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【わかりやすい】PPA(取得原価の配分)とは?〜無形資産の識別と評価について

M&A

今回は、買収や合併などの企業結合が発生した際に行われるPPAについて解説をしていきます。
最近では、企業によるM&Aが増えてきたことでPPA、無形資産の識別についても一般的となってきました。そんなPPA、無形資産の識別について解説をしていきます。

前回の記事についても是非チェックしてみてください。

PPA(取得原価の配分)とは?

PPAとは、Purchase Price Allocationの略で、日本語では「取得原価の配分」といいます。

現行の会計基準(企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号))では、「取得」※の会計処理は、パーチェス法と呼ばれる手法によって行われます。
(※「取得」とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を獲得することをいいます。)

パーチェス法は、以下の4つの流れで行われます。

(1)取得企業の決定
(2)取得原価の算定
(3)取得原価の配分
(4)増加資本の処理(株式を交付した場合)

こちらの記事で解説を行なっています。

このパーチェス法の流れのうち、(3)の取得原価の配分がPPA(Purchase Price Allocation)のことを指しています。

■ 取得原価の配分
取得企業は、被取得企業から受け入れた識別可能資産及び引き受けた識別可能負債に対して、その企業結合日における時価を基礎として取得原価を配分します。
→取得原価と取得原価の配分額との差額はのれん(又は負ののれん)として会計処理します。

つまり、パーチェス法における(2)で算定した取得原価(Purchase Price)を資産、負債に配分(Allocation)した残りをのれんとする考え方をとっているため、この会計処理はPPAと呼ばれているのです。

無形資産とは?

先のセクションでPPAについて解説をしましたが、実務ではPPA=無形資産の評価と読んでいるケースも多々あります。ここでは、そもそも無形資産とは何かについて解説を行なっていきます。

先のセクションで、取得原価と取得原価の配分額との差額はのれんとして処理すると解説しましたが、「受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、当該無形資産は識別可能なものとして取り扱う」と基準に定められています。

そのため、のれんのうち、法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には無形資産として識別を行う必要があり、残りの残額が最終的なのれん(狭義ののれん)となります。

個人的には、無形資産を識別するまでが「取得原価の配分」と理解しているため、無形資産を含めた資産、負債に配分した残りをのれんとするという意味であり、広義ののれん、狭義ののれんという考え方はない(狭義ののれんしかない)と思っています。あくまで実務で使用されるケースが多く、イメージしやすいためこのような記載としております。

無形資産とのれんの関係

PPAで無形資産の識別を行った場合、無形資産の計上に伴う繰延税金負債を計上する可能性があり、繰延税金負債を計上すると、その分のれんが増加します。

先ほどの図で解説すると、無形資産を計上した場合に税務上の資産・負債と会計上の資産・負債に差異が発生するため「税効果会計の処理」が必要となります。

そのため、無形資産を計上した場合にはそれに対応する「繰延税金負債」が計上されます。

「繰延税金負債」が計上されるため、取得原価と取得原価の配分額との差額が大きくなることからその分「のれん」が計上されることとなります。

① 無形資産の計上
② 繰延税金負債の計上
③ 繰延税金負債と同額ののれんが計上

無形資産の種類

では、実際に無形資産とはどのような資産を指すのでしょうか。
一般的には、国際財務報告基準(IFRS)の例示を元に次の5つに分類されます。

■ マーケティング関連
商標・商号・ロゴなどが含まれ、一般に商標権などとして科目表示されています。
■ 顧客関連
顧客リスト・顧客との契約・顧客との関係(顧客との契約が無くても過去の取引において特定の顧客と継続して取引を行っている場合)などが含まれ、一般に顧客関係資産などとして科目表示されています。また、受注残高も顧客関連無形資産として計上される場合もあります。
■ 技術関連
特許として保護されている技術・製法などが含まれ、必ずしも法律上の保護がなくても、識別されることはあります。
■ 契約関連
ライセンス契約・フランチャイズ契約・使用許諾・サービス供給契約・営業及び放送権・雇用契約などが含まれ、参入障壁が高い業種では許認可が無形資産として識別される場合もあります。
■ 芸術関連
書籍その他の文学作品・作詞作曲などの音楽作品・映画、絵画、写真などの映像作品などが含まれます。

無形資産の評価方法

無形資産の評価方法は、土地など他の資産の評価方法と同様、次の3つの方法があります。

■ インカム・アプローチ:
無形資産の価値をその無形資産によって将来生み出される経済的便益の現在価値の合計によって計算する方法

■ マーケット・アプローチ:
類似した無形資産の取引価格から評価対象の無形資産の価値を類推する方法

■ コスト・アプローチ:
買い手がその無形資産を複製する場合のコスト(複製原価)または再調達したと仮定して新たに発生するコスト(再調達原価)で価値を測定する方法

このうち、大半の無形資産に適用できるのは、インカム・アプローチとなり、その中でも超過収益法とロイヤルティ免除法は代表的な評価方法といえます。

・超過収益法
企業または事業の利益から、評価対象無形資産以外から生み出される利益を控除することで、評価対象無形資産によりもたらされる利益だけを抽出し、その現在価値により時価を算定する方法のこと。
無形資産は、通常会社が保有する有形資産や他の無形資産、運転資本と同時に使用されていますので、無形資産に帰属する利益を直接把握することは難しいため、その無形資産が関係する部門の利益を集計し、それから無形資産と同時に使用されている資産の貢献利益を控除した残額を評価対象無形資産に帰属する利益とみなす方法になります。
・ロイヤルティ免除法による評価
ロイヤルティ免除法は、評価対象無形資産の所有者が、当該資産の使用を第三者より許可されたものと仮定した場合に、所有者が第三者に対して支払うであろうロイヤルティが免除されたものとして、ロイヤルティコスト削減効果を割引現在価値により時価を算定する方法です。
例えば、商標権の評価に当たり、製品売上高に類似商標のライセンス供与の際に採用されるロイヤルティレートを使用し、当該商標が供与されたという前提をおいて支払いが想定されるロイヤルティコストを算定して評価することがあります。

無形資産の償却方法について

識別した無形資産についても、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければなりません。

のれんが最大償却期間20年とされていることから、無形資産の償却年数は5年〜20年以内としているのが一般的です。

無形資産の種類からも日本基準において、償却を行わないという選択は非常に難しいと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回はPPA(取得原価の配分)と無形資産について解説しました。
今回の内容をまとめると以下の通りです。

・PPA(取得原価の配分)とは、Purchase Price Allocationの略で、被取得企業から受け入れた識別可能資産及び引き受けた識別可能負債に対して、その企業結合日における時価を基礎として取得原価を配分すること

・PPAによって生じた取得原価と取得原価の配分額との差額はのれん(又は負ののれん)となる

・取得原価の配分において、法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には無形資産として識別を行う必要がある

・無形資産の計上に伴い、繰延税金負債が計上され、繰延税金負債と同額ののれんが増加する

・無形資産には、マーケティング関連、顧客関連、技術関連、契約関連、芸術関連から計上される

・評価方法として、「超過収益法」、「ロイヤルティ免除法による評価」が一般的

・無形資産についても償却が必要となり、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分する必要がある

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