 | 個々の相続人等が相続する遺産に焦点を当て、それらの者が相続した財産に対して課税する方式 | 各相続人ごとに、相続した財産の価額に各々超過累進課税率が適用されるため、富の集中化の抑制に大きく貢献し、また、取得者の税負担の公平が期待できる |
■ 現行の相続税の課税方式
現在の日本における課税方式は、遺産課税方式と遺産取得課税方式の折衷ともいえる「法定相続分課税方式」を採用しています。
「法定相続分課税方式」は、相続人が法定相続分で遺産を得たとして相続税の総額を計算し、その総額を実際の分割割合に応じて負担する方式です。現在の日本ではこの法定相続分課税方式が採用されています。
■ 贈与税の課税方式
贈与税の課税方式は、贈与した人(贈与者)に課税する方式と贈与を受けた人(受贈者)に課税する方式とありますが、現在の相続税に合わせ、贈与を受けた人(受贈者)に課税する受贈者課税方式が採用されています。
相続人について
民法では相続人を誰にするかを定め、その相続人のみが相続できる法定相続主義を建前としています。
これによると、相続人は、配偶者相続人と血族相続人の2つに大別され、双方が同順位で相続人になるとされています。
ただし、次に掲げる事由のいずれかに該当する者は、相続人となることはできません。
・相続の開始以前に死亡している ・相続人の欠格事由に該当している(*1) ・推定相続人から廃除されている(*2) ・相続の放棄をしている(*3) |
(*1)欠格事由とは、故意に被相続人又は相続について先順位もしくは同順位にある者を殺害したり、殺害しようとして刑を受けた者などをいいます。このように相続に関して不正に利益を得ようとした者は、民法の規定により相続人になれないとされています。
(*2)被相続人に対して虐待もしくは重大な屈辱を加えたとき又は推定相続人にその他の著しい非行があった時は、被相続人が家庭裁判所に請求して推定相続人から廃除し相続権をなくすことができます。
(*3)被相続人の死亡により相続人が相続する財産は、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産もある。そこで相続をしたくないときは、相続の放棄をすることができます。
■ 配偶者相続人
配偶者相続人とは、相続開始の時において被相続人と正式な婚姻関係にある者をいいます。
内縁関係にある者や離婚した者は、相続人になることはできません。
■ 血族相続人
血族相続人とは、被相続人と血族関係がある者をいいます。
しかし、被相続人と血族関係を有する者は大勢いるため、次の順位により相続人となる者を定めています。
第1順位 | 子及びその代襲相続人(*1)(孫を含む) |
第2順位 | 直系尊属(*2)(第1順位:父母、第2順位:祖父母・・・) |
第3順位 | 兄弟姉妹及びその代襲相続人(甥、姪を含む) |
(*1)代襲相続人とは、被相続人の相続開始以前に、本来であれば相続人となるべき子が死亡等している場合は、その子に代わって孫が相続人となります。これを代襲相続といい、この場合の孫を代襲相続人(代襲者)といい、この場合の子を被代襲者といいます。
(*2)直系尊属とは、直系(血統が直線的、つまり直上直下していること)で、かつ、尊属(自分より世代が上にある人)である他に、血族である者をいいます。従って、被相続人の父母以外に祖父母、曾祖父母も直系尊属となります。この場合には、被相続人に親等の近い者から優先して相続人となります。
■ まとめ
上記の内容をまとめると相続人となる者は、次の通りとなります。
① 配偶者及び子(子が相続開始以前に死亡又は相続権を失ったときは、その直系卑属たる代襲者)
② 子がいない場合には、配偶者及び直系尊属
③ 子も直系尊属もいない場合には、配偶者及び兄弟姉妹(兄弟姉妹が相続開始以前に死亡又は相続権を失ったときは、その子)
④ 他に相続人がいない場合には、配偶者のみ
・配偶者は常に相続人となります。
・直系卑属とは、直系(血統が直線的、つまり直上直下していること)で、かつ、卑属(自分より世代が下にある者)である他に、血族である者をいいます。
その他の相続人について
■ 非嫡出子
母子関係の場合には、出産の事実に基づいて法律上の血族関係が認められますが、父子関係の場合には、法律上の血族関係が不明確となります。そのため、子の利益を保護するために「認知」と言う制度を設け、父親が認知をした場合においては、法律上の血族関係が成立することとしています。
■ 胎児・連れ子及び離婚した場合の子
(1)胎児
胎児は、相続について既に生まれたものとみなされて相続人として取り扱います(胎児が死体で生まれたときは、相続人として取り扱いません)。
(2)配偶者の連れ子
配偶者の連れ子のように夫婦の婚姻によって生じた親族(姻族)関係は、法律上の血族関係はないため、相続人となることはできません。なお、婚姻することとなった場合及び同居することとなった場合においても同様です。
(3)離婚した場合の子
父母が離婚している場合においても、その子と父母の血族関係は消滅しないため、父母双方の相続人となります。なお、父又は母が再婚して、子と姓が異なることとなった場合においても同様です。
まとめ
いかがだったでしょうか。相続税、贈与税の概要と相続人について解説を行いました。
次の記事では、法定相続人と法定相続分について解説しようと思います。
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ではでは!