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IPOについて③〜資本政策の目的と策定するための流れについて

IPO

資本政策とは、簡単にいうと「会社における株主構成をどのように設定するか」決めていくこととなります。

この「株主構成をどのように設定するか」と一言で言っても、金額やタイミング、割合、方法などパターンが多岐に渡ってくるため非常にややこしくなっています。

資金調達(エクイティファイナンス)を行うにしても、公募とするのか売出とするのか、はたまた第三者割当とするのか様々な選択肢があります。

「公募」
公募とは、新しく発行した株を投資家に買ってもらい、資金調達を進めることです。

「売出し」
売出しとは、創業者などの大株主の保有している株の一部を投資家に買ってもらうことです。
売出しは新しく株を発行するものではないので、「公募」のように資金調達が進むわけではありません。大株主の利益確定に使われることが多いので、売り出し株数が多いと投資家ウケはよくないです。

「第三者割当」
特定の第三者に株式を有償で引き受けてもらうことで資金を調達する手法です。上場企業が実施する場合には、既存株主の利益保護に配慮することが重要となります。

またその資金調達を行うタイミングがいつが良いのか、割合はどのように決定するべきなのか、ストックオプションや持株会なども考慮すべきかなど上場時における株主構成をどのように設定するかは非常に複雑であり、経営者を悩ますものとなっています。

資本政策の策定の流れ

資本政策の策定は以下の流れで行っていきます。

■ 事業計画の策定
まずは、会社の根幹となる事業計画の策定を行います。上場時までにどの程度の売上、利益となる見込みなのか、それを達成するための資金はどのくらい必要なのか といった事項を策定していきます。

■ 株価の算定(概算)
事業計画を策定すれば、会社の株価算定を行うことができます。ただし、ここでの算定はあくまで概算となります。上場時における株価算定は別途プロセスがあります。別途解説します。
株価の算定を概算で行い、会社の時価総額、公開価格のイメージを作っていき、上場の時期や上場する市場区分を決定していきます。

■ オーナーの持株比率の検討
会社の時価総額、上場時期が決定したらオーナーにおける持株比率の検討を行っていきます。ここで注意しなければいけないことが、自身の持株比率と資金調達には以下のトレードオフの関係があるということです。

・資金調達と安定株主比率の関係
第三者割当増資のような株主割当増資以外の株式発行を行なった場合には、自身の持株数に変化がなくても持株比率は低下することとなります。第三者割当増資は、特定の第三者に株式を新規で割当てるため発行済株式数が増加するものの、自身の株数は増えないことによるためです。

・創業者利潤と安定株主比率の関係
オーナーが株式の売出を行う場合には、当然に持株比率が低下することとなります。個人的な資金確保のために売出しや持株の譲渡を行なった場合には、安定株主比率は低下することとなります。

ここで相続税対策の検討を行います。親族への贈与を行うか、資産管理会社の設立を行うかなどどのように相続税の対策をするかを考えることも重要な資本政策の一つとなっています。最近では、株式交付制度といった税務上の整備も進んでいるため専門家に相談しながら考えることをお勧めします。

■ 社内の持株比率の検討
オーナーの持株比率の検討の次に社内の持株比率について検討を行います。役員や社員に対するストックオプションの付与や従業員持株会の設立等を検討する必要があります。最近では、信託型のストックオプション(通常のストックオプションは付与時に誰に割当てるかを決定しなければいけないというデメリット部分を解消したもの)もあり、こちらも専門家に相談しながら考えることをお勧めします。

ストックオプションとは
新株予約権の1つで、会社が取締役や従業員等に対して「将来においてあらかじめ定められた価格で自社株式を購入する権利を割当てるもの」。会社の業績が上がれば付与されたストックオプションとしての価値も上がるため役員、従業員等のモチベーションアップにつながります。
従業員持株会とは、
従業員から会員を募り、給与・賞与からの拠出金を原資として実施会社株式を共同購入し、会員の拠出金額に応じて持分を配分する制度のことです。

■ 資金調達・安定株主の確保
社内における持株比率の検討の次は、外部における持株比率の検討を実施しますが、外部の中でも安定株主となる割合がどの程度いるか検討する必要があります。

前回の記事において、上場審査基準における形式要件において、「流通株式数」、「流通株式時価総額」、「流通株式比率」が決められていることを解説しました。

例えば、グロース市場では、流通株式数「1,000単位以上」、流通株式時価総額「5億円以上」、流通株式比率「25%以上」と決められているます。

流通株式とは (日本取引所グループHPより抜粋)

上場有価証券のうち、大株主及び役員等の所有する有価証券や上場会社が所有する自己株式など、その所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いた有価証券を言います。

流通株式数は、直前の基準日等現在における上場株式数から、流通性の乏しい株券等の数を合算した数を減じて算出します。
東証では、以下の者が所有する株式を流通性の乏しい株券等として定めています。
・上場会社(自己株式)
・上場会社の役員
・上場株式数の10%以上を所有する者又は組合等

なお、新規上場申請や一部指定申請に係る有価証券については、上記に加え、以下の者が所有する株券等についても流通性の乏しい株券等として定めています。
・上場会社の役員の配偶者及び二親等内の血族
・上場会社の役員、役員の配偶者及び二親等内の血族により総株主の議決権の過半数が保有されている会社
・上場会社の関係会社およびその役員

こうした流通株式の要件に注意しながら自社の役員・金融機関・取引先など、自社と関わりのある人・企業に第三者割当増資を実行し、安定株主の比率を高めていくこととなります。

資本政策における注意点

資本政策時に注意すべき点をここから解説していきます。

先ほど解説した「資金調達と安定株主比率の関係」、「創業者利潤と安定株主比率の関係」も資本政策時に注意すべき点となります。物事には必ずメリットとデメリットがあり、幅広い投資家から資金調達を行うことにより自身や身近な関係の持株比率は低下することとなりますし、自身が保有している株式の資金化によっても持株比率は低下することとなります。

また、流通株式の要件にも注意しましょう。安定株主確保のために自身に近い関係の方のみにしか株式を割り当てなければ上場の審査基準を満たすことはできません。

上記以外の注意点としては、経営権の確保となります。
会社法の定めにより、議決権の3分の2以上によって経営に必要なほぼ全ての議案を可決することができ、2分の1以上で経営陣の地位は確保することができます。

上場の審査基準における形式要件のみを考えれば、理論上オーナーの持株比率を75%として上場することは可能になりますが、実質基準の方で問題ありとされてしまうこともあるので注意が必要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、IPO時における資本政策について解説をしました。

資本政策は、なんとなくで決めてしまうと後々後悔することになるので専門家の方に相談しながら慎重に決定していくことをお勧めします。

個別のご質問については質問箱(https://peing.net/ja/kaikei_sodan)までよろしくお願いします!

ではでは。

前回の記事についても是非チェックしてみてください。

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